「よそはよそ、うちはうち。」
私たちが小さい頃、よく親御さんに言われた言葉ではないでしょうか。
「みんながゲーム買ってもらっている。自分も欲しい。」
と言っても「みんなって誰?何人?そもそもよそが買ってもらったからと言って
うちが買う理由にならない。」とズバッと跳ね除けられた経験は、一度はあるのではないでしょうか。
しかし今になって、この言葉はメンタルヘルスケアにおいてとても大事な言葉だと感じています。
私たちの多くは、「人と自分を比較する」ことを
余儀無くされています。
意識していることもありますし、無意識に比べてしまってもいます。
フロイト、ユングと並ぶ心理学三大巨頭の一人アドラーは、「欲望は他人の欲望」と言います。
例えば、いい車に乗りたい、と思うのは、
自分の欲望ではなく、「あの車に乗っていたら、すごいと思われる。」と他者を基準として考えている欲望だということです。
自分が本当に欲しくてたまらないものならいいのですが、
「これを持っていたらすごいと思われる。」や
「これだったら恥ずかしくない。」と
他者の目線を気にしている場合は心当たりがあるのではないでしょうか。
ある程度は仕方のないことです。
他者の目を機にすることで頑張れることもあるでしょう。
また他人と自分を比較することが強いモチベーションになることもあります。
ポジティブに振れるならば、他者の目を気にすることは悪いことではありません。
ただ行き過ぎると、自分の考えで物事を判断することができなくなり、やがて他者の目ばかりを気にし、ついには、外に出ることができなくなり、
ひきこもるということにもなります。
こんなときに、
「よそはよそ、うちはうち」という言葉が
効いてくるのです。
いくら他人が高価なものを持っていたとしても
それはその人の価値観で得たものです。
自分が欲しいと思う理由はありません。
「よそはよそ、うちはうち」という考え方は、
「人には色々な考え方があっていい。自分はこう思う。あの人はこう思う。それでいい。」
というものが背景にあります。
投げやりな言葉なのではなく、他者のことも、また自分のことも尊重した言葉なのです。
もしこんな風に思えたら、
きっとメンタル面で辛くなることが激減すると思います。
不登校やひきこもりも、他者の目を気にしてしまうことから起こるとも考えられます。
「別に自分は自分でいいじゃん」と思えたら。
きっと子どもたちも楽になります。
「人は人でいいし、自分も自分でいいや。」
そんな風に思えたら、
私たちは、もう少し楽に生きていけるのではないでしょうか。
「よそはよそ、うちはうち」
これからのメンタルヘルスケアの大事な合言葉にしたいものです。