一田和樹 『檻の中の少女』



檻の中の少女 (a rose city fukuyama)/一田和樹
¥1,785
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第三回 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。




タイトルは若干アレですが、普通のミステリーですw




主人公は、サイバーセキュリティ専門の私立探偵(ではないけど似たようなもの)君島悟。



自殺幇助サイト《ミトラス》によって息子を失った老夫婦から、息子は自殺ではないから調べてくれと依頼される。



物語は終始、君島の軽薄な一人称で進む。



下手に格調ぶってないので、実にスラスラ読めてよろしい。



主人公の(というか著者の)専門分野であるサイバーセキュリティの為になる薀蓄などを交えつつ、なんだかんだ《ミトラス》を調べてゆくというお話。





本筋は、面白いけどまぁそこそこのミステリーと言った感じ。



真相は半分ちょいくらいで大方予想がつくけど、分野的には新鮮だった。




ただ、この話の本領は、ちょっと長めのエピローグにある。



ここで初めて明らかになるタイトルの「少女」の正体と、その深い深い闇。



それまでの軽薄な一人称が嘘のように、重々しい恨みの日々が描写されるのには圧巻でした。



ちょっと前に読んだ某イヤミスにも通じる暗部で、妙なリンクを感じたりもする。




このエピローグのおかげで、グーンと評価が上がります。おススメ。