ジョン・ディクスン・カー 『火刑法廷』
- 火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)/ジョン・ディクスン・カー
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ミステリ黄金時代の三大巨匠、クリスティ、クイーン、カー。
そのジョン・ディクスン・カーの傑作がこれ。
ちなみにこの作品が発表されたのは1937年である。
オールタイムベストのトップ10には必ず入るミステリの傑作古典。
主人公スティーヴンズが、友人マークから「伯父は本当は毒殺されたんだ」と告げられる。
真相を確かめるため、伯父の墓(礼拝堂地下にある棺)を暴くのを手伝ってくれと頼まれ実行するが、棺の中はからっぽだった。
一体どういうこと……?
というところから始まっていくわけだが、所々に差し込まれる謎が良い。
謎というより、なにか不気味で不穏な空気。
冒頭からずっと、作品全体に漂うこの「なにが起きてるの……?」という雰囲気が抜群に素晴らしい。
これはオカルトなのかミステリなのか。
というより、ほとんどオカルトとしか思えない状況になっていく。
あれ、これってホラーだったのかと思ったがしかし、そこは「密室の帝王」と呼ばれたカー。
最後には(一応)論理的に解決されて、やはりこれは本格ミステリだったのかと胸を撫で下ろした。
しかし、わずか5ページしかない最終章。
正直ここまでだったら、まぁ良作ではあるけどこんな後世まで語り継がれるほどか?という思いはある。
だが最後の章で、それまでの不穏さが形を成す……のか成さないのか……曖昧ではあるが、だからこそ「え……ホントに……?」という不安な気持ちになるのだ。
読者の解釈次第とは言うものの、これはもう本当に魔女は……
という感じ。
気になる方は、ぜひ御一読を。