スティーグ・ラーソン 『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』
- ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)/スティーグ・ラーソン
- ¥840
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本国スウェーデンで大ベストセラーとなり、日本のミステリー界でもかなりの話題となった三部作の第1部。
スウェーデンで映画化され、ハリウッドリメイクもされた。
この第1部《ドラゴン・タトゥーの女》では、ジャーナリストの主人公ミカエルが大富豪から何十年も前に行方不明になった少女の事件を解明してほしいという以来を受ける。
その過程で、もう一人の主人公とも言える女性リスベット・サランデルと出会い、2人は共に調査を開始する。
と簡単に言ってみたものの、そこに行きつくまでが長い長い。
著者は主人公と同じジャーリストだったそうで、そんなジャーナリズム精神がふんだんに盛り込まれた社会派小説でもあるのだ。
ミステリだと思って読んだ読者にとっては、「それより早く事件のことを……」と思わないでもないw
でも大丈夫。経済界の色んな物事が出てくるものの、とにかくめちゃくちゃ読みやすいからスラスラ読んでしまう。
これは著者と、それから翻訳者の功績でしょう。素晴らしいリーダビリティ。
そしてこの『ミレニアム』の最大の魅力は、なんといってもリスベット・サランデル。
24歳なのに15,6に見えて、触れれば切れる狂犬のような性格。
凄絶な過去を持っていそうで、ハッカーの腕も超一流。
おまけにアスペルガー症候群かというような情報記憶能力を持ち、仕事である調査能力は他の追随を許さない。
読んだ誰もが好きになるキャラ。とにかくキャラが立っている。(実際こんな人と関わりたいとは思わないけどw)
ぶっちゃけ、リスベットがいなかったらこの小説の魅力は半減だろうね。
それほどまでに、よくできた人物です。
ミステリー的には、後半で舞城王太郎かよというようなイカれた見立て殺人が出てくるものの、最終的には宮部みゆき風の社会派ミステリーになる感じ。
驚きのトリックで読者をあっと言わせるタイプではなく、ジャーナリスト的ともいうべき地道さで手がかりを見つけていくパターン。
そう考えると地味な気がするけど、事件そのものが常軌を逸してるので地味さは感じなかった。
正直この第1部だけでは、本国で「これを読んでいないと職場の会話についていけなくなる」というほどの傑作には思えなかったが、第2部・第3部を読めば、もしかして大傑作になるかも……?という予感は感じました。
しかし、いかんせん長いので、続きはもう少し経ってからにしよう……。
ちなみに著者のスティーグ・ラーソンは、この『ミレニアム3部作』を書き上げたあと、出版して大ベストセラーという偉業を知ることなくこの世を去ってしまっている。
そういった背景を踏まえた上でも、この小説は早くも伝説化しているのでしょうね。