ちょっと遅い帰宅でブログ書く時間がないので、数日前に書いた読書感想文を。
山尾悠子 『ラピスラズリ』
- ラピスラズリ (ちくま文庫)/山尾 悠子
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もはや「伝説の作家」と呼ばれるほどの高尚な文章力と物語、そして極端な遅筆で有名な幻想小説家、山尾悠子。
噂には聞いていたが、今回初めて読んでみた。
ちなみに自分が読んだのは、豪華な箱入りの単行本版。
- ラピスラズリ/山尾 悠子
- ¥2,940
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最近になってようやく文庫化されたらしい。
加筆訂正も行われていて、なにより値段がお手頃なので、今から読む方は文庫でどうぞ。
さて物語は、とある《冬眠者》について。
冬になると、春まで眠り続ける《冬眠者》の人々。
この作家の特徴なのか、細かい設定は語られない。
ただそういった《冬眠者》がいて、その周りにはたくさんの召使いがいて、もしかしてそれらはすべて絵の中のお話なのかもしれない。
あるいは昔から連綿と続いてきた眠る者たちの歴史。
なんだかよくわからないのだ。
2編の短編のあと、「竈の秋」という中編があり、その後にまた2編の短編で締めくくられる本書。
噂に違わぬ硬筆っぷりで、時に難解とも感じられる文章は少し手こずった。
視点があまりにも定まらず、もはや神の視点すら超越したかのような描写は正直かなり読みにくく、何がどうなってるのか把握するのも一苦労だったのが「竈の秋」。
その後、ちょっと毛色の違う短編「トビアス」が良い。
驚いたことに、登場人物は日本人のようだ。(それ以外は全部ヨーロッパとおぼしき場所が舞台)
これぞまさに「幻想小説」としか言いようのない物語だった。
ちょっと気分転換に読めるような小説ではなく、静かな場所で、静かな心地で読むのがいいように思う。
著者のこれまで発表してきた中短編をまとめた大著、『山尾悠子作品集成』もいつか読んでみたい。
いかんせん高くて(一万円近い)、なかなか手が出せないんですけどね……。