恒川光太郎 『夜市』



夜市 (角川ホラー文庫)/恒川 光太郎
¥540
Amazon.co.jp


第12回 日本ホラー小説大賞受賞作。




何年か前に単行本で読んだ本だけど、文庫にて再読。



「ホラー小説大賞」の受賞作品ではあるが、恐い要素はほとんどなくて、どちらかといえばファンタジーっぽいので安心されたし。

ファンタジーといっても、「和風ファンタジー」な雰囲気。

一番しっくりくる言い方は、「幻想小説」か。




表題作の「夜市」は、いわば異界の市場。

なんでも買えるその市場で、幼いころに弟を売った男の物語。



解説にもあるように、物語の持っていきかたが半端じゃなく上手い。

決して「ありがち」な展開にはならず、かといって奇を衒いすぎていることもなく、誰も思いつかないような、それでいてそうなるしかないと思わせてくれるような展開になるのだ。




もう一つの中編、「風の古道」も「夜市」に負けず劣らず素晴らしい。



こちらは、異界の者だけが通れる古道に迷い込んだ少年の物語。

若干都合のいい展開があるものの、話の広がりはこちらのほうが上かもしれない。

この古道を舞台にして連作短編が書けそうなほどに魅力的な設定なのである。






どこか不思議で少し恐い。

そしてずっと忘れることのできないような物語を読みたいのなら、この作者はおススメです。



どの作品でも大丈夫だけど、まずはこの『夜市』から入るのが無難かと思われます。