小川一水 『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ』
- 天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)/小川 一水
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小川一水、渾身の大河SFシリーズ『天冥の標』
全10巻の始まりを告げる第1巻。
いやもう、これはどこから言及したらいいのかわからない……。あまりに唖然としてしまったのでw
特にラストの展開。
おいおいおいおいおい……と思わずにはいられない。
一見、異星ファンタジーのようでありながら、細部に見え隠れするSF的謎がまた素晴らしい。
この巻のあらすじとしては、遥か昔に地球から移民してきた人類が、惑星ハーブCの植民地メニー・メニー・シープでの政治的紛糾に立ち向かう冒険小説。
しかしもちろん、そんな単純な話ではなかった。
政治的暴君である「領事(レクター)」と戦う市民たちのお話はやがて(というか最後に)、とんでもない方向へ向かう。
数々の謎も魅力的。
ざっと羅列するだけでも、
・《海の一統(アンチョークス)》、《石工(メイスン)》、《恋人たち(ラバーズ)》、《咀嚼者(フェロシアン)》、《ダダー》などなど、色々な人種の謎。その起源。
・主人公(?)のセアキ・カドムと《咀嚼者(フェロシアン)》のイサリの関係。(大昔、何かあったっぽい)
・地球から来たという変な2人組。(惑星ハーブCから地球は、光の速さで何十年もかかる)
・半機械の羊を放牧する羊飼いたち。そして羊飼いが恐れる《プラクティス》。
・《石工(メイスン)》の集団に徐々に芽生える自意識。そして本当の名である《休息者(カルミアン)》の意味。
・惑星ハーブCは、本当に惑星なのか?
・個人的に一番気になるのが、《ダダー》のノルルスカインの正体。
などなど、言い出したらキリがない謎の数々。
驚いたことに、これらはほとんど解明されないままこの1巻は終わるw
まさしく、全10巻の大河シリーズの序章といった感じ。あるいは謎の提示本。
しかしだからといってつまらないわけはなく、むしろめちゃくちゃ面白い
読むのが遅い自分が、なんと上巻の半分から下巻の最後まで、徹夜で読み切ってしまったのだから。
こんなことは滅多にない。いつもはどんなに面白くても、じっくり読む派なのに。
ちなみに現時点で出てるのは、第6巻の『宿怨』PART1まで。
そして2巻目の『救世群』は、201X年の地球が舞台とか。(1巻は2800年代)
シリーズといっても、時間軸はバラバラに展開されるらしい。3巻は2310年の宇宙が舞台とか。
全10巻が完結してから読み始めるのもいいけど、これはできればリアルタイムで追いかけたいシリーズ。
「まだ全貌が明かされていない」という未知に対する期待値。「え?どういうこと?うひょー」というワクワク感。
それを感じたいのなら尚更。
完結した暁にはどうなってしまうのか……。
恐ろしけど、これが完結するまではマジで死ねない。
そう思える第1巻でした。