小林泰三 『海を見る人』
- 海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)/小林 泰三
- ¥798
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ホラー、SF、ミステリーのジャンルを跨う作家、小林泰三のハードSF短編集。
7つの物語はどれもバラバラだけど、合間に「先生」と「生徒」の会話が挟まれ、その謎は最後の短編「門」で明かされることになる。
個人的お気に入りは、「独裁者の掟」と「海を見る人」と「門」かな。
どの短編も、ハードSFらしい物理用語が満載。
しかし著者もあとがきで書いてるとおり、物理や数学が苦手だからといって恐れる必要はない。
どこかファンタジーのような世界で描かれるし、説明される科学が理解できなくても物語を読む上では問題なし。
理解できれば、より深く楽しめるだろうけど。(自分は半分も理解できなかったと思うw)
一番とっつきやすいのが表題作の「海を見る人」かも。
物凄く簡単に言ってしまえば、主人公の男が住む「山の村」側での1年は、男が恋する少女が住む「浜の村」側でのほんの一瞬に過ぎない世界。
少女にとっての一週間が、男にとっては1年近い。
「また会った」そのとき、少女はほとんど変わらぬまま、男は何倍も年をとっている。
そんな世界での恋物語。
最後の「門」も、ある意味SFでしか成立しない恋物語といえるかもしれない。
一見小難しいSFだけど、恐れずに読んでみる価値はアリ。