ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 『MORSE━モールス━』
- MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)/ヨン・アイヴィデ リンドクヴィスト
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スウェーデンの作家、リンドクヴィストのヴァンパイア・ホラー長編。
主人公のいじめられっこオスカルは、近くに越してきた少女「エリ」と心を通わせるが、エリにはある秘密があった。
エリは200年生き続けるヴァンパイアだったのだ。
と書くと、近年よくあるヴァンパイアもののように感じるが、これはもっと静謐で哀しく美しい物語。
『ぼくのエリ 200歳の少女』という、アホみたいな邦題で映画化されているし(内容は素晴らしいらしく、いくつもの映画賞を受賞している。邦題が……)、その『ぼくのエリ』をハリウッドがリメイクもしている。こちらの邦題は『モールス』。
この著者は、「スウェーデンのスティーヴン・キング」と言われているだけあって、比較的地味な話であるにも関わらずグイグイ読める。
ヴァンパイアの少女(正確には少女じゃないけどそこは読んでのお楽しみ)エリの哀しみや、いじめられっこで内気な割に意外と大胆で自意識過剰なところがあるオスカルの友情物語でもあるが、個人的に一番印象に残ったのは、エリと共に暮らしていた冴えない中年男のホーカンだ。
ホーカンは、エリの美しさに魅入られ、エリが生きていくために必要な生き血を調達する役割だった。
哀れなホーカンは後半、人ではなくなる。死してなお、異形の怪物となって街を彷徨う。エリを求めて。
生きていた頃のホーカンのモノローグが、終始頭から離れなかった。(引用↓)
『世界で最も美しいもの。それが伸ばした腕のすぐ先にある。永遠に届かないところに。』
雪に覆われたスウェーデンの哀しく美しい物語。
冬に読みたい傑作です。