恩田陸 『不連続の世界』



不連続の世界 (幻冬舎文庫)/恩田 陸
¥600
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ジャンル分けは無意味な、だけどややホラーチックな短編集。


恩田陸の文章は、いちいち自分の中の「ナニか」を想起させる力があるので、読みやすい文章にも関わらずスラスラ読めないときがある。

読みながら、あれこれ考え込んでしまう。



知っているのに忘れていること。あるいは、見ているのに気付いていないこと。

それらを拾って文章にするのが非常に上手い作家だ。



それと恐怖も。



ジャンル的にはホラーとまでは言えない本だと思うけど、恩田陸の描く「さりげない怖さ」は、実は何よりも怖い。



それは物語の本筋以外のところにも存在するから油断ならない。



例えば、『木守り男』に出てくる放送作家が毎晩見る夢。

確かだと思っていた日常は、実は幻影だった。見ている光景の不確定さ。現実のゆらぎ。



それ以外にも、ゾッとするような話を何気なく描く。



怖いのは、現実に浸食してくる「異物」だ。

あるいは説明できない「ナニか」。

そこにあった筈のものが、実は存在しなかったという恐怖もある。原始的な恐怖。




読み終えたあとは、「現実」のほころびに気付いてしまうかもしれない。



気付いてしまったらもう、気付かなかった頃の自分には戻れない。



世界の不確かさを知りながら、生きていかなくてはならないのだ。




地面だと思って安心していたのに、本当は薄い氷の上に立っているだけだとしたら……。