恩田陸 『夢違』
- 夢違/恩田 陸
- ¥1,890
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ちょっと前にやっていたドラマ『悪夢ちゃん』の原案になった小説。
あくまで「原案」であって「原作」ではありません。
雰囲気も、ドラマのほうはコミカルな要素があったらしいけど(自分は見てない)、この小説は最初から最後まで不穏な雰囲気が漂っております。
タイトルの読み方は、「ゆめちがい」。
「夢札」と呼ばれる物に、夢をデータ化して見ることができるようになった世界でのお話。
主人公の野田浩章は、死んだはずの女、かつて「予知夢」を見ていた古藤結衣子という女の幽霊を見る。
一方とある小学校では、謎の集団白昼夢事件が多発していた。
夢をデータ化して、それを見ることができる。
集団白昼夢事件の当事者である子供が言う、「あれが教室に入ってきた」という謎めいた言葉と、その子供の夢札に映っていた八咫烏。
そして古藤結衣子の影。
ここで語られる「夢」は、人間の集合的無意識の産物であり、それはさながら現実で言うところの「ネット」のようなものである気がする。
「電脳空間」なんて言葉はもう古いかもしれないけど、この「夢」はまさにそれに近い。
色んなものを「視る」ことができるようになった社会で、これからの人類は何を「視る」ようになるのか。
そんなSF的モチーフも魅力の一つ。
色々と伏線が回収されずに終わるのはこの著者の得意技だけどw、今回は「夢」という不確かな題材とマッチしていて悪くないと思った次第。
やはり、こういう「曖昧」で「不確か」な題材を「不穏」に描かせたら恩田陸の右に出るものはいないね。
堪能させてもらいました。
ちなみに「八咫烏」って同著者の『ネクロポリス』にも「不穏」のモチーフとして出てきたけど、著者のお気に入りなんだろうか?w
確かに、三本足の鴉って不気味だよね……。