ジョン・ディクスン・カー 『火刑法廷』



火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)/ジョン・ディクスン・カー
¥1,029
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ミステリ黄金時代の三大巨匠、クリスティ、クイーン、カー。



そのジョン・ディクスン・カーの傑作がこれ。



ちなみにこの作品が発表されたのは1937年である。



オールタイムベストのトップ10には必ず入るミステリの傑作古典。





主人公スティーヴンズが、友人マークから「伯父は本当は毒殺されたんだ」と告げられる。



真相を確かめるため、伯父の墓(礼拝堂地下にある棺)を暴くのを手伝ってくれと頼まれ実行するが、棺の中はからっぽだった。



一体どういうこと……?





というところから始まっていくわけだが、所々に差し込まれる謎が良い。



謎というより、なにか不気味で不穏な空気。



冒頭からずっと、作品全体に漂うこの「なにが起きてるの……?」という雰囲気が抜群に素晴らしい。



これはオカルトなのかミステリなのか。



というより、ほとんどオカルトとしか思えない状況になっていく。




あれ、これってホラーだったのかと思ったがしかし、そこは「密室の帝王」と呼ばれたカー。



最後には(一応)論理的に解決されて、やはりこれは本格ミステリだったのかと胸を撫で下ろした。






しかし、わずか5ページしかない最終章。



正直ここまでだったら、まぁ良作ではあるけどこんな後世まで語り継がれるほどか?という思いはある。



だが最後の章で、それまでの不穏さが形を成す……のか成さないのか……曖昧ではあるが、だからこそ「え……ホントに……?」という不安な気持ちになるのだ。




読者の解釈次第とは言うものの、これはもう本当に魔女は……





という感じ。



気になる方は、ぜひ御一読を。