人類初の有人火星飛行の打ち上げ直前に、三人の宇宙飛行士が拉致される。三人は人里知れぬ場所で偽の火星着陸を「演じる」のを強要される…
ベトナム戦争に敗れ、モノづくり産業でも日本など外国に押され、国民の政府への不信がマックスになっていた70年代終盤に作られた驚異の映画。普通ならSF映画と言いたいところですが、この映画は一切人間が宇宙に行っていないので、むしろポリティカル・フィクションと言うべきでしょうか。失敗を隠すために、火星着陸をデッチ上げて国民を欺こうとするアメリカ政府およびNASAの陰謀と、それに巻き込まれた宇宙飛行士、そして謎を追うジャーナリストの三視点で展開するドラマは息つく暇も与えません。こういう映画が作られる辺り、よほど政府が信頼されていなかったようです。
謎に迫るジャーナリストは車のブレーキが利かなくなったり、突然麻薬容疑で逮捕されたり、観光地で狙撃されたりします。コワいですねぇ。フィクションなんだけど、ありそうな出来事に見えるのが本作の見事なところです。記者を演じるのはエリオット・グールド。「ロング・グッドバイ」でフィリップ・マーロウを演じた彼が、似たようなノリで演じておりとても楽しい。宇宙飛行士には「あの」O・J・シンプソンもおり、色々と複雑な気持ちになります(笑)。農薬散布機のオヤジとして登場するテリー・サバラスが映画の印象をすべてさらっていくのもたまりません。とってもコワい顔のカレン・ブラックは記者仲間としてゲスト出演。愛車は赤のフェアレディZ。Z最高です。警察のバイクとしてチラッとカワサキが写っていたりもします。
「アメリカの陰謀と立ち向かう人々」というアクションが無くても十分面白い脚本ですが、ブレーキを壊された車の暴走場面、終盤には複葉機とOH-6ヘリコプター2機のドッグファイトと見せ場がしっかり用意されています。ラストに展開する空中戦は映画館で見たら相当盛り上がるであろう迫力です。機動性抜群の複葉機とヘリが上に下に凄まじい機動を見せます。
6年前くらいにテレ東で見て以来、ブルーレイで二度目の鑑賞でした。豪華キャストの吹き替え版は雰囲気抜群、ただ結構な場面が字幕に戻ります。当時のテレビ局が尺に合わせる為にカットした部分ですが、中だるみしそうな場面、正直いらない場面を見事に選んでカットしており、吹き替え版だけで見るとオリジナル版以上のスピーディーなスリルを味わえること間違いなしです(ブルーレイだと無理ですが)。


