恩田陸 『メガロマニア』



メガロマニア (角川文庫)/恩田 陸
¥660
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またまた恩田陸。



しかしこれは小説ではなく、マヤ文明をはじめとする中南米の古代遺跡を巡る紀行文である。



タイトルの「メガロマニア」は、「誇大妄想」と「古代妄想」をかけたものらしい。



単行本時のタイトルには、『あるいは「覆された宝石」への旅」という副題もついていた。





飛行機嫌いの著者が、なんとかその苦しみを乗り越えつつ、各地の古代遺跡やマチュピチュなどを訪れる。



中にはたくさんの写真も載っており、遺跡近くの町の様子や、緑の海とでも評するべき大森林、そしてもちろん遺跡の写真なども満載。



なんとなく、著者と古代の遺跡群を脳内旅行した気分になれる1冊になっております。





とはいえそういった遺跡の詳しい話や歴史などを知るには向かないかもしれない。



なんせ著者も、こういう遺跡はフィクションからのイメージが強いと書いている通り、この旅行は「新たな作品へのイメージ」を掴むためのものでもあるからだ。



そしてこの著者の場合、旅行の本分より、間に挟まれる四方山話のほうがおもしろかったりする。



この辺は「読んでみて」としか言えないけど。





最初に「小説ではない」と言ったが、実は少しだけフィクション部分が含まれている。



それはプロローグに過ぎないものだけど、実に魅力的。

ぜひこれを長編化してほしいものだと、読んだ誰もが思うことだろう。



元々この作家は、長編の予告編のような短編を書くのが得意で、実際著者の短編集『図書室の海』や『朝日のようにさわやかに』にはそういった作品が多く含まれているのでそちらもどうぞ。




残念ながら、この本が出版されて数年経ついまも、まだこの旅行から生まれたとおぼしき作品は姿を見せていない。



これはもう、気長に待つしかないのでしょうね。







というわけで、マヤ文明などの古代遺跡に興味のある方はご一読を。