本の話題です。
第146回 芥川賞&直木賞が決定しました。
芥川賞は、円城塔 『道化師の蝶』 そして田中慎弥 『共喰い』のダブル受賞。
直木賞は、葉室麟 『蜩ノ記』。
個人的に直木賞は、恩田陸 『夢違』に獲ってほしかったなぁというところ。
恩田陸は、一体いつになったら直木賞獲れるんだろうか。もう何度もノミネートされてるのに。
そして芥川賞ですよ。これは驚いた。
田中慎弥のほうはよくわからず。まだ読んだことないので、今度読んでみよう。
問題は円城塔ですよ。まさかの芥川賞。
これはSF好きとしてはたいへん嬉しい。
今まで何回か候補になってはいたけど、まさかホントに獲るとは。
説明しよう。円城塔とは、デビュー作『Self-Reference ENGINE』(通称『SRE』)で日本SF界に颯爽と現れた異端児なのである。
その作風は特殊で、読む人みんなが「よくわからないけど面白い」と口を揃える代物。
とにかくよくわからない。難しいというか、摩訶不思議。でもSF。でも文学。
この作家のデビューは事件だった。少なくともSF界にとっては。
だけどSF方面でデビューする前に、実は文学方面で書いていたりもする。
『オブ・ザ・ベースボール』で、文學界新人賞を受賞していたのだ。
(単行本として刊行されたのは『SRE』が先)
その後、SF方面と文学方面で書き続け、何度目かの芥川賞ノミネートを経て、今回ついに受賞に至ったのである。めでたい。
正直まだ受賞作の『道化師の蝶』は読んでないのでなんとも言えないけど、SF作家が芥川賞を獲るという快挙に、全国のSF者は狂喜乱舞したこと間違いなし。(たぶん)
しかしこの芥川賞受賞で興味を持って円城作品に手をつけた人々は、大いに戸惑うんじゃないだろうかと勝手に危惧している。
『SRE』以降の円城作品を読むとわかるが、『SRE』はまだわかりやすいほうだった。単純明快と言ってもいいほどだ。
その後の円城作品、SFならば『Boy's Surface』や『後藤さんのこと』、その他アンソロジーに書き下ろした中短編は非常に手強い。
一回読んだくらいでは理解できない。もしかしたら、何回読んでも理解できないんじゃないかとさえ思えるw
それは、文学方面の『オブ・ザ・ベースボール』や『烏有此譚』や『これはペンです』も同じだ。
どこか飄々としていて、捉えどころがない。実は中身なんて何もないんじゃないかと思うときもあれば、壮大で深い深い物語なのではないかと思えるときもある。
いや、「物語」なんてものはなくて、ただ「何か」がある(ような気がする)だけかもしれない。
「ストーリー」よりも、小説の「構造」が肝になっているものが多い。
とにかく、極度のひねくれ者なのは間違いないだろう。
あるいは天才か。
……と、散々脅してきたけど、普通に面白いからおススメですよ。
まずは、『SRE』か『オブ・ザ・ベースボール』から入るといいかもしれません。
「うわっ、よくわかんねw」と、楽しくなること請け合いですw
最近はこういった文学賞にも興味を持てなくなってきてましたが、円城塔の受賞は驚きだったので書いてみました。
これでSF方面にも光が……差すといいなぁw