ダン・シモンズ 『ハイぺリオンの没落』



ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)/ダン シモンズ
¥903
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長かった……実に長かった……。

もうずっとこのハイぺリオン宇宙にいた気がする……。



でも凄かった。歴史的傑作と言っていいほどに。




前作『ハイぺリオン』に続く、二部作完結編『ハイぺリオンの没落』である。




『ハイぺリオン』で提示された謎の解決編だけど、もうなんて言ったらいいかわからないくらい凄まじい物語の奔流。



この本の凄いところは、巻末の解説にもあるように、「新しいSF」的なモチーフを一切捨てて、「ベタなSF的ガジェット」だけで作り上げてしまったところにある。



恐らくこの著者以外の人が書いたら、およそ商品にならない子供騙しがまんまと完成していたことだろう。

それを「歴史的傑作」にしてしまうシモンズの手腕に脱帽です。





「SF版《指輪物語》」とでも言えそうな長大で深淵な物語であり、そのSF的スケールは、漫画版『風の谷のナウシカ』を宇宙レベルでやってのけたかのような有様。



SF的興奮は言うまでもなく、謎解きのスケールもハンパじゃない。

思わず泣きそうになる感動まで用意されているなんて。




あまりに壮大過ぎてまともな感想が書けないのがもどかしい。



無理矢理書こうとすれば、作文がヘタな小学生みたいに「あれがこうなってこうなってこうなりました」というような、ただあらすじだけを(ネタバレ気味に)滔々と書き連ねる駄文になりかねない。



とにかく、「読んでみなっせ」としか言えないのだ。



SF好きは言うまでもなく読んでる(あるいはこれから読む)だろうけど、今まで一切SFを読んだことがなくてこれからも一冊しか読みませんという人に贈るSFはこの《ハイぺリオン二部作》をおいて他にない。



まぁ、二部作だと文庫4冊になっちゃうんだけどね。これの更なる続編《エンディミオン二部作》も入れたら8冊になっちゃうんだけどね。




そうなのだ。これだけ長かったのにまだ終わってはいないのだ。

完全に解決されてない謎も残っている。



続く『エンディミオン』と『エンディミオンの覚醒』でようやく、《ハイぺリオン四部作》が完結する。



しかも《ハイぺリオン二部作》よりも長いとか。嬉しいような苦しいようなw




第三部の『エンディミオン』はなんと、『ハイぺリオンの没落』から三百年後のお話らしい。



実に楽しみだけど、濃密過ぎてたいへん疲れたので一旦このハイぺリオン星系から離脱します。

《エンディミオン二部作》まだ買ってないし。






それにしても凄かった……。



「すべてのSFはこの作品のためにある」という惹句にも頷けます。




全地球人必読。まずは『ハイぺリオン』から。