諸君は老衰と聞いてどういうイメージを浮かべるだろうか?

何となく楽なイメージや人として理想な最期なのでは?といったイメージなのではないだろうか。

当時の僕のクラスも彼女以外はそんな感じだった。

 

高校3年生の夏。

保健の授業の一環か何かで自分の理想の死に方について考えるみたいな時間があった。

多分延命治療の問題とかそういった内容に付随した講義だったと記憶してる。

黒板の前にたつ教師が生徒たちに向かって、配布のプリントに記入後、発表するよう数人を名指しすると、大抵の人たちはみんな老衰が良いと答えた。

たまにサッカー部あたりの男子が「安楽死がいいっす!」と大声で発して身内だけのウケをとっていた。

僕はプリントに崩御と書いていた。

 

時間が進み、隣の人と交換して意見交換をする時間となる。

僕の隣の女の子は岡田さん(仮名)という常に成績トップの女の子だった。

もちろん劣等生の僕は落ちた消しゴムを拾うくらいの会話しかしたことなく、適当にやりすごすことしか考えていなかった。

 

僕のプリントを受け取った岡田さんは呆れたように言う。

「意味わかってるの?」

バカにするな!同じ偏差値だ!入学したときは。

「もちろん、愛子様と結婚する予定だよ!」

「それ降嫁するんじゃない?」

「。。。。え?」

どうして中高一貫はこうも差がつくのだろうか。

もちろん、言われっぱなし悔しいので適当なことを言う。

「ナポレオンか袁世凱を目指すから問題ない。皇帝をなのればええやろ!」

「何を考えて生きてるの?」

可哀そうなものを見る目つきになった。

でも、その後に「まぁ、そういう人がいたら面白いかもね」といった笑顔を僕は未だに覚えている。

こういう表情もするのだと思った。

 

次に彼女のプリントを受け取る。

自殺と書いてあった。

今ほど耐性がないので僕はかなりきょどる。

「いや、別に願望があるわけじゃないよ?私病まないし。でもさ、もう全部飽きたらいいかなぁみたいな。

ってか老衰が絶対嫌なんだよね。自分の死に方は自分で決めたいし」

その後、彼女は僕の反応を見てなんか後で先生に色々聞かれるとめんどくさいかなぁとひらがなで「ろうすい」と書いて提出した。

僕は何も言えなかった。

 

次の彼女との会話はセンター試験自己採点会というお通夜みたいな教室の中。

地獄の空気の中でとりあえずどうでもよさそうなのが僕だったのだろう。

点数交換しよと言われたので採点表を渡す。

「世界史だけ負けた。むかつく。」

これが最後の会話だった。

彼女はうちのクラスから唯一、一橋大学へと合格した。

その後、大学1年の寮のクリパの説明会のときに彼女の訃報をクラスグループで聞いた。

交通事故だったらしい。

しかし、クラスの女の子が代表でお通夜、お葬式の参加等の連絡をすると拒否されたということで様々な憶測が飛び交った。

 

結局真偽は未だにわからない。

ライングループにはただ彼女のアカウントだけが残り続けている。

多分これからもその答えは一生わからないだろう。

でも、もし僕が崩御できずに野たれ死んだとき、やっぱり無理だったじゃん、私の完全勝利だねなんて風に笑ってくれたらいいなぁなんて思いながら今日も生きていく。