うえお久光 『紫色のクオリア』



紫色のクオリア (電撃文庫)/うえお 久光
¥641
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久々にライトノベルを読んだ。



しかし可愛らしい表紙に騙されてはいけない。

実はこれ、ラノベの皮を被った本格SFなのである。




自分以外の人間が全員ロボットに見えてしまう、紫色の目を持つ少女毬井ゆかり。(表紙の女の子)



そんな特殊な目を持つゆかりと、語り手である波濤学(女子です)らが、まぁそれなりのラノベ展開をするのが前半部分。



それが後半になると、怒涛のSF展開を見せる。



量子力学に並行世界、哲学的ゾンビやらプランク時間やら、ハードSFが扱う素材を惜しみなく導入し、いつしか壮大なスケールの本格SFになっていた。



にも関わらず、すごく読みやすい。

難しい用語や、ややこしい展開の割にはかなりスラスラ読めてしまう。

それがまたお見事。





後半の後半では、語り手の波濤がとある目的のために、狂気的ともいえる地平に到達してしまう。



この辺は本当に圧倒された。

「なんかスゲェことになってきたな……」といった感じ。




ラノベ好きにもSF好きにもどっちでもない人にもおススメの傑作です。




でもたぶん、がっつりラノベ読者の人には物足りないかも?

というか、これは絶対SFだよ。ラノベじゃなくて、ハヤカワ文庫あたりで出るのが正解だったSF。