恩田陸 『ブラザー・サン シスター・ムーン』



ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)/恩田 陸
¥494
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三部作構成の本だが、第一部は著者の自伝的小説といっても過言ではない。(前に読んだエッセイと重なる部分も多々あったし)



特にこれといったことが起こるわけではなくて、いわゆる青春小説。



この著者以外が書いたらさぞや退屈なものになりそうだけど、そこは恩田陸の魔術。面白い。




気に入った文を引用してみる↓



《大学生というのはもっと大人だと思っていたけれど、高校生をもっと大人だと思っていたのと同じくらいに大人じゃなかった。本や映画で観た十七歳が、実際自分でなってみたらたいへんショボかったのと同じように、本や映画で観た二十歳は、更に輪をかけてたいしたことがなかった。》



誰もが少なからず感じることではないだろうか。



「二十歳の自分なんて、こんなものか」という諦念……。









ところで内容とは関係ないけども、これの文庫版は、単行本未収録の短編と、著者の対談が掲載されたらしい。(自分は単行本を読みました)



こういうのは結構あるんだけど、値段の高い単行本より、安い文庫のほうが『完全版』のような扱いで特典がつくこのシステムはなんだかおかしい気がする。普通は逆でしょう。



いっそのこと、単行本と文庫を同時発売にして、単行本のほうにはそういった特典をつけるというのが良いと思う。