シャワーを浴びてバスルームから出ると、お気に入りのピンクのバスローブを羽織った。
頭にバスタオルを巻いて扉を開けると、彼はMichel Petrucciani の Brazilian likeを聴きながら食事の準備をしていた。



インドで買ったパジャマに着替えダイニングテーブルに座ると、魚の臭いのしたポトフとティジョン産マスタードを出して私の前に置いた。彼がマスタードをロールキャベツとじゃがいもの上に乗せると

「君に日本の“おでん”を作ったんだ」

と言ってじゃやがいもを食べさせてくれた。

・・・じゃがいもと魚のスープは凄くいい、マスタードが魚の香りを手なずけながら、じゃがいもから大地の恵みを引き出していた・・・
私は夢中になって“おでん”を食べた。
ふと、彼を見ると笑っているだけで自分のお皿には手をつけていない・・・

「どうしたの?私が食べているのを見て、おなかいっぱいになっちゃった?」

「あんまり食欲湧かなくて・・」

「じゃあ、それ食べていい?」

と聴くと彼は嬉しそうな顔をした。

本当は彼がどこかへ行ってしまいそうで怖かった、もう会えなくなるような・・・凄く怖かった・・・
部屋に戻るとAKIRAは完全に酔っ払っていた・・・
カルバドスの瓶を片手にベットで泣いている、彼の傷ついて行き場のない心はBill Evansが語っていた。
急に彼を傷つけてしまったのが、私のような気がして抱きしめる

「ねぇ、ロック聴こうよ、忘れたの?火傷するくらいの情熱を」

彼の真っ赤になった目がうなずくと、doorsのLight My Fireをかけた。



さぁ、ベイビー、僕のハートに火をつけてくれ
さぁ、ベイビー、僕のハートに火をつけてくれ
今夜は激しく燃え上がろう

ジム・モリソンが歌うと、彼はカルバドスを口移しで飲ましてきた。
悲しい味のお酒がAKIRAの気持ち?もう終わりなのわたしたち?

彼からカルバドスを奪い取ると、私から口移しで彼に飲ませた。
彼の瞳が一瞬だけ光を取り戻すともう一度お酒を口に含んだ、今度は私のために、

ねぇ、私がAKIRAのためにつけてあげる、あなたのためだけにずっと、ずっと
俺の愚かな心はさまよい続けた・・・・



信じていたものからの裏切りは十分すぎるほど受けてきが、それでも愛を信じ求めてしまう

俺に愛される資格はあるのだろうか?俺が幸せになることを過去は赦してくれるのか?

もう傷つきたくない・・・傷つけたくない・・・

・・・サンドラが愛しい・・・

・・・・・・・・・・

・・なるがままに・・・・・・
サンドラの笑い声とアイスグレーの空が俺の構図にはまる
チャイニーズのテイクアウトの焼きそばを食べながら、アムスの昼と彼女の笑顔が調和した。永遠を感じさせる瞬間は1度きり・・・、二度と戻ってこない時間を妬んだ。

チェックアウトを済ませ、サンドラのアパートに戻る

荷物をてきとうにしまい、ワイルドターキーをアメリカンコーヒーで割ったものを飲みながらStanley JordanとJimi Hendrixを交互に聴いて過ごした・・・



テクニックで楽しんで傷つかないことは出来る・・・

俺はもう傷つくほど若くない・・・魂の真実を知り心を破壊されるかもしれない・・・



しかし俺は間違いなく後者を選ぶだろう・・・、多分・・・、選択の時がきたら・・・

人は信じたいものを信じて生きる、重要なのは真実とか事実でもない。
多分それは希望だと思う・・・
午前11:12

朝の業務が一段落すると、サンドラは彼のことを思った。



AKIRAは今なにをしているのだろう?ランチに間に合うように行くよ、とは言ってたけど・・・あと15分で私のランチが始まるのにまだ来ない。彼はイライラさせたり、悲しい思いをさせたりするけど私は、そんなことしないでとか怒ってすねたり出来ない、彼に嫌われたくないから・・・、でもそんなことどうだっていいの、彼はそれ以上にドキドキさせてくれるし、私にはなくてはならない存在だから・・・朝食もおいしいし、彼は私のこと本当に愛してくれてるの?ただの気まぐれじゃなくて・・・

入り口のドアが開くとAKIRA入ってきた。
サンドラは時計を見るとさっき考えていたことを忘れてしまった、午前11:30世界中で一番おいしいランチが始まるから・・・
午前6:30

サンドラを起こさないようにそっとベットを出ると、市場に出かけた。

彼女のために、捥ぎたてのオレンジと生みたての卵、それと焼きたてのパンと大きくておいしいオランダのサラミを買った。部屋に帰りピカピカに磨いたケトルでお湯を沸かす。

・・・ふぁっふぉっふぁっふぉ・・・・

サンドラはまだ夢の中で、お湯が沸く音と鳥のさえずりを聞くと、Corcovadoを聴こえないくらいの大きさでかけた・・・、俺はサンドラを夢見て・・・


サンドラが帰ってくると重そうな紙袋をテーブルの上に置いた。
彼女はあなたがそろそろ恋しいと思ってと言うと、焼き鳥とか鯖の水煮、シーチキンと漢字ばかりの豚の缶詰を置いて誇らしげに手を差し伸べた、その手に敬意を払い口づけをすると得意げに笑った。
その気持ちに比べるとモンラッシェはいやらしい飲み物に思えて、冷凍庫からストリチナヤを出すと檸檬酎ハイらしきものを2杯作った。
一口飲んで彼女はシャワーを浴びに浴室へ、俺はアマポーラをかけて彼女を待つ



缶詰の焼き鳥をつまみながら、YouTubeでいろんなアマポーラを聴きながらじゃれあった、
ヌードルスとデボラの失われた時間を探しながら




サンドラの帰りが遅い・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

何かあったのだろうか・・・

・・・

もしかして事故とか・・・

・・ん~・・・

ホテルからここまで18分~遅くても23分・・・、そう考えても1時間以上遅い・・

俺はイパネマの娘を待ち続けた・・・


彼女は2年先輩の“アリス”に教えてもらったアジアンショップに向かった。
タイ料理が好きな彼女はよくそこで買い物をするらしく、アジアンフードを缶詰で極めていた。

「あの日本人の彼と付き合ってるの?やめたほうがいいわよ、ああいうタイプは~嵌るとどん底、別に暴力とか博打とかで暴れないんだけど、なんか優しくてわがままで、そのくせプライドが高くて甘え上手で、なんか憎めない可哀想な男・・・でも、そういう破滅的な男って魅力的よね、私がいなくちゃこの人ダメになるって思わせる・・・」

アリスはそう言うと、そ・お・い・え・ば・・・日本製の缶詰あったわよ、と教えてくれたけど本気でよ・け・い・な、お世話!最近いつも彼の厭味ばかり・・・

KANJIの書いてある缶詰を一種類づつ買うと17個にもなった、レモン3個を一緒にレジに出すとマレーシアあたりのおやぢがにやけてイラッ!€78払うともっといやらしい顔で見られた。

三月の雨をiPodで聴きながらAKIRAの喜ぶ顔を想ってます音譜
$心貧しきくそったれの足跡


俺はLuis Mariano の MEXICOを聴きながら彼女のアパートを掃除してカサブランカを飾った。



ブラッセルで手に入れたDRC.MONTRACHET’88を準備してサンドラの帰りを待っていた。