三津田信三 『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』
- 密室の如き籠るもの (講談社文庫)/三津田 信三
- ¥830
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《刀城言哉シリーズ》、初の中短編集。
濃密ホラーと本格ミステリが見事に融合していることで有名なこのシリーズ。
長編では、そのどちらも存分に味わえますが、短編だとやはりちょっと弱い。
どちらかと言えばミステリ寄りかな。
しかし、怪異の描写は恐い。
特に、山中で出逢う怪異はめちゃくちゃ恐い。くれぐれも、山に入る前に読んではいけませんw
唯一の中編であり表題作の「密室(ひめむろ)の如き籠るもの」は、怪異の描写こそ薄いものの、ミステリとしては長編に負けないくらいの出来。
途中の密室談義は、本格ミステリ好き以外にはやや冗長かもしれないけど、ラストの鮮やかな反転は素晴らしいの一言です。
いやぁしかし、そんなことが有り得るか……でも確かに、有り得ないとは言えない……。
「もしかして……」とは思ったけど、まさか本当にそんな真相だったとは。
「○○による殺人」というのは、なんとなく禁忌めいたところがある気がします。
それは、倫理的にも、ミステリ的にも。
アンフェアとまでは言わないものの、なんとなく避けてる作家が多いような。
でも調理次第では傑作になる。
この中編も、成功した例だと言えましょう。
ちなみに、シリーズとは言っても「作家である刀城言哉が探偵役のシリーズ」という共通項だけなので、シリーズ未読でも大丈夫です。
もっと濃密なホラー&ミステリ描写を読みたい方は、シリーズ1作目の長編、『厭魅の如き憑くもの』がおススメです。