鏡の前に座る焼きたてのフランスパン。
自分の美しさに溺れ、
一歩も鏡の前から動かない。
三日後、まだフランスパンは鏡の前にいる。
生まれたての瑞々しさは失いつつも、
自分自身の美貌に誇りをもって、
キッとした表情で
たおやかな佇まいを自己演出していた。
それから一週間。
フランスパンはまだ鏡の前で自分に溺れている。
かさかさになって、はがれ落ちた小麦の皮膚。
もう価値が無くなってしまったその姿を見て、
フランスパンはやはり一歩も動くことができなかった。
乾燥しきった窪みと湿気でやや艶っぽくなった先端の丸み。
その老いを謳歌するように、
フランスパンはいつものように鏡を眺め、
今もなお、すらっとした身を誇らしげに
携えていた。
やがて、丸みを帯びたつま先が
カビで青く染まってくる。
それでもフランスパンはその場を動かずに、
鏡を眺め、
青色の成長を我が子の様に見守っていた。
壊れたレコードを飛行場に向かって投げている。
滞空時間が長いと、それだけ飛行機のエンジン音に
共鳴して、
まるでギャートルズの声みたいに、
音が物体化していく。
物体化した音は次々と気流に乗って、
食料問題を抱えた国に飛んでいく。
どうやらその物体は食べられるらしい。
レコードでそれだけの食事ができるのなら、
CDだったらどうなるんだろう。
思わずCDを投げたら、
例の国からミサイルが飛んできた。
深い深い緑。
僕は訳もわからず走り続けている。
小さな明かりに向かって、
息を切らしながら。
なぜかスリッパで。
まるで病院用の無簡素なそれは、
悪趣味な音をピタピタと立てて、
あせる僕をさらに煽ってくる。
足を止めれば、その不快な音はなくなるけど、
止まれば誰かに襲われてしまう。
屋内用と書かれたスリッパ。
土の上を走り続ける僕。
追ってくる誰か。
走っている最中に、
追われる理由に気付くが、
それでも僕はまだ走り続けている。
うどんを食べている。
よくみたら、
プラスチックだった。
快走していた車が
力無く止まっていく。
最後はのろのろ運転になって、
音もなく停車した。
停車した瞬間、リアガラスを
獣の手が突き破る。
後ろにいた人は血まみれに
なって、逃げようとしたら
獣の手に握られて、
頭から食べられた。
冷蔵庫のドアにアヒルがはさまっている。
助けてあげようとドアを開いたら、
中から大量の卵が落ちてきた。
アヒルはくちばしを大きくあけて
僕を威嚇して卵を守ろうとしているが、
無惨にも卵は床に落ちて割れていく。
割れた卵の中からドロッとした坂田師匠が出てきた。
スペインの会社と合併したから、
パエリア作りをおぼえろ!
と、言われる。
そんなもん食べたくない!
と、パエリアの鍋をひっくり返すと、
CNNのニュースで大きく取り扱われてしまった。
緑色の錆びた自転車。
ペンキが入った水玉風船を、
その自転車にぶつけて、
サイケデリックな模様にしている。
元の色がまったくわからなくなるほど、
色鮮やかになった自転車。
ペンキが乾くまで、
三角座りをして待っている。
突然知らない人がやってきて、
色塗り税を払って欲しいといわれる。
サーフボードにのったネコ。
魚をとるためか、
沖に向かってぐんぐん進んでいく。
大きな波がやってきて、
簡単に波にのまれた。
海上にぷかぷか浮かぶネコ。
現地人のボートがネコの上を通過して、
モーターの羽でみじん切りになっていく。
そのみじんぎりを求めて、
魚がいっぱいやってきた。
サラダをつくっている。
大きなシンクでレタスを洗っている。
ぐるぐるかき混ぜていると、
真っ白になって、
ビタミンなどの栄養素が全部流れてしまう。
これって、意味ないんじゃないですか?
と、料理長に意見すると、
この世の全ては無意味なんだ、と
叱られる。