小松左京 『果しなき流れの果に』



果しなき流れの果に (ハルキ文庫)/小松 左京
¥840
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『日本沈没』の原作者と言えばわかるだろうか。



あまりにも偉大なSF作家。

日本SF界、最大の功労者である。



その小松先生が、先日亡くなられた。



だから追悼の意を込めて……というわけではなく、近々読もうと思っていたので読んだこの本。



世間的には『日本沈没』が有名だが、SF好きにはむしろこちらのほうが有名かと思われる。




あらすじを書くのが困難なほどに壮大で入り組んだ物語だ。



プロローグでは、白亜紀、恐竜がいる時代の岩山の隙間で、黄金の《電話機》が鳴っている場面が出てくる。



もうこれだけでワクワクだ。白亜紀に電話?



そして第一章では現代(ちなみにこの本が書かれたのは46年前)、なんと、永遠に砂が落ち続ける砂時計が出てくるのだ。

これまたワクワクが止まらないではないか。



そこからは、あまりにも壮大な宇宙と人類を巡る争いが繰り広げられていく……。




小松左京や光瀬龍、星新一や筒井康隆など、SF黄金時代と言われた時代。



この時代のSFは、とにかくスケールがでかい。



読み終わったあと、なんとなく夜空を見上げて夢想したくなる。



壮大な宇宙。時間跳躍。人類の拡散。



科学的整合性なんて気にせずに、SFの原初的な楽しさを満喫できるのだ。



こういったSFは、《ワイドスクリーンバロック》と呼ばれるが、最近あまり聞かない。



確かに今、こういうSFは少なくなった。



だから悪いというわけでは全然ないけど、進む方向性は、この黄金時代とは別のところにあるような気がする。

(伊藤計劃や円城塔、飛浩隆を読むとわかる。山本弘や小川一水は、まだしも黄金時代っぽいものが残ってはいるが)




そして前述したとおり、著者はつい先日亡くなった。



最近では小説の執筆はほとんどしていなかったようだが(だいぶお歳だったので)、『復活の日』や『さよならジュピター』や『継ぐのは誰か?』などなど、多数の素晴らしいSFを生みだしてくれた、日本SF界の父であった。



といっても、リアルタイムに知ってるわけではないし、読んだのもこの本が初めてなんだけどねw



まぁとにかく、凄い人だったということです。




有名作品以外はほとんど絶版なので、《追悼フェア》などで著者の作品が復刊されるのを切に願う……。