サンドラが出て行くと俺はすぐに仕度を済ませ、部屋を後にした。
アムステルダム・セントラル駅に行くとチケットを買い列車に飛び乗った。

アントワープに着いて昔H氏に教えてもらった、ダイアモンドブローカの事務所に行くとそこは、ショウケースなどは一切置いてなく殺風景な印象の・・・ラビのたまり場だった。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%93

H氏の名前を出し投資用の裏ダイアを格安で手に入れると、ブラッセルのジュエリーデザイナー、エリック ゲレツ宅へ向い、裏物だからと忠告して6.5号の指輪を頼んだ。

「悪い、今から始めてくれ。特急料金は払うから」

「H氏のお知り合いの頼みは断れませんよ。三日下さい、デザインはまかせてもらえますね」

とエリックが言うと€3,000払った。


帰りの列車では、左手のための協奏曲しか聴かなかった・・・
・・・朝の夢のイメージをそのままに・・・
彼女の朝食を作る音が、ラヴェルのメロディーと重なって起こされた。



亡き王女のためのパヴァーヌの旋律を聴いていると、サンドラの存在がどこかへ行ってしまってわからなくなった。



水の戯れで正気に戻った俺はさっきのことを思い出せなかった。



左手だけの協奏曲で起こされた俺は、ストリングスで何かを感じながら二度寝して、コンクールのビデオカメラっぽい映像で目覚めたけど、何でそうなのか?彼女の掛けてるCDは、SAMSON FRANCOISのラヴェルだったのに・・・
$心貧しきくそったれの足跡


サンドラのアパートに帰ると俺たちは儀式をした。
互いの性器に剃刀で傷を入れ、血が止まるまで何時間も舐め続けた・・・



・・・アストル・ピアソラを聴きながら・・・
・・奇妙なタンゴを・・何時間も・・何時間も・・・
$心貧しきくそったれの足跡


アントワープ・ベルヘム駅に到着して、タクシー乗り場に向かう途中サンドラが

「ねぇ、今ここでキスして、もう張り裂けそうなの」



そう言った瞬間、時間が止まった。
二人が世界中で一番長いキスをしている間世界は点になり、俺とサンドラが互いに愛し合うことだけが赦されていて、それ以外のものが動くことは無意味だった・・・小銭が落ちる音を合図に点は世界へと戻って行ってしまったが、悪い気はしなかった。

タクシーでノートルダム大聖堂に向かう車の中で、二人は出来るだけ唇を離すことを禁じ、車を降りると一つのオーラに導かれて大聖堂の扉を開けた。

蝋燭を灯し、キリストの降架の前に跪きサンドラと二人の未来の為に祈った。

肉体としての命を失ったイエスは安らかな顔で、彼の本来の姿に生まれ変わる為に眠っている。イエスの死は今日ここに来るまでの過去への決別を意味していた。

無言のまま大聖堂を出るとプロミスの香りを嗅ぐ
ベルヘム駅へ戻り、アムス行きのタリスで二人はStingのlittle wingを聴いた。


デルフトから列車に乗ってスヘルデ川を越えようとする時、iPodを持って来ているのを思い出した。



彼女に一つイヤフォンをはめてあげると、ラヴェルのクープランの墓をかけた。
モーリス・ラヴェルのレクイエムは、ネロへのオマージュと二人の魂を静める為に
それとアントワープと言う響きにあってる気がして、寄り添いながら聴いていた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A2%93

海のように大きいスヘルデ川を渡るとノートルダム大聖堂が見えてきた。
彼女は自分の髪の毛を、俺の薬指に器用に巻くと同じことを自分にもする。
おかげで大事な髪の毛が殉職したが、彼女は誇らしげにそれを光にかざした。
$心貧しきくそったれの足跡

マジャーニ家を出てタクシーを拾うと駅に向かった。

「今から、アントワープに行かないか?」

「明日、朝から仕事なの、今行ったら帰るのぎりぎりになっちゃう」

「頼む、二人でルーベンスの絵の前で誓いたいんだ、永遠の友情と愛情を」

「よろしくてよ」

気取って彼女は顔を近づけると、いきなり鼻を舐めて笑った。




キリストの降架の前で・・・サンドラと一緒に・・・
「彼女は徐々に部屋から出てくるようになったけど、昔のサンドラじゃなかった。みんなの人気者で美人で明るい」
「学校の友達も減って、そのうち誰もいなくなった、ハイスクールに通い始めるようになると彼女はロックを聴くようになって、アルバイトをしてたくさんのCDを買ってきたわ、それを聴きながらだんだん人とコミュニケーションが取れるようになったの、サンドラは美しかったからもてたわ、でもみんな長続きしたことはないの、男はどうしても彼女の陰の部分を引き出してしまって逃げ出してしまうの、尻尾を巻いて」

今聞いたことが信じられなかった・・・

「そして今のホテルに就職、あんたに引っかかったわけ」

彼女の厳しい眼差しは、俺とサンドラを楽園から追放した。

「だからお願い彼女を傷つけないで、もし別れることがあっても絶対に」
「サンドラはとても優しい娘なの、だからサンドラを失いたくないの」

キャンディーは目にいっぱい涙をためていた。

2Fのドアが閉まる音がするとキャンディーはキッチンでパンケーキを作り始めた。
サンドラのしっとりとした足音を聞くと振り向く

「2人でなのしてるの?私のAKIRAを取らないで」

髪にウルトラレッドのターバンを巻いた彼女は、エデンの目印に見えた・・・
キッチンに向かうと、サンドラのママ“キャンディー”がお茶の準備をしていた。

「アップルティーでよかったかしら?」

「はい、喜んで!」

思わず日本語で答えてしまった・・・

「あなた、日本人?」

「はい、そうです」

「そう」

彼女はそう言うとダイニングテーブルの椅子を勧めた。

「あなた育ちは悪そうだけど、愛嬌があるわね」

「あざーっす」

彼女は落ち着いた表情で話し始めた。

「私、彼女の本当の母親じゃないの」
・・・
「サンドラが7才の時に父親が突然いなくなって、母親は彼の仕打ちに耐えれなくてバスタブで手首を切って自殺、幼いサンドラを残して」
・・・・・・・・
「母親の死体を発見したのがサンドラだったの・・、彼女の誕生日の日に・・・、姉は陰と陽のバランスが取れない人で・・・彼女も辛かったと思うわ、あれだけ愛していた娘を最後は幼い私と勘違いしていた・・」
「サンドラはそれから私が引き取ったの、幼い彼女は始め母親を失ったショックから喋れなくなって、それが直ると部屋に引きこもるようになったの、自分だけの夢の世界の中に母親と父親と一緒に・・」
・・・・・・・・
サンドラは、ベッドで丸くなって寝てしまった。

俺はjanis ianのCDを掛けると、部屋を出てキッチンに向かった。。。

新教会を出てタクシーに乗って彼女の家に行った。
きれいに手入れされた庭と煉瓦作りの古い一軒家には、サンドラの過去が詰まっている

玄関の扉を開けると、穿きなれたブルージーンズに大きめのフィッシャーマンズセーターを着た、アッシュベージュの髪の色の女性が立っていた。
軽く自己紹介を済ませ、彼女の部屋に行くとそこは・・・

DAVID BOWIEとMarc bolanで彩られたトゥートーンカラーのグラムな空間で、彼女はAura noteのスウィッチに電源を入れるとT.REXのMetal Guruを掛けた。



T.REXの奇妙なコーラスの後、彼女は話し始めた。

「ここでずっと待っていたの、BOWIEは素敵な夢を見せてくれてMarc bolanは私のアイドルだったわ」

そう言ってサンドラはZIGGY STARDUSTにCDを変えた。



俺はヴォリウムを少しだけ上げて彼女を抱き寄せた。

BOWIEは歌っていた
僕たちには5年間しかない なんていう驚きだ
僕たちには5年間しかない 窓に焼きついてはなれない
僕たちには5年間しかない 僕の頭はいかれてる
僕たちには5年間しかない 残されたのはそれだけだ

俺たちはあまり服を脱がずに息を殺して、、、
夢中で彼女の中に入って、
気がつくと、、、
BOWIEがHang on to yourselfをサンドラの為に歌ってくれていた・・・