京極夏彦 『鉄鼠の檻』
- 文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)/京極 夏彦
- ¥1,400
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京極夏彦の《妖怪シリーズ》、あるいは《百鬼夜行》シリーズの第4弾。
結論から言うと、大傑作だった。
事件が終わったときのカタルシス。
鳥肌が立ちまくったし、意味もなく涙まで出てきたw
シリーズ前作の『狂骨の夢』を読んだのはもう6年くらい前になる。
なぜそんなにも読書間隔があいてしまったかというと、この本の長さが原因。
とにかく長い。
京極夏彦の本は、俗に「レンガ本」などと呼ばれるほどに分厚い。
この『鉄鼠の檻』は、文庫本1冊にしてなんと1376ページもある。
並の長編4冊分だ。尋常じゃない。
書店で手に取ってみるとわかるが、まずこれを「読もう」と思う段階でそれなりの覚悟がいるw
読んだら読んだで、読んでも読んでも終わらない。
それでも読んでしまうのは、とにかくめちゃくちゃ面白いからだ。
今回のテーマは《禅》。
謎の禅寺で起こる、連続僧侶殺人事件。
禅がテーマというと一見難しそうな気がするし、実際、禅については難しいんだけど、この本の中では実にわかりやすく説明してくれるから大丈夫。
テーマも展開も重厚ではあるが、語り口は意外とユーモラスだったりする。
主人公の1人、小説家の関口先生による自虐的ユーモアに溢れた一人称部分も楽しい。
今回の事件の肝になっているのはもちろん《禅》で、事件も犯人も動機もそこに端を発している。だから難しい。
禅のことを知らないのに、禅から起こった事件などわかるはずがないのだ。
いや、禅のことを知っている者でさえわかるものではないのかもしれない。
わかるのは、犯人だけ。
その犯人でさえ、本当に「わかった」のは最後の最後だった。
まさしく「禅問答」のような事件で、なにがなにやらわからない。
「言葉」の遥か先を行くのが《禅》というもの。(らしい)
言葉ではわからないものを、言葉で説明しなければならない京極堂(主人公)。そして作者。
これだけでもう、この小説は物凄いのである。
正直、日本の小説史に残る傑作なんじゃないかと思う。
ジャンルとしてはミステリーだけど、小説として素晴らしい。
《禅》を扱ったフィクションで、これ以上のものはたぶんないだろう。
長さに躊躇してしまうかもしれないけど、これはぜひ読むことをおススメします。
「そんなに分厚い本持ち運べないよーん」という方には、4分冊バージョンも出てるからご安心を。
- 分冊文庫版 鉄鼠の檻(一) (講談社文庫)/京極 夏彦
- ¥730
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ただし、お値段は1冊本より高くなりますけどねw
最後に、作中に出てくる印象的な唄を引用。
釋迦(しゃか)どの經(おしえ)を間違へて
數千(ちぢ)の佛(ほとけ)が湧いたとな
數千の佛がさゝくれの
刺の先から湧いたとな
舞舞螺(まいまいつぶり)のお役目は
今日も今日とてお役目は
殻を閉ざして知らぬふり、知らぬふり