ダン・シモンズ 『ハイぺリオン』
- ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)/ダン シモンズ
- ¥987
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「20世紀SFの集大成」とまで言われ、およそSF好きで知らぬ者はいないであろう大傑作《ハイぺリオン四部作》の始まりの巻。
四部作は、『ハイぺリオン』、『ハイぺリオンの没落』、『エンディミオン』、『エンディミオンの覚醒』と続く。
どれも分厚い文庫本上下巻、つまり全部で8冊。
ズラーッと並べたら気が遠くなるような長さだけど、そこは安心していい。長さなんて気にならないくらい面白い。
物語を簡単に言うと、辺境惑星ハイぺリオンに存在する謎の遺跡《時間の墓標》が開き、墓標周辺に出没する時を操る不死の殺戮者シュライクもハイぺリオン各地に現れるようになる。
それと同時に、連邦に属さない「宇宙の蛮族アウスター」たちがハイぺリオンに向かって大挙押し寄せようとしていた。
《時間の墓標》とアウスターを止めるべく、選ばれし七人の巡礼たちが一路ハイぺリオンへと赴く。
構成的には、七人の巡礼それぞれが、「なぜハイぺリオンへ赴くことになったか」の物語を語りながら進む。
各物語の合間に、〈現在〉であるハイぺリオンへの旅路が描かれる仕組みだ。
だから、長編というより連作短編集のような趣がある。
とはいえそれぞれが語る自身の物語の密度は濃く、それだけで長編が1冊書けそうなくらいだ。
理由あって物語は6つしか語られないが、その6つがまさに「SFの集大成」とも言うべき様々なジャンルから成っている。
文化人類学SF、ミリタリーSF、文学風、時間SF、ハードボイルドミステリ的手法のサイバーパンク、その他諸々のSF的要素が満載で、しかもそれらが後々繋がってくる。
特に心に残ったのが「学者の物語」で、なんとも悲しくやるせない話だ。
ホントに、この短編一つだけでも『アルジャーノンに花束を』に負けないくらいの「泣ける話」が作れそうだ。ハリウッドで即映画化間違いなし。
この『ハイぺリオン』で驚くのが、こんなに長い話が(上下読むのに2週間かかった)まだほんのプロローグでしかないということ。
惑星ハイぺリオンがどういった場所なのか。《時間の墓標》とシュライクの謎について。そして七人の巡礼の過去。
それらが開示され、さあいざ《時間の墓標》へ!というところでこの本は終わる。
速攻で続編の『ハイぺリオンの没落』に手を伸ばしたくなるので、これから読もうという方は間違っても『ハイぺリオン』だけしか買ってないなんてことがないようにしよう。
というわけで、分厚い上下巻を読み終えたものの、まだほんの序章にすぎないので評価はいかんともしがたい。
だけどこの『ハイぺリオン』だけでも、並のSF数冊分の密度と、他では味わえない面白さがある。
「20世紀SFの集大成」はダテじゃなかった。
さて、いよいよ謎が解かれる(でも全部ではないらしい)続編に取りかからねばなるまい。