乾緑郎 『完全なる首長竜の日』
- 完全なる首長竜の日/乾 緑郎
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《第9回 このミステリーがすごい!大賞》の大賞受賞作。
個人的には、海堂尊以来の当たり大賞だった。
自殺を試みて昏睡状態に陥っている弟と、インターフェイスを通じて夢の中で会う姉。
幼い頃の回想や、少女漫画家の姉の日常が幻想的にリンクしていき、次第に夢と現実の境界は曖昧になっていく。
ミステリーの新人賞だが、これはSFと呼んだほうが良さそうな気がする。
オチは確かに予想できるものだが、その見せ方が巧い。
首長竜という『象徴』の使い方や、サリンジャーの名作との関連も素晴しい。
夢の中で繰り返す自殺。
現実と思っていたのに、夢。
夢から醒めたと思ったら、また夢。
現実と夢の境界など、本当はないのかもしれない。
映画『インセプション』と類似する内容だが、決してパクッたわけではないらしい。
むしろこっち(首長竜)のほうが先とか。
だとしたら、同時期にこの2作品が世に出た偶然は面白い。
今この瞬間、現実だと思っていることが夢ではないと、どうやって証明できようか。