アマゾン川l流域の森を歩く■45-① サンパウロからマナウスへ (ブラジル) | 熱帯雨林を歩く

アマゾン川l流域の森を歩く■45-① サンパウロからマナウスへ (ブラジル)

Manaus/Brazil

熱帯雨林を歩く
                       ●バスの前面の夕焼けの中に、熱帯雨林の燃える煙がまるで入道雲のように立ちのぼっていた

少し古い話になるが、19868月、僕はブラジルの奥地、地上最大の湿地帯と呼ばれるパンタナールにいた。サンパウロをバスで出発し、カンポグランデを経由してクイアバに着いた。さらに路線バスに乗り換え、カセレスに着く。そこから四輪駆動車でパンタナールにあるバランキンニョのロッジに向かった。

サンパウロからの距離およそ1600km、時間にして24時間あまりかかった。さらにここからポトベーリョを経由し、アマゾン川岸辺にあるマナウスに向かった。およそ2300km40時間をこえた。


熱帯雨林を歩く
                                           ●アマゾンの大地をどこまでも走るアマゾンハイウェー

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                                           ●バスが故障するとのんびりと待つ以外にない

この時の旅ではどうしてもアマゾン川を自分の目で確かめたいと思った。世界最大の流域をもつアマゾン川はどんな姿をしているのだろう。アマゾン川を育むブラジルの大地とはいったいどんな所だろう。陸路をたどり、本流のあるマナウスまで行ってみよう。アマゾン川とアマゾン川のある大地を少しでも直に身体で感じてみたい、そんな思いだった。


熱帯雨林を歩く

地図を見るとパンアメリカンハイウェーは、クイアバからポルトベーリョへ、さらにマナウスへと道がつながっていた。地図の道は茶色に塗られたブラジル高原を越え、黄緑色に塗られた熱帯雨林を貫らぬいている。アマゾン川流域には、熱帯雨林を表すセルバという文字が書きこまれている。このルートでブラジルのほぼ3分の2の大地を走ることになる。その先にはアマゾン川が横たわっていた。

ルートは決まったが、そこは当時ほとんど情報が手に入らない地域だった。 

 

■アマゾン開発

ブラジルでは1970年代、アマゾンでの本格的な開発が始まった。当時のブラジルのメジン政権が打ち出した「国家統合計画」にそって、多くの道路建設が計画された。アマゾン開発は、国家安全の確立と北東部の貧しい農民に土地を与え、貧困を解決すると考えられた。

 

その結果、大西洋を臨む北東部の海岸からペルーの国境近くまでを結ぶアマゾン横断道路(トランスアマゾニア)や、アマゾン川下流のサンタレンからクイアバに縦断する道路などがつくられた。

 

ボリビアに接するロンドニア州は、アマゾンの中で急激に開発が進んだ地域であり、その開発の中心は、道路建設であった。1968年にクイアバからポルトベーリョまでの建設が始まり、雨期や大量の雨が降るとしばしば通行不能になるため、1981年には道路の完全舗装が行われた。


熱帯雨林を歩く
                                            ●完全舗装の道をひたすら走る

今回、この道を通ったのはその5年後になる。盛り土の上につくられたコンクリートの道は快適そのもの、ミツバチをデザインした緑色のバスは、100kmをこえるスピードで走った。

 

窓の外にはパンタナールの湿原が続き、沼にはサギが羽を休めていた。湿原はしだいに乾燥した土地に変わり、潅木が広がり、広大な牧場が見えてきた。マトグロッソ高原を北に向かって横断していた。


熱帯雨林を歩く

熱帯雨林を歩く

ポルトベーリョに近づいた頃である。火の入った熱帯雨林が目立ってきた。道路の両脇では、燃えきらない木が雨にくすぶりながらに立っている。燃え終えた森の片隅には、丸太で囲った粗末な小屋が見える。まだ建てたばかりで屋根も壁も真新しい。子どもたちが遊んでいる。もちろん電気もない。このような小屋が、熱帯雨林の黒々とした焼け跡に何軒も立っていた。


再びバスがスピードを落とした。バスの前方には燃えた煙が霧のように広がっている。木の燃えかすがバスの中に入ってくる。草木の焼ける臭いが廻りに充満する。道路ができたため、一気に人々が押し掛け、まさに熱帯雨林が切り倒されている最中だった。

 

ポルトベーリョを出発しても、道路の右も左も燃え尽きたばかりの森がさらに続いていた。まるで火山の噴火跡のようだった。燃え残った大木が墓標のように立っている。夜になってもたびたびバスは煙に前方を遮られスピードを落とす。闇夜の中で、倒れた木々が、溶岩の流れから噴き出す赤い炎のように不気味に燃えている。こんな風景が何時間も続いていた。


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