第七章:心の深淵

 

一、覚醒

 

最後の力を振り絞って石段を登り切った。

境内は落ち葉が積もり、草が生い茂っている。

長い間、誰も訪れていない場所。

だが、神聖な雰囲気が漂っていた。

境内をゆっくりと歩く。

社殿の陰で何かが、動いた。

人影?

「誰だ!」

警戒しながら近づいた。

倒れている人がいた。

痩せ細り、衰弱している。

胸がわずかに上下している。

「まさか……」

駆け寄った。

その顔を見て、息を呑んだ。

「相川教授ですか?」

体を揺すった。

「教授! 大丈夫ですか!」

教授がうっすらと目を開けた。

「あなたは……」

「天城真です。沙織さんに依頼されて探していました」

教授の目に涙が浮かぶ。

「よく来てくれた」

水筒を取り出し、教授に飲ませた。

ゆっくりと水が喉を通っていく。

「ありがとう」

「ここで、どれくらい?」

「分からない。一週間か、それ以上か」

「食料は三日前に尽きた。水だけは雨水を集めて」

「よく生き延びました」

「ここは聖域だから。でも一歩でも鳥居の外に出れば、奴らが襲ってくる」

教授の目に恐怖の色が浮かぶ。

「何度も試したが、その度に追い返された。もう諦めるしかないと思っていた」

涙が頬を伝う。

「君もお多福に会ったのか?」

「はい」

教授は複雑な表情を浮かべた。

「あの妖怪に全てを暴かれ、自分の醜さを見せられた」

「俺も同じです」

二人ともしばらく黙っていた。

「立てますか?」

手を差し伸べた。

教授の足元がふらついている。

体を支えながら一緒に歩く。

「拝殿へ行きましょう」

「ここに来た理由、答えがあるはずです」

二人は扉の前に立った。

古い木の扉。

ひび割れ、色褪せている。

だが、まだしっかりしている。

扉に手をかける。

ギィィィ……

重い音を立てて扉が開く。

内部は薄暗い。

わずかな光が、隙間から差し込んでいる。

二人は中へ入った。

中央に拝殿がある。

手を合わせてしばらく祈る。

すると光が漏れ始めた。

金色の神々しい光。

光が強くなり、二人を包み込む。

温かく優しい光。

その中で歌が聞こえてきた。
 

 

二、神は詩う

 

歌が心に流れ込んでくる。

この大和の国を 夢の花開く国にせんと 来たりし吾れ〜♪

美しい調べが体中に染み渡っていく。

涙があふれてきた。

なぜ泣いているのか分からない。

そういえば、ホツマツタヱにも記されていた。

大和の国は神々の歌によって創られてきた。

天地創造も国造りも全て歌とともにあった。

『まずはじめに調べありき』なのだ。


調べに合わせて、自然と二人とも歌っていた。

そして懺悔した。

「俺は醜かった……」

「自分がもらうことばかり考えていた」

「与えることなど考えたこともなかった」

「心からの感謝などしていなかった」

ただ涙が流れていく。心が浄化されていく。

大の大人が子供のように泣いた。

だが、恥ずかしくはなかった。

むしろ、清々しかった。

偽りの自分はもう要らない。

歌うことで心の中の仮面が割れていく。

成功者を演じる仮面。

自分を良く見せようとする仮面。

仮面が砕け散る音が心の中で響いた。

幼子のようなありのままの自分。


「これが本当の美しさなのか」

中身がない形式だけの美とは全く違う。

歌がゆっくりと薄れていく。

だが、その余韻は残っている。

心の中に深く刻まれている。

光が消え夜の森に戻った。

だが以前とは違って感じられる。

星の光の美しさ。

木々のざわめきの心地よさ。

風の音のリズム。

世界は神の音楽によってできている。

「神は詩う…」

その言葉が心に染み込んでいく。

 

三、対話

 

「創造神が私たち人間を愛してくださっているのを感じました」

「天城さん、私は間違った思いで生きてきた」

教授の声が震えた。

「三十年以上、研究してきたが動機が不純だった。認められたかっただけ」

教授は顔を覆った。

「真実のためだと自分に嘘をついていた」

教授の肩に手を置いた。

「でも、気づけたじゃないですか。それが大切なんです」

教授はこちらを見た。

「俺も同じです。醜かった。利益ばかり求めていた」

「世のため人のために生きたことなど無かった」

「でも今、気づくことができた。ここから変わるしかない」

教授の目に光が戻ってきた。

「変われるのか」

「ええ」

力を込めて言った。

「今から変わりましょう」

教授に手を差し伸べる。

「君がいなければ、私はここで朽ちていた」

「教授がいなければ、俺はここまで来れなかった。お互い様です」

「ありがとう」

神の詩を聴き、共に歌って涙を流し、語り合うことで二人は変わり始めていた。
 

 

四、新しい決意

 

天御祖神神社を出ると、森の中に風が吹いた。

冷たい風。だが清々しい。

「お多福はどうなったんでしょう」

「分からないが、周囲にはいないようだ」

教授は考え込んだ。

「おそらく私たちが目覚めたからだ」

「俺たち二人が変わっただけで、お多福は消えるんですか?」

「いや」

教授は首を振った。

「人々にも気づいてもらわなければならない」

「だからこそ、真実を伝える必要がある」

教授はこちらを見つめた。

「感謝し、与え、精進する心が美しいことを」

教授の目に強い光があった。

「それが私たちの使命だ」

そうだ。これが本当の目的だったのかもしれない。

成功のためでも、名声のためでもない。

真実を伝えるため。

人々を目覚めさせるため。

「でも信じてもらえるでしょうか」

「信じない人の方が多いだろう」

教授は正直に答えた。

「嘲笑されるかもしれない。学会からも社会からも、否定されるかもしれない」

「それでも伝えなければならない」

教授は力強く言った。その言葉に勇気が湧いてきた。

「分かりました。一緒に伝えましょう」

教授は微笑んだ。

二人は山を降りる方向へ歩き始めた。

夜の森は暗い。

だが、もう恐れはない。

まだ自分の中に醜い部分は残っているだろう。

でも気づくことができた。

そして変わろうとしている。

少しずつでも歩き続ければ良い。

月が雲の間から顔を出した。

森の中が明るくなる。

道が見える。

「行こう」

二人は歩き続けた。

新しい自分になるために。

新しい世界を作るために。

真実を伝えるために。

進むべき道は見えている。

星々が道を照らしている。

まるで導かれているように。

二人は山を降りていった。
 

 

第八章:反撃

 

一、再会

 

山を降り始めて、どれくらい経っただろうか。

教授の体力は限界に近い。

何度も休憩を取りながら、ゆっくりと進む。

「もう少しです」

「ああ……」

教授の返事は弱々しい。

だが、足は止めない。

森の切れ目が見えた。

登山口だ。

「着きました!」

視界が一気に開ける。

教授を木陰に座らせ、駐車場へ走った。

エンジンをかけ、教授の元へ。

助手席に教授を乗せる。

「さあ、町へ」

アクセルを踏んで山道を降りていく。

舗装された道路に出ると、ようやく安堵した。

「助かった……本当に」

教授が呟いた。

「まだ終わっていませんよ」

前を向いたまま答えた。

「これからです」

「そうだな」

教授は窓の外を見た。

「戦いはこれからだ」

車は町へ向かって走り続けた。

 

二、病院

 

町に着くと、すぐに病院へ向かった。

教授を医師たちに引き渡す。

「脱水症状と栄養失調。すぐに点滴を」

教授は処置室へ運ばれていった。


携帯電話には着信が何十件も入っていた。

沙織からだった。

すぐに電話をかけた。

「天城さん!父は……父は無事ですか?」

「ええ。今、病院で治療を受けています」

「本当ですか……良かった……」

沙織の声が涙声になった。

病院名を伝えて電話を切った。

 

三、沙織との再会

 

沙織が病院に駆けつけた。

「父は?」

「処置室です。しばらくすれば、一般病棟に移されるはずです」

「そうですか……」

沙織は安堵の表情を浮かべた。

そして深く頭を下げた。

「本当にありがとうございました」

沙織の目から涙が溢れた。

「諦めかけていました」

「俺は何もしていませんよ」

首を振った。

「教授が諦めなかったから」

その時、看護師が現れた。

「相川誠さんのご家族の方ですか?」

「はい」

「病室へどうぞ」

沙織は看護師について行った。

天城は一人、待合室に残された。

窓の外を見ると、朝の光がまぶしい。

 

四、お多福の出現

 

病院の外に出て、新鮮な空気を吸う。

駐車場を歩いていると視線を感じた。

目の前の空間が歪み、お多福が現れた。

だが以前と違う。

顔が前より小さくなっている。

笑顔が歪んでいる。

声も弱々しい。

「お前たちが変わったせいで、私の力が少し減っている」

こちらを睨んでくるが、その目に力はない。

「だが、まだ終わりではない」

「お前たち二人が変わっても、人々は変わっていない」

「天照大神への信仰は続いている」

お多福の笑顔が少し戻った。

「だから、私は消えない」

「そうかもしれない」

一歩、前に出た。

「でも、俺たちは真実を伝える」

お多福の顔が歪んだ。

「誰が信じようか。天御祖神の存在を」

その言葉に心が揺れた。

確かに、信じてもらえないかもしれない。

嘲笑されるかもしれない。

「だがそれでも伝える」

決意を込めて言った。

「たとえ歴史を捻じ曲げようとも、真実は絶対に死なない」

お多福は、しばらくこちらを見つめていた。

「では、やってみなさい」

お多福の声が冷たい。

「あなたたちが失敗するのを見届けてあげます」

「人々が再び欲望に溺れたら私は戻ってきます」

お多福は消えた。

駐車場に自分だけが残された。

だが、心は穏やかだった。

脅しはもう怖くない。
 

 

五、教授との対話

 

病室に戻ると、教授は点滴を受けていた。

沙織がベッドの横に座っている。

教授がこちらを見た。

「天城さん、少し話せますか?」

目配せすると、沙織は席を外した。

「お多福に会いましたよ」

教授の目が鋭くなった。

「奴は何と?」

「俺たちが失敗するのを見届ける、と」

教授は鼻で笑った。

「失敗? 試してみることに失敗はない」

「伝えるか、伝えないかだ」

教授が、こちらを見つめた。

「天城さん、記者会見をしよう」

「記者会見……」

教授は力強く頷いた。

「全てを公表する」

「ホツマツタヱの真実」

「天御祖神の存在」

「そして、お多福のこと」

「でも、信じてもらえるでしょうか」

「分からない」

教授は正直に答えた。

「おそらく、ほとんどの人は信じない。学会もマスコミも冷笑するだろう」

「それでも?」

「それでも、だ」

教授の目に強い光があった。

「種を蒔くのだ。いつか必ず、芽が出る」

その言葉に勇気が湧いてきた。

「分かりました。一緒にやりましょう」

二人は握手を交わした。
 

 

六、準備

 

教授は三日間入院した。

その間、二人で記者会見の準備を進めた。

沙織も心配していた。

「本当に大丈夫ですか?父がまた危険な目に」

「もう逃げない。これが私の使命だから」

沙織は涙を堪えて頷いた。

「分かりました。でも、無理はしないでください」

「ああ」


三日後に教授は退院した。

体力はある程度回復している。

二人は記者会見の会場へ向かった。

借りた会議室に記者たちが集まっている。

大手メディアは来ていない。

地方紙とフリーランスの記者だけ。

それでも良い。

一人でも聞いてくれれば。

「始めましょう」

会見場の扉を開けた。
 

 

第九章:帰還

 

一、記者会見

 

会議室に入ると、記者たちの視線が集まった。

カメラを構えている者もいる。

前方に長机と椅子が二つ。

教授と並んで座った。

「それでは始めさせていただきます」

教授が口を開いた。

「私は東都大学の相川誠です」

「隣にいるのは歴史調査員の天城真さんです」

記者たちがメモを取り始める。

「本日は重大な発表があり、お集まりいただきました」

教授は一枚の資料を取り出した。

「これはホツマツタヱという古文書に関する研究結果です」

興味を示している者もいれば、懐疑的な表情の者もいる。

「ホツマツタヱは、『古事記』『日本書紀』よりも古い時代の歴史を記録した文献です」

教授は淡々と説明を続けた。

「そこには、現在の歴史書とは異なる内容が記されています」

「例えば、天照大神は女神ではなく男神でした」

ざわめきが起こった。

記者の一人が手を挙げた。

「それは、学会で認められているのですか?」

「いいえ」

教授は正直に答えた。

「ではなぜ今日、発表を?」

「それが本題です」

教授は深呼吸した。

「ホツマツタヱが偽書とされたのは、意図的な隠蔽工作があったからです」

「誰が何のために?」

別の記者が尋ねた。

教授はこちらを見た。

交代する合図だ。

「私が説明します」

天城はマイクを引き寄せた。

「ホツマツタヱには、天御祖神という創造神が登場します」

「この神は、『古事記』『日本書紀』には出てきません」

「なぜなら、歴史から消されたからです」

記者たちの表情が険しくなってきた。

「消された?誰に?」

「お多福という存在に」

「おたふくって、あの福を招くおかめ面の?」

記者たちが顔を見合わせる。

「はい。お多福は妖怪です」

重い沈黙。

「妖怪?本気で言っているのですか?」

「本気です」

まっすぐに答えた。

「お多福は長きに渡って歴史を改ざんしてきました」

記者たちの冷笑。

「お多福の共犯者も突き止めました」

「誰なんですか?」


「それは……私です」

震える声で言った。

「そしておそらく皆さんも。お多福は人々の現世利益を求める心のエネルギーを糧にしてきました」

「私たち全員の醜い欲望がお多福に力を与えてきたのです」


「全ての人間が共犯者だって?」

記者たちの表情が完全に変わった。

興味から軽蔑へ。

一人の記者が立ち上がった。

「これは学術的な発表ではなく、オカルト話ですか?」

「真実です」

教授が割って入った。

「私たちは実際にお多福と遭遇しました」

「証拠は?」

「目撃証言だけです」

「ですが、祭神改変などの証拠は資料に記載しています」

メモを取るのをやめている記者もいる。

「かつて迷信とされたものが、今は科学とされることもある」

「天動説が常識だった時代、地動説のガリレオは迫害された。迷信と科学の境界線は時代によって変わる」

ほとんどの者が会場を後にした。

最後まで残ったのは三人だけ。

地方紙の記者とフリーランスの記者二人。

三人の記者を前に、一息もつかず話し続けた。

こちらの熱意に動かされたのか、記者たちは静かにペンを動かし始めた。

* * * * * *

「本日はありがとうございました」

教授が深く頭を下げた。

彼らもやがて席を立った。

会議室には二人だけが残された。

「失敗でしたね」

教授は首を振った。

「いや、伝えた。それで良い」

 

 

二、報道

 

翌日。いくつかのメディアが記者会見のことを報じた。

だが、その扱いは小さかった。

地方紙の片隅。

ネットニュースの末尾。

しかも、内容は冷たいものだった。

『古代史研究者、妖怪陰謀論を主張』

『ホツマツタヱ研究者、学会から孤立か』

『オカルト研究と学術の混同に警鐘』

コメント欄は、さらに辛辣だった。

「頭がおかしい」

「学者の質が落ちた」

「妄想」

「カルト」

一つ一つ、読んでいく。

胸が痛い。

だが、予想していたことだ。

教授に電話をかけた。

「教授、記事を見ましたか?」

教授の声は、落ち着いていた。

「ああ。気にするな」

「でも……」

教授の声が優しくなった。

「信じるかどうかは、相手が決めることだ」

その言葉に少し救われた。

「ありがとうございます」

「こちらこそ。君のおかげで、ここまで来ることができた」

電話を切って窓の外を見る。

「これで良かったのか?」

自問するが答えは出ない。

ただ、やるべきことをやった。

それだけは確かだ。

 

三、学会の反応

 

数日後。教授から連絡があった。

「学会から、除名処分の通告が来た」

教授の声は、意外にも明るかった。

「理由は学問的信頼性を損なう発言、だそうだ」

「そんな……」

「気にするな」

教授は笑った。

「もともと、学会など信用していなかった」

「真実を追求する場ではなく、権威を守る場だからな」

その強さに驚いた。

「教授は後悔していませんか?」

「後悔はない。初めて自分に正直になれた。本当の意味で研究者になれた気がする」

その言葉が胸に響いた。

「天城さんはどうだ?」

言葉を探した。

「俺も後悔はありません」

「今までお金や名声ばかり求めていました」

「でも、今は違います。真実を伝えられた。それだけで満足です」

「なら良かった」

教授は満足そうに答えた。

電話を切った後、しばらく考えた。

心は以前よりも、ずっと軽い。

偽りの自分を捨てたからだろうか。

「これが本当の自分か。悪くはないな」

 

四、小さな反応

 

一週間が経って、記者会見の騒ぎも収まっていた。

もう誰も話題にしていない。

忘れ去られたのだろう。

だが、メールが届いた。

差出人は知らない名前。

件名は、『記者会見について』

『天城様

記者会見の動画を見ました。

最初は正直に言って信じられませんでした。

妖怪? そんなものが存在するわけがない、と。

でも、何度も見返すうちに、気づいたことがあります。

私も神社に行くとき、いつも自分のことばかり願っていました。

合格祈願、恋愛成就、商売繁盛。

全て私利私欲の願いを叶えるため。

自分の心の醜さに初めて気づきました。

お多福が存在するかは私には分かりません。

でも、あなたのメッセージは私の心に届きました。

ありがとうございました。

これからは、感謝の心を持って生きていきます。』


メールを何度も読み返した。

たった一人だが届いた。

胸が熱くなった。

たった一人でも種は芽を出した。

いつか大きな木になる。

そして、返信を書いた。

『メッセージ、ありがとうございました。

あなたのような方がいることが、私たちの希望です。

一人一人が変われば、世界は変わります。

少しずつで良いのです。

一緒に歩んでいきましょう。』


送信ボタンを押した。

窓の外を見ると、夕日が沈みかけていた。

空がオレンジ色に染まっている。

世界は美しい。

その美しさに、今まで気づいていなかった。

「ありがとう」と、小さく呟いた。

誰に向けてでもない。全てに向けて。

涙が一筋、流れた。

自分の心が変わった。

それが何よりの報酬だった。
 

 

終章:新たな夜明け

 

一、数ヶ月後

 

冬が過ぎ、春が来た。

あの記者会見から半年が経っていた。

天城の生活は以前とは違うものになっていた。
  
朝、目覚めると、まず生かされていることを神に感謝する。

朝食を作る。

シンプルな食事だが、一つ一つに感謝しながら食べる。

米を作ってくれた人。

野菜を育ててくれた人。

全ての人に感謝。

仕事に対する姿勢も変わった。

認められようとすることもなくなった。

相手の幸せに貢献できるように、目の前のことに誠実に向き合う。


以前は外の景色を見ても何も感じなかった。

仕事のこと、お金のこと、それしか頭になかった。

だが、今は違う。

世界の美しさが見える。
 

 

二、小さな広がり


記者会見の動画の再生回数が少しずつ増えている。

コメント欄には相変わらず批判もある。

だが、こんなコメントも見られるようになった。

『考えさせられました』

『得ようとするから苦しくなるんですね。自分の祈りを見直します』

『感謝、大切ですね』

『神社に行く意味、初めて理解できた気がします』


教授は大学を辞めた後、自宅で研究を続けている。

「天城さん、良いニュースがある」

ある日、教授から電話があった。

「何ですか?」

「小さな出版社だが、ホツマツタヱの研究書を出してくれるそうだ」

「それは良かったですね」

「まだ、終わっていない。種をまき続けよう」

池上からも連絡があった。

「天城さん、私も山を降りることにした。もう、隠れていても仕方ない」

池上の声は明るかった。

「東京に戻って、また修復の仕事を始める。ホツマツタヱの研究も続ける。君たちが勇気をくれた」

変化が少しずつ広がっている。

静かに、だが確実に。
 

 

三、天御祖神神社へ

 

天城は再び山へ向かった。

山道を登るが以前と違って心は軽い。

恐れも不安もない。

苔むした古い鳥居をくぐる。

その瞬間、神聖な空気に変わった。

石段を一段一段、登る。

頂上に社殿がある。

拝殿の前で立ち止まる。

賽銭を入れ、手を合わせる。

「天御祖神様、ありがとうございます」

「半年前の出来事のおかげで、私は変わることができました」

「まだ完璧ではありません。時々、醜い心が顔を出します」

「でも、自分で気づけるようになりました」

優しい春の風が吹いた。

「人々も少しずつ変わり始めています。ほんの少しですが種は芽を出しています」

「今はあなたの夢を叶えることが、私の夢になりました」

「この大和の国を夢の花開く国にします。必ず桃源郷にしてみせます。どうか見守っていてください」


風がまた吹いた。

まるで答えてくれたように。

手を合わせたまましばらく佇んでいた。

温かい静寂。

私はもう孤独ではない。

八百万の神々の頂点に位置する存在。

大和の国の最高神、天御祖神が近くにいてくださる。


「ありがとうございました」

深々と頭を下げて社殿を後にした。
 

 

四、共犯者による手記

 

鳥居をくぐり、山を降り始めた。

山を降りながら、天城は考えていた。

失ったもの。得たもの。

失ったものは多い。

成功、名声、仕事、友人、社会的地位。

全て失った。

だが得たものは、もっと大きい。

本当の自分。

感謝する心。

与える心。

精進する心。

そして心の平安。

それが何よりも大きい。


麓に着いた。

車のエンジンをかける前にふと思った。

この経験を手記にすれば、今より多くの人に届くかもしれない。

手記の構想をノートに書き始めた。

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かつての私

 

『以前の私は、刹那的な快楽と利益だけを求めていた。もっとお金が欲しい、もっと食べたい、もっと認められたい……もっと!もっと!もっと!

自分のことばかり優先して、世のため人のために生きてこなかった。

人目がある時は善人面をして良い人を演じる。でもそれは本当の私ではない。醜い自分を隠し、仮面を被って別の人間になっていただけだ。

自分一人になると、私の心の中にはノイズが鳴り響いていた。

心の中で何を考えても相手に分かるわけではない。嘘をついてもバレなければいい。思想・信条の自由があるから、どんなことを考えても構わない。そんな風に思っていた。

でも神様は、私の思いも行動も全てお見通しだった。
 

 

妖怪という存在

 

妖怪なんて漫画やアニメの話だと思っていた。でも、妖怪は実在した。

人間は誰もが心に醜さ(妖怪性)を抱えている。

自分の中の楽して儲けたいという考えが、人を騙してでも信心のエネルギーを集めたいというお多福を呼び込んでいた。


妖怪性が強くなると死後、人間の世界には還れない。なぜなら、あの世は思いだけの世界だからだ。思っていることがそのまま現実となる。

心を美しくすることの重要性はホツマツタヱでも説かれている。

マフツの鏡は真実の姿を映す。以前の私であれば醜い心を反映した妖怪が映し出されたであろう。


外見だけの美は、神には通用しない。

 

 

お多福へ

 

私たちが変わらない限り、姿を変えてお多福は存在し続ける。

私はお多福に語りかけたい。

あなたは歴史を改ざんし、都合の良い部分だけを人々に見せたかったのだろう。しかし、何も隠す必要はないのだ。

良い点も、悪い点も全部さらけ出せばいい。恥ずかしいことではない。

自分の歴史も、人類の歴史も明るみにすることで後世への教訓になる。

 

たとえ失敗しても反省し、新たな人生を歩む姿は美しい。良く見せようとしてうわべだけ整える方が醜い。

この国には八百万の神々がおられ、その中には尊敬すべき方もいる。しかし、その神々も天御祖神から生み出された子孫である。

私たちの魂の親は、お一方しかおられない。
 

 

お多福の呪いを解くために

 

池上さんは言っていた。「感謝や信仰告白でお多福の呪いが弱くなる」と。

では、具体的にどうすれば良いのか。

迷った時には、お多福の立場で考えてみよう。

「もし自分がお多福だとしたら、どんなことをされたら嫌だと思うか?」

まずは霊的パワーの兵糧攻め。お多福は人々の欲望をエネルギー源としている。ならば、執着を捨ててエネルギーの供給を断つことだ。

次に、ホツマツタヱを伝えることによって天御祖神の栄光を弘め、天照大神が男神であることを明らかにする。

さらに、神の詩を歌い、同志と語ることで心の醜さを無くし、感謝を深めていく。
 

 

悪の凡庸さという罠

 

「自分は何も悪いことはしていない」と罪の意識を感じない人が大多数だと思う。私もそうだった。

しかし、この世で犯罪に問われなくても、神の法に背くことはある。

各個人に悪意がなくても全体では悪になる場合があるのだ。

何世紀にも渡る隠蔽工作は、お多福一人ででできることではない。

私たちも前世のどこかで正しい歴史をもみ消す側に回っていたであろう。

たとえ他人を苦しめようと思っていなかったとしても、間接的に悪事に加担してきた。

悪を助長させ、見て見ぬふりをしてきた責任は私たち全員にある。
 

 

美しき世界へ

 

自分のために祈るのはもう疲れた。
 

全てはすでに与えられている。

これ以上、もらおうとする必要はない。ただ与えるだけでよいのだ。

得ようとするからこそ苦しいのだ。

まずは自分一人が変われば、波紋は広がっていく。

あなたが変われば、あなたの周りが変わる。

あなたの周りが変われば、世界が変わる。

一緒に歩んでいこう。新しい世界を作っていこう。

美しい心を持った人々の世界を。

選択は私たちに委ねられている。』
 

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ペンを止めた。

この内容が伝われば、そこから次の誰かに伝わる。

光のバトンは繋がっていく。

「次は誰がバトンを受け取るのだろうか」


車を発進させる。

窓を開けると、春の風が入ってくる。

希望の風。

未来は明るい。

人間は変われるのだから。

車は春の道を走っていく。

新しい世界へ。

新しい夜明けへ。

この物語は続いていく。

あなたと共に。

(完)

 

 

 

 

 

 

 

序章:死者たちの警告

 

その記事を目にしたのは、三日前のことだ。

『ホツマツタヱ研究者、相次ぐ不審死』

地方紙の片隅に小さく載った記事。
普通なら見過ごしてしまうような扱い。

天城真は記事を何度も読み返した。

過去半年で研究者三名が相次いで死亡。
死因はいずれも急性心筋梗塞。

三人とも四十代から五十代の働き盛りで、生前に心疾患を指摘されたことはない。

最後の一文が引っかかった。

関係者によれば、遺体発見時に三人とも恐怖におののいた表情のまま亡くなっていた。

まるで、この世のものではない何かを見たかのようだったという。

記事を切り抜き、デスクの引き出しにしまった。

天城の仕事は歴史調査だ。失われた古文書の追跡、歴史的事件の真相究明。

天城家は陰陽師の家系だと祖父から聞かされてきた。
そのせいか、古い文書や遺物に触れると奇妙な感覚に襲われることがある。
まるで時間を遡るように、過去の光景が脳裏に浮かぶのだ。

今までの経験から言えることが一つある。

「偶然」が三度続くことはない。

必ず何かの理由がある。

だが、今は不審死を調べている場合ではない。

今日から新たな仕事が始まる。

久しぶりに神社に参拝しよう。

立ち上がり、コートを羽織った。

* * * * * *

天城は神社の境内に立っていた。

古い石段を登り、拝殿の前で足を止めた。背筋を伸ばし、深呼吸する。

賽銭箱に百円玉を投げ入れ、二礼二拍手一礼。

「どうか調査が成功して、収入が増えますように」

心の中で欲望が渦巻く。

『成功すれば認められる』
『名声が得られる』
『もっと大きな仕事が来る』
『そうすれば収入が増える』

ふと、違和感が胸をよぎった。

「これでいいのだろうか?」

だがすぐに、その思いを振り払った。

「いいに決まっている。成功したいと願って何が悪い」

踵を返し、石段を降りる。

神社を後にする背中に、秋風が吹き抜けた。


事務所に戻ると、留守番電話のランプが赤く点滅していた。

メッセージを再生する。

「天城真様でいらっしゃいますか。私、相川沙織と申します。父のことで、ご相談したいことがございまして……」

女性の声だった。若く、だが切羽詰まった響きがある。

折り返しの電話をすると、相川はすぐに出た。

「お忙しいところ、ありがとうございます」

「どのようなご用件でしょうか?」

「父が...消えたんです」

「消えた?」

「はい。二週間前から行方不明で」

声が詰まる。

「警察には届け出ました。でも、事件性なしと判断されて...」

「お父様は、どのようなお仕事を?」

「大学で古代史の研究をしていました。相川誠と申します」

その名前には聞き覚えがあった。

「相川教授の論文を拝見したことがあります」

「お会いして、詳しくお話しさせていただけないでしょうか」

翌日の午後、沙織が事務所を訪れてきた。

二十代後半だろうか。地味な服装だが、凛とした佇まい。

目元には疲労の色が濃い。父親の失踪が相当な重圧になっているのだろう。

応接用の椅子に座ると、沙織は鞄から一冊のノートを取り出した。

「これが父の最後の研究ノートです。」

表紙には『ホツマツタヱ研究記録』と書かれている。

「ホツマツタヱ...」

記紀(古事記・日本書紀)の原書ともいわれる日本最古の歴史書。

「父は三十年以上、この文献を研究してきました」

ノートには、丁寧な文字で研究記録が記されている。

ページをめくると、後半になるにつれて筆圧が強くなっていく。
相川教授の興奮が文字から伝わってくるようだ。

『重大な発見。これまでの定説を覆す証拠を掴んだ。

ホツマツタヱは偽書扱いされただけではない。
何世紀にもわたって抹殺されてきたのだ。

真実を隠蔽するために。』

「お父様は何か重要なことを発見されたんですね」

「ええ。それを学会で発表すると言っていた矢先に...」

沙織は言葉を詰まらせた。

最後のページには走り書きのメモ。

『私は気づいてしまった。隠蔽工作の正体に。

だが、これ以上書けば...』

そこで文章が途切れている。

大きく線が引かれ、その下に何かが書かれていた痕跡がある。
しかし、丁寧に消しゴムで消されている。

天城はノートを光に透かしてみた。
だが、完全に消されており、筆圧の跡すら残っていない。

「何を消したんだ?」

「天城さん」

沙織の声に、天城ははっと顔を上げた。

「もう一つ、お見せしたいものがあります」

沙織はUSBメモリを取り出した。

中身を見るとファイルが一つ。

パスワードで保護されている。

「少し時間をください。解析には半日から一日ほどかかるかもしれません」

天城はノートパソコンを閉じた。

「依頼、お受けします」

沙織の顔に安堵の色が浮かんだ。

「ただし、この調査は簡単には終わらないかもしれません。お父様が追っていたのは、単なる学術的な真実ではない。何か、もっと深い...巨大な陰謀のようなものが」

窓の外で雷鳴が轟いた。

* * * * * *

沙織が帰った後、教授のノートを読み始めた。

『ホツマツタヱ:ヲシテ文字という古代文字で記され、五七調の美しい韻文で綴られている。内容は天地創造からの歴史。

私は確信している。これこそが、真実を伝える書物だと。

記紀には出てこないのに、ホツマツタヱに登場する神を祀る神社が存在している。

これはホツマツタヱが後世に作られた偽書ではなく、記紀が編纂される以前の伝承を記録した可能性を示唆している。

古事記や日本書紀は多数の写本が現存しているが、ホツマツタヱの写本は異常に少ない。

これは、あまりにも不自然だ。

答えは一つしか考えられない。

意図的に破棄・焚書されたのだ。』

天城はページをめくった。

『隠蔽工作は過去のものではない。現代でも続いている。

研究者が不審な事故に遭ったり、研究を突然中断したり、行方不明になっている。

そして私も...いや、まだ書けない。書けば、この記録すら消されるだろう。』


煙草に火をつけた。煙を吐き出しながら、窓の外を見る。

雨が降り続いている。

「相川教授...あなたは何と戦っていたんですか」

パソコンを開き、パスワード解析ツールを起動した。


午前二時。

パスワード解析ツールが通知音を発した。

「解析完了...」

眠気を振り払い、画面を見つめた。

パスワードは、「AME-NO-MIOYA-GAMI」

ファイルを開くと、画面に短い文章が表示される。

『もし私が消えたら、これを読む者に伝える。

彼女に気をつけろ。笑顔の裏に隠された闇に気づけ。

彼女は人間ではない。私はその正体に気づいてしまった。

天御祖神(あめのみおやがみ)神社を探せ。

山の奥深く、隠された神社。

そこにすべての答えがある。』


「教授は何かを突き止めたのか。そして、それを記録した直後に...」

窓の外を見ると雨は上がっている。

だが、月は雲に隠れ、闇だけが広がっていた。

 

 

第一章:相川教授の足跡

 

一、東都大学図書館

 

翌朝。

天城は相川教授が最後に訪れた場所——東都大学付属図書館の前に立っていた。

キャンパスの中心に位置する近代的な建物は、ガラス張りの外壁に朝日を映していた。

平日の午前中だというのに、館内は多くの利用者で賑わっていた。

受付で閲覧許可を申請し、カウンター越しに司書へ声をかける。

「ホツマツタヱ関連の資料を探しているのですが」

検索端末を操作する司書の表情が、わずかに曇る。

「少々お待ちください」

画面を確認しながら、言葉を選ぶように続けた。

「現代の研究書や活字本でしたら、何冊かあります。ただ……」

「ホツマツタヱそのものの資料は多くありません。古事記や日本書紀に比べると……」

そのとき、背後から声がかかった。

「ホツマツタヱについてお調べですか?」

振り返ると、三十代半ばほどの女性司書が立っていた。

丸い輪郭の顔に、柔らかな笑み。物腰も丁寧だ。  
だが、その視線は妙に落ち着きすぎていた。

「ええ」

「でしたら、こちらの資料が参考になるかもしれません」

女性は数冊分の本のリストを持ってきた。

天城はリストを見て、眉をひそめた。

『古事記の現代語訳』
『日本書紀入門 』
『記紀神話の研究』

古事記・日本書紀の本ばかり。

「あの...ホツマツタヱの研究書をお願いしたのですが」

「申し訳ございません」

女性は困ったような表情を浮かべた。

「ホツマツタヱの研究書は、ほとんどございません。記紀の本から始められた方が、古代史の理解が深まると思います」

表向きは親切だ。
だが、その対応は話題を意図的に逸らしているようにも思えた。

「それでも、ホツマツタヱについて調べたいのです」

女性は一瞬だけ考える素振りを見せ、やがて頷いた。

「でしたら、こちらへどうぞ。一般公開されていない資料になりますが……神社関係の古い記録の中に、間接的な情報が残っているかもしれません」

案内されたのは、図書館奥に設けられた特別閲覧室だった。

空気が違う。埃と紙の匂いが混じり合い、時間そのものが滞留しているように感じられる。

「私は天城ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」

「私は田中さやかと申します」

教授の研究ノートに記されていた名前と一致する。

『東都大学図書館 司書・田中(丸顔、笑顔、過度に親切)』

「一つ伺いたいのですが」

スマートフォンを取り出し、教授の写真を見せる。

「この方、ご存知ありませんか?」

田中は写真を見て、すぐに頷いた。

「ええ、相川先生ですね。よくいらっしゃっていました」

「先生、とても熱心に調べていらっしゃいました。最後にいらしたのは...二週間ほど前でしょうか」

「その時、先生は何を?」

「神社の古い記録を集中的に閲覧されていました」

田中は書架の一角を指さした。

いくつかの記録を田中の案内で閲覧した。

ホツマツタヱを含む歴史書の改ざん・焚書が行われたという伝承に関する内容だった。

古文書に触れた瞬間、頭に映像が流れ込んできた。

炎の中に古い写本が次々と火にくべられる。

こめかみを押さえた。

頭痛が走る。

「天城さん?」

田中の声で我に返った。

「すみません。少しめまいが」

「大丈夫ですか?」

田中は心配そうな表情を浮かべた。

だがどこか冷静だった。

まるで天城の反応を観察しているような目。

「他にも同じような記録はありますか?」

「ええ、いくつか」

田中は別の文書を取り出した。

どれも似たような内容。

『異端の書、社家の判断により破棄』  
『由緒不明の古文書を整理、不要なるものを処分』  

別の資料には祭神が変えられた記録が残っていた。

「同様の記録が各地の神社でいくつも見つかります」

「焚書だけじゃない。ご祭神も変えられているのか?」

天城は自分の考えに、わずかな寒気を覚えた。

「相川先生も、同じことに気づかれたのでしょうか?」

田中は間を置いてから頷いた。

「ええ……先生は、かなり興奮されていました。組織的な隠蔽工作の痕跡だと」

「ただ、先生はその後...少し、疲れた様子でした」

「何かあったのですか?」

「詳しくは分かりませんが、『真実を追うのは危険なことかもしれない』と仰っていました」

「ありがとうございました。何かあれば、また伺います」

「どうぞ、いつでも」

田中は、にこやかに笑った。

その笑顔が、まるで仮面のように不自然に見えた。

背筋に冷たいものを感じながら、図書館を後にした。

 

 

二、喫茶店での考察

 

図書館を出ると、天城は近くの喫茶店に入った。落ち着いて情報を整理するためだ。

窓際の席に座り、コーヒーを注文する。頭の中で、さきほど見た記録を思い出していた。

焚書の痕跡。祭神の改変。

全てが教授の推測を裏付けている。

運ばれてきたコーヒーに口をつけ、教授のノートを開いた。

『ホツマツタヱの内容』という見出し。

『遥か昔、天地がまだ分かれていない頃、天御祖神だけが存在して混沌が広がっていた。

天御祖神が大きく息を吐くと混沌が渦を巻き、中心に天の御柱が立ち上がった。

陽と陰が分かれ、軽いものは天となり、重いものは地となった。

陽から天空と太陽が生まれ、陰から地球と月が生まれた。

こうして宇宙をはじめとする万物が創造された。』

ページをめくる。

『重要なのは創造神・天御祖神が記紀には登場しない点だ。

なぜ、存在しないことになっているのか?

それは天御祖神への信仰が復活すれば、現在の神道の体系が揺らぐからだろう。

誰かが、それを恐れて歴史から消した。』


コーヒーを飲み干す。苦味が舌に残った。

時計を見ると、午後一時を回っている。

まだ、時間はある。

次のページには『瀬織津姫(せおりつひめ)』の見出しがあった。

イサナギとイサナミの長男・アマテル(天照大神)には正妻がいた。

その名は瀬織津姫。

彼女はアマテルの正后として重要な役割を担った。

瀬織津姫が実在したと考えられる根拠がある。

・瀬織津姫を祀っていた痕跡を残す神社が全国にある。現在は別の神名が掲げられている 

・神道の重要な祝詞である大祓詞(おおはらえのことば)に瀬織津姫が登場する

瀬織津姫はアマテルの妻であるため、アマテルは当然ながら男神である。

後世の誰かが、天照大神を女神に変えたのだろう。  

瀬織津姫の歴史が残っていると、天照大神が男神であったことが世に知られてしまう。だから、彼女の存在が邪魔になって歴史から消した。

誰が?何のために?

その答えが少しずつ見えてきた。』

教授の推理は大胆だが、論理的でもあった。


別ページには『記紀とホツマツタヱの比較研究』の見出し。

『長年、記紀を研究してきたが、ホツマツタヱを読んで全てが腑に落ちた。

記紀は不完全だ。

いや、不完全という言葉すら生ぬるい。
意図的に骨抜きにされた歴史だ。

なぜ天地創造の部分が記紀には書かれていないのか?

記紀編纂の真の目的は歴史の記録ではなく、都合の良い歴史の捏造。

天照大神を女神にすれば政治的な都合に合わせられる。

ホツマツタヱが美しいフルカラーの世界であるのに対し、記紀はそこから色を抜き取った白黒の世界のように見える。

記紀はホツマツタヱから創造神を抜き取り、政治的な都合で改変した劣化版ではないか。偽書とされるべきはホツマツタヱではなく、記紀の方だ』

天城は息を呑んだ。

教授の筆致は確信に満ちていた。

迷いもためらいもない。


「次の手がかりは……」

教授のノートを確認すると、一つの名前に目が止まった。

『池上和彦——古文書修復師』

古文書修復師の名簿を調べた結果、池上の居場所が分かった。

山梨県の山間部。

十年前から隠遁しているという。

「この人なら、何か知っているかもしれない」

会計を済ませ、喫茶店を出た。

 

 

第二章:隠遁者の真実

 

一、山への道

 

レンタカーを借りて都心を離れた。

高速道路を降りて一般道へ。やがて、舗装された道から山道へと入っていく。

カーナビは途中で道を見失った。

圏外を示す表示だけが、無言のまま点灯している。

古文書修復師の名簿に記されていた住所を頼りに、さらに奥へ進んだ。

人里離れた深い森。携帯電話の電波は断続的に途切れ、やがて完全に消えた。

「こんな場所に人が住んでいるのか......」

疑念が頭をよぎる。だが、引き返すという選択肢はなかった。

相川教授が追っていた真実。その断片に触れるためには、池上和彦に会うしかない。

山道を二時間ほど走ったところで、ようやく一軒の古い家屋が姿を現した。

深い森に包まれ、まるで外界から切り離されたような佇まいだった。

車を降りた瞬間、異様な静けさに包まれる。

鳥の鳴き声すら聞こえない。

玄関へ近づき、呼び鈴を押す。

しばらく待つと、扉が開いた。

「よく、ここまで来られましたね」

現れたのは、六十代半ばと思しき男性。

痩せてやつれてはいるが、その目だけは異様なほど鋭い。

「池上和彦さんですか?」

「ええ」

男は一瞬だけ天城を見据え、静かに頷いた。

「あなたが天城真さんですね」

「ご存知なんですか?」

「ええ。来るだろうと思っていました」

池上は小さく笑った。

「相川教授の件でしょう」

 

 

二、隠遁の理由

 

居間に通されると、天城は言葉を失った。

壁一面が資料で埋め尽くされている。

古文書の写し。手書きのノート。年代別に整理された図表。
そのすべてが、ホツマツタヱに関するものだった。

「十年です」

池上は湯呑みに茶を注ぎながら言った。

「ここに籠もって、研究を続けてきました。誰にも邪魔されず、誰にも知られずに」

「なぜ、そこまでして隠れる必要があったのですか」

池上は、しばらく沈黙した。

そして、まるで重い蓋を開けるように、ゆっくりと口を開いた。

「私は彼女に警告されたのです」

「彼女?」

池上は視線を窓の外へ向けた。

「十年前、私は東京で古文書修復師として働いていました。全国の寺社を巡り、古い文書を修復する仕事です」

「仕事柄、様々な古文書を目にする機会がありました。その中にホツマツタヱ関連の文書も多数あった」

「調べていくうちに、気づいてしまったのです。焚書の痕跡に」

池上の手がわずかに震えた。

「記録を見ていくと、明らかに何かが消されていることが分かる。組織的に抹殺されてきた証拠を私は見つけてしまった」

「それを発表しようとされたのですか?」

「いえ」

池上は首を振った。

「私は修復師です。学者ではない。自分の研究ノートに記録を残そうとしただけです」

池上は立ち上がり、書棚から古いノートを取り出した。

それから言葉を止め、深く息を吐いた。

「ある日...調べていくうちに、奇妙なことに気づいたんです」

「昭和三十年代にホツマツタヱを研究していた研究者の日誌に、こう書かれていたんです」

池上が指し示した箇所を読む。

『本日、女性が訪ねてきた。丸い顔で、常に微笑んでいる。一見すると親切そうな女性だ。

だが目が恐ろしかった。底なしの暗闇を覗いているようだった。

彼女は言った。「この研究は、おやめになった方がよろしいですよ」

理由を聞くと、微笑んだまま答えた。

「真実は時として人を不幸にしますから」

私は断った。すると彼女は——』


ここから先は乱れた文字で書かれており、判読できない。

「この研究者はどうなったんですか?」

「急性心筋梗塞で亡くなりました。直近の健康診断では何の問題もなかったそうです」

「私が調べた限り、同じ特徴の女性が複数の研究者の前に現れている」

「同一人物ですか?」

「そうとしか考えられない」

池上は天城を見つめた。

「その彼女が私の前にも現れたんです」
 

 

三、彼女の警告

 

「その女性は何と?」

「研究をおやめになった方がよろしいですよと」

池上は、当時の声色をなぞるように語った

「理由を聞くと、『真実を公表すると危険なことになりますから』と。」

「脅迫ですか」

「いえ、言葉は丁寧でした」

「私には妻と娘がいました。二人を危険に晒すわけにはいかなかった」

「それで東京を離れたのですか?」

「ええ。妻と娘には田舎で静かに暮らしたいと言って、ここに移り住みました。妻は三年前に病気で亡くなり、娘は今、東京で暮らしています」

「だが、研究を諦めたわけではありません。ここで誰にも見つからないように、続けてきたのです」
 

 

四、真実の証拠

 

池上は立ち上がり、書棚から分厚いファイルを取り出した。

「これが十年間の研究成果です」

ファイルを受け取る。

ずっしりとした重み。

「相川教授のことは、インターネットで知りました」

池上は座り直した。

「また一人、真実を追い求めた研究者が消された」

「教授は池上さんの研究を知っていたのでしょうか?」

「いえ、私は誰とも連絡を取っていませんでしたから」

「真実を知ることは危険です。あなたも同じ目に遭うかもしれない」

池上は真剣な表情で言った。

「それでも誰かが真実を明らかにしなければならない」

はっきりと答えた。

池上は、しばらくこちらを見つめていた。

そして小さく笑った。

「相川教授も同じことを言ったでしょうね」
 

 

五、男神の根拠

 

「アマテルは統治者でありながら、創造神・天御祖神への信仰を持っていた」

池上の語り口は、淡々としていた。

「だが記紀に描かれる天照大神は主宰神として君臨している」

「単に性別が変えられたのではなく、別の存在が天照大神になりすましているのですか?」

「はい。乗っ取りですね。神の名を奪い、歴史を上書きした」

天城の声が震えた。

「では神社で天照大神に祈っても、別の存在に祈りを捧げることになるのでは?」

「ええ。伊勢神宮で祈っても本物の天照大神には届きませんよ」

「そんな……今までずっと偽者に手を合わせていたのか」

「私たちは騙され続けてきたのです」

池上の声には、怒りと悲しみが滲んでいた。


「教授のノートに天照大神は男神という記載がありました。証拠はあるんですか?」

「いくらでもあります。1つ目:ホツマツタヱでは女性の斎名(いみな)は三音、男性の斎名は四音という名前の付け方のルールが語られています。アマテルの斎名であるワカヒトは四音なので男性です」

天城はメモを取る。

「2つ目:祇園祭の山鉾に祀られている天照大神像は顎に髭をたくわえた男神です。女神であればそんな像にしないはずです」

「3つ目:金剛証寺に安置されている雨宝童子立像は男子の姿をしています。これは天照大神が16歳の時の姿を後世、空海が彫ったと伝えられています」

「これらはほんの一部です。天照大神が男神であることを示唆する根拠は他にも多数あります」
 

 

六、日本神道の問題点


「天照大神以外の神でも、なりすましが行われている可能性はありますか?」

「研究したところ、多くの背乗りが行われているようです。日本神道の多くは神のお面をかぶった妖怪集団になってしまった」

天城は拳を握りしめた。

「記紀とホツマツタヱにおいて、同じ名前の神でも中身が違う場合も多い。天照大神、天御中主神、国常立神など、ホツマツタヱの神々を冒涜する行為だ」

「身分を偽って人々の祈りのパワーを横領する。狡猾なシステムですね」

「なぜ、誰も止められなかったのでしょうか」

「日本神道には、何が正しいかを言葉で示す教義がない。だから人々は自分で判断するための基準を持っていない」

「祈りの内容や、祈りの対象が正しいのか。それを確かめる物差しが用意されていないのです」

「一方で、ホツマツタヱには『トの教え』と呼ばれる生き方の指針がある」

「人はどう在るべきか。世界はどうやって成り立っているのか。何を良しとし、何を戒めるのか。その基準が示されている」

「人間観・世界観の完成度が記紀より遥かに高い」

「様々な点を考慮しても、記紀はホツマツタヱを土台にして創作されたものと考える方が自然だ。そもそも江戸時代に古代文字を考え出してまで歴史書を書く意味もない」

 

 

七、天御祖神神社の手がかり


「池上さん、天御祖神神社をご存知ですか?」

池上は深いため息をついた。

「それは伝説の神社です。実在するのか架空の神社なのかは分からない」

池上は書棚から古い地図を取り出した。

「この地図は江戸時代のものです。ある古書店で見つけました」

地図を広げると、小さな印が付いている。

「だが現代の地図には、その場所に神社の記載はありません」

池上は地図のコピーを差し出した。

「もし実際に行かれるのなら、これを」

「ありがとうございます」

「ただし、その場所は、人里離れた山奥です。道もない。そして...」

池上は言葉を選んだ。

「彼女の力が及ばない場所だとも言われています」

「及ばない?」

「ええ。天御祖神の聖域だから妖怪は近づけない、と」

「池上さんは彼女を妖怪だと思われているのですか?」

「はい。あの目を見たとき、人間ではないと確信しました」

池上は周囲に聞こえないように、妖怪の名を天城に耳打ちした。

「それが妖怪なのですか?福を招く縁起ものだとばかり思っていました」

「妖怪はごまかしたり、人を欺く傾向がありますからね」

 

八、別れ

 

「天城さん。あなたは何のために、この調査をしているのですか?」

その問いが胸に突き刺さった。

「それは...」

言葉に詰まる。

教授を救うため?

真実を明らかにするため?

いや、違う。

本当は——

成功したい。
認められたい。
名声が欲しい。

心の中で欲望が渦巻いている。

「まだ分かりません」

池上は優しく笑った。

「その答えが見つかったとき、あなたは真実に辿り着けるでしょう」

* * * * * *

池上の家を後にして山道を下っていると、携帯電話の電波が戻ってきた。

着信の通知。

相川沙織からだった。

車を路肩に停め、折り返す。

「天城さん、何か分かりましたか?」

今までの調査を簡単に説明した。

焚書の記録。
祭神改変の証拠。
池上からの資料。

「父は無事でしょうか?」

答えに窮した。

「分かりません。でも必ず、真実を明らかにします」

電話を切り、車を発進させた。
 

 

第三章:境界線

 

一、妨害

 

天城は事務所で遅くまで作業をしていた。

池上の資料を整理し、教授のノートと照合する。

午前一時を過ぎた頃、ふと物音がした。

「誰かいるのか?」

玄関のドアノブに手をかけようとした瞬間。

ガチャリ。

外から鍵が開く音。

天城は後ずさった。

ドアがゆっくりと開いた。

暗闇の中に複数の人影。

「誰だ!」

人影は答えない。

ただ、静かに事務所の中へ入ってくる。

護身用の警棒を掴む。

「それ以上近づくな!」

人影の一つが月明かりに照らされた。

見覚えのある顔。

「田中……さん?」

だが、その顔は仮面のようだった。

人影たちは無言のままデスクへ近づいた。

教授のノートや池上の資料を掴もうとする。

「やめろ!」

警棒を振り上げた。

その瞬間に人影が一斉に消えた。

まるで霧が晴れるように。

デスクの上が荒らされている。

引き出しが開けられ、書類が散乱している。

だが、教授のノートと池上の資料は無事だった。

「何者なんだ……」

膝から力が抜けて床に座り込む。

恐怖が全身を支配していた。

 

二、決意

 

警察に通報したが大きな被害がないため、事件としては扱われなかった。

「空き巣未遂ですね。鍵を変えた方がいいでしょう」

警官はそう言って帰っていった。

これは、ただの調査ではない。

何かが真実を隠そうとしている。

積極的に妨害しようとしている。

教授も同じ目に遭ったのだろう。

池上の地図によれば、天御祖神神社までは車を降りてから徒歩で丸一日かかる。

険しい山道。道なき道。

「それでも行くしかない」

リュックを背負って、事務所の扉を開けた。

心の奥底では自分の本当の動機が分かっていなかった。

成功と名声を求める欲望。

それが、どれほど自分を支配しているのか。

それに気づくのは、まだ先のことだった。


車に乗り込み、山へ向かって走り出した。

もう引き返すことはできない。

アクセルを踏み込んだ。

山へ。

真実へ。

そして、自分自身の心の闇へ。
 

 

第四章:怪しげな影

 

一、山道

 

池上から受け取った地図を頼りに車を走らせる。

舗装道路は砂利道に変わり、やがて轍だけが残る獣道のようになった。

ここから先は車では進めない。

リュックを背負い、登山靴の紐を締め直す。

「日没までに、どこまで進めるか…」

落ち葉を踏む音だけが、静寂を破る。

地図とコンパスを頼りに、方角を確認しながら進む。

ふと、足を止めた。

前方に人影が見えた。

こんな山奥に他の登山者?

人影は木の幹に寄りかかっている。

女性だ。

「大丈夫ですか?」と声をかけた。

三十代半ば。
丸い顔。
笑顔。

体が硬直する。

「あら、天城さん。こんなところでお会いするなんて」

田中さやかだった。
 

 

二、正体の看破

 

「偶然ですね。私も登山が趣味なんです」

田中は、にこやかに答えた。

偶然?ありえない。

こんな山奥で知り合いに遭遇する確率など、限りなくゼロに近い。

池上の言葉を思い出した。

「丸い顔で笑顔の親切そうな女性」

教授のメッセージ。

「彼女に気をつけろ」

池上を脅した人物。

教授が最後に会った女性。

昭和三十年代に研究者の前に現れた女性。

「全部、同一人物だ」

田中は笑顔のまま見つめている。

天城の声が震えた。

「何十年も同じ姿でいるなんて人間ならありえない」

田中はゆっくりと立ち上がった。

その声が変わった。もっと低く、もっと重く。

「池上さんから聞いたのですね」

田中の顔が微妙に変化し始めた。

輪郭がさらに丸みを帯びていく。

「お前は妖怪、お多福だな!」

「あはは、あははは!」

笑い声が森中に響き渡る。

田中の姿が急速に変化し始めた。

顔がどんどん膨らんでいく。

目が異様に見開かれる。
 

 

三、妖怪の告白

 

「あなたを傷つけるつもりはありませんよ」

お多福は優しく言ったが、その姿自体が恐怖だった。

天城は声を絞り出した。

「何のために歴史を隠蔽してきたんだ」

「神に対して隠蔽だなんて失礼ではないですか。私は人々を導いてきたのです」

「神だと?妖怪にしか見えない」

「ホツマツタヱは人々を惑わせるものです。天照大神は女神。それが真実」

天城は拳を握りしめた。

「それはお前が作り出した偽りの歴史だ」

「嘘も百回言えば真実になるというではないですか。私は人間が信じたいものを提供してきただけ」

お多福の顔がさらに広がった。

「企業もゼロからつくるより買収した方が早いでしょう。私が時代遅れの神を引き取ってリニューアルしてあげたのです」

「話をすり替えるな。ゼロから創造できないから乗っ取ったのだろう。お前がやっているのは信仰心を悪用した詐欺だ」

「研究者を手にかけたのはお前だな。天御祖神や正しい神々の歴史を闇に葬ってきたのも」

お多福は不気味に微笑む。

「天御祖神なんて誰も関心がない。人間にとって必要がないということだ」

天城の怒りが頂点に達した。

「お前だけは許さない」
 

 

四、哲学の対立

 

「誰もが仮面をつけて生きている。本心を隠し、偽りの顔を見せる」

反論しようとしたがお多福は続けた。

「外見を美しくし、態度を丁寧にし、言葉を優しくする。そうすれば、心も美しいと人間は錯覚する」

「外見や所作が美しければ、心など何とでも見せられる」

天城は歯を食いしばった。

「お前は間違っている」

お多福は驚いたように目を見開いた。

「どこが間違っているのですか?」

「心の美しさが何よりも大切だ」

お多福が近づいてくる。

「では、あなたの心は美しいのですか?あなたは何のために調査しているのですか?」

「それは……」

「成功したいから?」

「認められたいから?」

「名声が欲しいから?」

お多福の言葉が突き刺さる。

答えられなかった。

「図星でしょう。あなたは自分の利益のためだけに生きてきた」

「他者の幸せはどうでもよかった」

「ち、違う……」

天城の声は弱々しかった。
 

 

五、眷属の襲撃

 

「これが最後の警告です」

お多福の声が真剣になった。

「引き返しなさい。これ以上進めば破滅が待っている」

「……断る」

天城は後ずさりながら言った。

「俺は天御祖神神社へ行く」

お多福は溜息をついた。

「相川教授も同じことを言いました」

「教授をどうした!」

「さあ、私の眷属たちが妨害していますからね」

「卑怯な!」

「私は真実を守っているだけです」

「嘘で塗り固められた真実だろう!」

天城の言葉に、お多福の笑顔が一瞬だけ消えた。

「では、仕方ありません」

お多福が手を叩いた瞬間、周囲の木々の陰から無数の影が現れた。

手足が異様に長い者。

顔が歪んでいる者。

体が半透明の者。

妖怪だ。

十体、いや二十体以上。

逃げ場がない。

その時、胸元が熱くなった。

池上から渡されたお守りが光を放ち始める。

眷属たちが、一斉に悲鳴を上げた。

「なんだと!」

お多福の顔が驚愕に染まる。

光がさらに強くなり、眷属たちが逃げ出した。

「池上め!余計なことを」

光に包まれた天城は走り出した。

妖怪たちの包囲網を突破する。

「待ちなさい!」

お多福の声が背後から響く。

だが、天城は振り返らなかった。

ただ前へ。森の奥へ、奥へと走り続けた。
 

 

六、夜の森

 

どれくらい走っただろうか。

心臓が激しく鼓動している。

周囲を見回す。

妖怪たちの姿はもう見えない。

「何とか逃げ切ったか」

森の中は真っ暗だ。

今夜はここで野営するしかない。

リュックを降ろし、テントを張り始める。

その時、再び声が聞こえた。

「天城さん」

お多福の声。

だが、姿は見えない。

「あなたは欲望に満ち、醜い心を持っている」

耳を塞ぎたくなったが、声は頭の中に響く。

「真実を知れば、あなたは絶望するでしょう」

「真実を知られて困るのはお前だろう。悪事は全てお前の仕業だと分かっているぞ」

「まるで私が犯人であるかのような言い方ですね」

「何? 真犯人は別にいるということか?」

「とても頼もしい協力者がいますよ」

お多福の声が愉快そうに響く。

「誰だ!その真犯人は」

お多福は意地悪く笑った。

「あなたもいずれ気づくでしょう。身近なところにいると」

「身近?」

「もう帰りなさい。あなたが戦って勝てる相手ではありません」

そして静寂が戻った。

うずくまったまま動けなかった。

身近な存在……まさか沙織さん? 池上さん?

いや、考えたくない。

でも、お多福の言葉が頭から離れなかった。

夜が深くなっていく。

森は闇に包まれていく。

そして、天城の心も不安に飲み込まれそうだった。
 

 

第五章:天御祖神神社への道

 

一、幻影

 

目を開けると空が白み始めていた。

ほとんど眠れなかった。

テントから這い出ると、冷たい朝の空気が肺を満たした。

簡単な朝食を取り、テントを畳んだ。

森の中を進み、岩を乗り越え、倒木をくぐる。

二時間ほど歩いただろうか。

突然、視界が開けた。

眼下には深い谷が広がっている。

地図を確認しようとした時、声が聞こえた。

「天城さん」

振り向くと沙織が立っていた。

「沙織さん? なぜここに……」

「天城さん、お願いがあります」

「お願い?」

「もう、やめてください」

沙織の目に涙が浮かんでいた。

「父はもう助かりません。あなたまで危険な目に遭わないでください」

天城は首を振った。

「いや、教授はまだ生きている!」

沙織の姿が揺らいだ。

幻影だ。これは沙織ではない。

「お多福……」

沙織の姿が歪んで消えた。

額の汗を拭った。

「惑わされるな」

妖怪は心を操る力を持っている。

幻を見せ人を迷わせる。

お守りを握りしめた。

「大丈夫だ。俺は騙されない」

崖沿いに歩き始めた。

 

二、歪んだ成功

 

崖を越える道が見つかり、ようやく谷底に辿り着いた。

小さな川が流れている。

水筒に水を補給した。

冷たい清水が喉を潤す。

その時、また声が聞こえた。

「天城真さんですね」

振り向くとスーツ姿の男性が立っていた。

「私は出版社の編集長です」

男性は名刺を差し出した。

「あなたの調査について聞きました。ホツマツタヱの真実を追っているとか。ぜひ、本にしませんか?」

男性は熱心に語った。

「必ずベストセラーになります。あなたは一躍有名になり、印税だけで数千万円になるでしょう」

心が揺れた。

ベストセラーの成功者。

数千万円。

それは天城が望んでいたものだ。

だが男性の影が、おかしいことに気づいた。

太陽の位置から考えて、影の方向が逆だ。

これも幻影。

そして男性の姿が消えた。

危なかった。

もう少しで騙されるところだった。

成功、名声、金。

心の奥底では、幻影が魅力的だったことを認めざるを得なかった。

お多福は自分の心の弱さを突いてくる。
 

 

三、霊感の導き

 

川沿いを進む。

この川の上流に神社があるはずだが、道は険しくなる一方だった。

霧が出始めて視界が悪くなっていく。

数メートル先も見えない。

「このまま進んで、大丈夫だろうか」

不安が胸を満たす。

道に迷えば遭難する。


その時、脳裏に映像が浮かんだ。

「こっちだ……」

地図もコンパスも見ない。

ただ、導かれるままに直感に従って霧の中を進んだ。

霧の中に何かが見えた。

古い鳥居だ。

苔がびっしりと生えている。

鳥居の扁額(へんがく)には文字が刻まれていた。

かすれて、ほとんど読めないが天城には分かった。

「天御祖神神社……」

ついに辿り着いた。
 

 

第六章:闇との対峙

 

一、襲来

 

安心した瞬間、空気が変わった。

笑い声が聞こえ、霧の中からお多福が現れた。

今までと違う。

より巨大に、より禍々しく。

お多福の声が森全体に響く。

「鳥居は絶対にくぐらせない」

お多福の目が黒く輝いた。

底なし沼のような深い闇が広がり、周囲の空間が歪み始めた。
 

 

二、過去の映像

 

景色が変わった。

見覚えがある神社の境内。

高校生の頃の自分。

賽銭を投げ入れ、手を合わせている。

「大学に合格させてください」

映像の中の自分が祈っている。

だが、そこに感謝はない。

映像が切り替わり、大学生の頃。

また神社。

「就職できますように」

次の映像は社会人。

「昇進させてください」

「お金持ちになれますように」

また次の映像。

「恋人ができますように」

映像が次々と流れていく。

全て自分のための祈り。

「やめろ……」

だが映像は止まらない。

「この仕事で認められますように」

映像が止まった。

「見たか?これがお前だ」

息ができない。

「全て取引」

お多福はゆっくりと語る。

「何かを与えてもらうために賽銭を投げる。神を敬う気持ちもない」

「ただのギブ・アンド・テイク。都合の良い時だけ手を合わせ、願いを叶える道具として神を使ってきた」

「そんなこと、誰だってやっているだろう……」

「そう、誰もが同じ。相川も」
 

 

三、教授の過去

 

また、映像が浮かび上がった。

若い頃の教授の姿だろうか。

大学の研究室。

机に向かい論文を書いている。

表情が苦しげだ。

「早く評価されたい」

次の場面は学会での発表。

だが反応は冷たい。

質疑応答で厳しく批判される。

教授の顔が屈辱に歪む。

「見返してやる……」

次の映像。

ホツマツタヱの研究を始めた頃。

「これで名を残せる」

教授の目には野心が燃えていた。

自分の名声を求める心。


「相川もお前と同じだ。自分のための研究。真実など二の次」

胸が張り裂けそうだった。

「教授も同じだったのか」
 

 

四、優しい光

 

「欲まみれのお前に真実を語る資格はない」

お多福の笑い声が森全体に響き渡る。

全て自分のため。

他者の幸せのためではなかった。

神仏への感謝も尊敬もなかった。

ただ欲しかった。

「俺は醜い……」

お多福の言葉を否定できなかった。

「山を降り町へ戻るがいい。何もなかったことにするのが一番だ」

それが正しいのかもしれない。

絶望で何も考えられない。

完全な暗闇。


* * * * * *


どれくらい時間が経ったのだろうか。

何も見えない。

お多福の言葉だけが、頭の中で響いている。

その時、また胸元が温かくなった。

「天御祖神の御加護がありますように」という池上の祈りが聞こえたような気がした。

お多福の声が遠ざかっていく。

「何だと!」

体が動き、立ち上がることができた。

「走れ!」

心の中で声が聞こえた。

「待て!」

お多福の声が聞こえるが振り返らない。

最後の力を振り絞って走り続ける。

お多福の気配が背後から迫ってくる。

「逃がすものか」

だが、もう間に合わない。

ついに鳥居をくぐった。


ここは天御祖神の聖域。

お多福の力が及ばない場所。

「まだ終わりではない。鳥居の外に出た時がお前の最期だ」

その言葉を残し、お多福の姿は薄れていった。

全身が震えている。

何とか助かった。

お守りを握りしめた。

「ありがとう……池上さん」

顔を上げると、鳥居の先に石段が見える。

長い長い石段。

体は重いが進まなければ。

石段を登り始めた。
 

 

次章に続く

1.教団にも忍び寄る全体主義という病

 

 

 
 
 
伝道で新しい取り組みをしたかったのですが「言われたこと以外やってはいけない。」と言われました。

「指示されたことだけやっていればいい」という意見には抵抗感があります。

 

新しいことに挑戦する姿勢は素晴らしいですね。それにもかかわらず、組織の中に全体主義的な考えが一部入り込んでいるのは、残念なことです。

私も各方面から似たような話を耳にします。

「時間をかけて作った伝道ツールを内容も見ずに批判された」

「こちらの話を聞こうともせず、土下座を強要された」

「一方的に罵倒され、話し合いすらできなかった」


こうした出来事を耳にするたびに、本当に胸が痛みます。

これらは単なる人間関係の摩擦ではありません。さらに悪い方に行けば、最終的には自分の頭で考えることをやめ、立場の強い人の言葉に従うだけになってしまいます。

「前例にないことはするな」という空気が強まれば、創造性が失われていきます。

個人の創意工夫を否定し、「上から言われたことだけを実行すればいい」とする考えは、主の教えとは相反するものです。

ドラッカーは『経済人の終わり』で、全体主義を病として位置づけました。また、ハンナ・アーレントも『全体主義の起源』で、全体主義的感染という医学的表現を用いています。


私は僧団の誰かを批判したいわけではありません。心の医者として全体主義という精神の病を根絶したいだけです。

教団や社会に存在する病巣が無くなり、主が愛するサンガが健康な姿を取り戻すことを心から願っています。

全体主義は中国や北朝鮮といった国家だけの話ではないのです。組織や家庭、そして私たちの心の中にもウイルスのように感染しうるものです。

全体主義を阻止するためにも、美の法門を早急に弘める必要があります。

 

 

2.美の法門は全体主義の治療薬

 

 

 
 
なぜ美の法門が全体主義を防ぐことに関係するのですか?

 

美の法門には「多様性」が含まれていて、これが全体主義と闘う上で重要なキーワードになります。

 

主が女性職員からの「制服を導入してほしい」という要望を見送られた話がありますよね。

 

 

「制服をつくってくれ」という意見もずいぶん聞かされました。女性のほうからは「制服をつくってほしい」という意見があって、それはJALに勤めていた方のご意見ではありました。「全員、制服を着て、同じように見えるのがやはりかっこいい」というのもありますが、それは、採用のときにそれなりの人たちを選べるからでしょう。その制服を着たらピシッときまって、「かっこいいな」とみんなが憧れるような人を選んでいるから、同じ服を着てもかっこいいわけです。  
 ただ、そうではなく採用している場合には、「やはり、それぞれ個性がありますので、そのご自分の個性に合ったものを着られたほうがよろしいのではないでしょうか」というようなことで、私はそれだけは首を縦に振らなかったのです。 そこでちょっと首を縦に振らなかったので、いろいろな、真・善・美の「美の法門」が残ったのかもしれないとは思ってはおります。

 

『自分を鍛える道』

 

 

もし制服を導入していたら、美の法門が残っていなかった可能性があるということです。

制服の強制は全体主義の象徴。制服そのものに問題はありません。「制服以外の服を着ることは許さない」と強制することが、全体主義につながる危険性があります。

全体主義は単一の価値観を押し付けるため、多様性を認めることは全体主義という病を治す効果的な方法です。異なる意見が共存する社会では、一つの思想による支配が困難になります。

美の法門は同じ考え・行動で私たちを縛るものではありません。

原曲研修でも同じ曲を同じ空間で聴いているのに人によって解釈が違います。例えば、ある原曲について、Aさんは「喜びの歌」と解釈し、Bさんは「主の復活を祈る者への応援歌」と受け取ります。どちらも正しいのです。

もちろん多様性が重要だからと言って「何でもあり」ではありません。妖怪性や地獄的価値観とは断固として闘う必要があります。

しかし、仏法真理の範囲内での表現や創造であれば、各自の個性を活かしていくことが信仰の豊かさとなっていきます。

 


楽曲「天御祖神の夢」でも梅の花が正解で、他の花は必要ないという歌詞ではありませんよね。それぞれが美しい花を咲かせる百花繚乱の状態を天御祖神も望んでおられます。

 

 

3.美の法門はエンタメではない

 

かつての私には、当会の音楽がエンタメのように見えていました。歌詞が仏言であるという意識すらなかったのです。

 

主がつくられた音楽に対して悪い印象は持っていなかったのですが「どうしても必要なもの」という感覚はありませんでした。

しかし、今ではその考えが邪見だったとはっきり分かります。

たとえば、当会の映画制作では主題歌が天上界から降ろされ、その歌に沿ってストーリーが組み立てられます。曲がなければ映画がつくられることもない。

『まずはじめに調べありき』なのです。

主の地上時間の貴重さを考えれば、音楽の重要性は明らかです。

主はエローヒムとして降臨された後、御分身や支援霊を何度も地上に送って準備をされました。1億5千万年もの長い時間をかけて、満を持して地上に下生されたわけです。

本仏であってもわずか数十年ほどの地上時間で使命を果たさなければならない。何度も転生できる私たちとは時間の重みが根本的に違います。一分一秒が惜しい。どうでもいいことに時間を使うことはできません。

それだけ大切な時間の中で、膨大な時間を割いて約450曲もつくられました。作詞・作曲のみならず、歌唱指導までされることもあった。

その事実だけを考えても、音楽が単なるエンターテイメントではないことは明らかです。途方もない時間をかけてでも取り組む必要があるものなのです。

格はいくでは以下のように詩われています。

 

24 妖怪の頭目と疑われ 天照抵抗す 微熱続く

☆おととい、39.1℃、昨日、38.2℃、今日夜37.6℃もう一意気だ。日本神道に「地獄論」がないとの指摘、よほどこたえたか。
2023・2・7


29 『二十二世紀の君』と『人魚の泪』の二曲 歌う

☆仕事再開は、作詞と作曲の原曲づくり。今日は、東京も朝 から雪もよう。
2023・2・10

『短詩型・格はいく集(4)〈不惜身命の姿・特別編〉』


 

「仕事再開は、作詞と作曲の原曲づくり」とあります。原曲づくり(神は詩う)はエル・カンターレとしての『仕事』であり、趣味や娯楽ではありません。

熱があった状態から体調がまだ完全に回復されていなくても、私たちの魂を救うために無理をしてでも創造してくださったものが原曲です。
 

 


 

4.政治にこそ美の法門が必要



幸福実現党の使命には、全体主義を防いで真なる民主主義を実現するというものがあります。
 

全体主義や独裁政治、衆愚政への転落を防ぎ、国民の良識に基づく真なる民主主義を守り抜きます。
 


「2.党の使命」>「三、保守政党としての「真なる民主主義」の実現」

 

美の法門は全体主義という病に侵された社会を癒すための治療薬であるため、幸福実現党の使命を果たす上でも絶対になくてはならないものです。

これまで全体主義と闘うために数多くの武器が与えられました。
 

ジョン・レノンと同じように、主も詩うことで全体主義と闘っておられます。
 



また原曲「アパアト」には忌まわしいものが入り込むのを防ぐ力がありますが、今はまだ美の法門が充分に広がっていないために全体主義という忌まわしいものの侵入を許しています。

外なる全体主義、内なる全体主義、両方と闘っている状態です。


厳しい現状を打開するため、政治活動に従事されている方々にも美の法門に目覚めていただきたいと願っています。

私も政党活動に携わる方々と志は同じです。全体主義を食い止めることは学生時代からの主の悲願ですから、共に主の願いを叶えるために闘える日が来ると信じています。

 

 

 今、必要とされるのは、「複数性を認めながら、自由の解釈を行使できる、考える人間を育てることができるような宗教を、打ち立てられるかどうか」ということであり、行動の面で見れば、「その宗教が政治性を帯びた行動を取ることができるかどうか」ということだと思います。
 心の内なる思想が外面に転化し、アクションとして表れたとき、それが政治行動として出るわけです。
 実際には、「宗教」と「政治」という二つのベクトルを持っているにしても、「宗教」と「政治」には、実は、その本質においては変わらないものがあるのではないかと思うのです。

『政治哲学の原点 「自由の創設」を目指して』

 

 

5.考える人間を輩出するのが主の願い


全体主義は思考停止させて考える力を奪うため、それに対抗するには考える人間を増やす必要があります。

「考えるのをやめることは、人間であることをやめること」というハンナ・アーレントの言葉がありますが、思考を放棄して命令通りに行動するだけではロボットと変わりません。
 

考える人間:「なぜ?」と常に問い、より良い方法を模索する

考えない人間:「言われた通りにやればいい」と思考停止し、指示待ち状態になる

 

 

 

 
 
 
考える人間になるためには、どうすればいいですか?


まず考えるための材料が必要です。材料がなくては考えることはできません。真善美のすべてが欠かせませんが、特に美の法門が重要です。

 

 

 
 
 
それはなぜですか?


真→善→美の流れの中で、最新の法門だからです。

例えば、あなたが病に苦しむ患者だと想像してください。最新の知識や技術を学んでいない医者に診察してほしいと思いますか?

 

 

 
 
 
いいえ。古い知識のままでは自分にとってベストな治療法を提示してくれるとは思えません。


そうですね。この世の医療でさえ、生涯にわたって知識や技術のアップデートを要求されます。

まして私たちは心の医者や看護師です。一歩間違えたら相手の来世以降の人生をも左右する可能性があります。この世の医者よりも責任が重いのです。

最新の治療法として美の法門が説かれているのに、自分の好き嫌いで学ぶことを拒否するのは医療従事者としてあるべき姿であると私は思いません。

人々の心を救うことは、主から私たちに与えられた仕事です。
 

どうか、「一人ひとりの心を救う」という、そういう大きな使命を、各人が果たしてくださることを、心より祈念してやみません。

『地獄の法』



最先端の医療を学習せずに、苦しんでいる患者さんを一体どうやって救うのでしょうか。

私たちはこれまで真善を中心に学んで伝道してきましたが、魂の病院である地獄領域は拡大し続けています。心の医者として務めを果たせていない状態です。

主からも伝道の実績が100〜1000倍以上、足りないという指摘をいただいています。

 

 

たぶん、総合本部の人で読んだ人たちとしては、「あれ?幸福の科学の活躍はまったく何にも反映されていないではないか」というところのショックが大きいと思うのですが、私のほうから言えば、「あなたがたの仕事は、伝道の実績の桁として)"丸"が二個か三個足りないのではないか」ということなんですよね。やっているつもりでいるのだろうけれども、二個か三個、"丸"が足りないのではないか。

(中略)

私の本の翻訳とかもしてくださっていますけれども、それを"製造業"として、”メーカー”としてものをつくっているというのは分かるのですが、つくらないよりはつくったほうがいいのですけれども、「いったいどれだけの人にそれが広がっているかを、よく見なさい」と。
「アメリカで、当会の映画の吹き替えをしたものが上映されたとしても、アメリカ人の何人が観ましたか?」
「台湾で、映画館に何人が来ましたか?」「オーストラリアで、英語に訳された本は何人の方が読みましたか?」
「ちゃんと向き合ってください。正直に向き合ってください。それで、世界が本当に救われると思いますか?」ということで、(実績の桁の)丸が二つ、三つ、あるいはもっと足りないかもしれませんよ」ということを言っておきたい。

『十字架の女2 余話』


 

企業でも売上を2倍にしようと思ったら、従来の営業・マーケティング手法を改善すれば達成できる場合があります。しかし、売上1000倍は小手先の改善では絶対に不可能です。別次元の組織としてゼロベースで創造する必要があります。

伝道実績が100〜1000倍、あるいはもっと足りないと言われて、「今までの1000倍、献本しよう。1000倍、ノック伝道しよう。」と思いますか?


 

 
 
 
思いません。1000倍やっている間に今世の人生が終わります。

 

主のご指摘は、物理的に行動量を1000倍にしなさいという意味ではありませんよね。


「根本的にやり方を変えなさい。今までの延長線上の伝道から方向転換しなさい。」というメッセージのはずです。

 

 
 
 
伝道をどのように変えるべきでしょうか?


献本やノック伝道など今までの方法を一切やってはいけないという意味ではありません。私も献本することはあります。

ただそれらをメインにして伝道する時代はもう終わりました。既存の伝道スタイルを踏襲して改善しても1000倍にはなりません。
 

活字の経典の流布と、伝道師の説法という古典的なやり方だけでは、仏法真理を伝えるのは困難になってきた。もっと感性的で感覚的なものでなければ、大勢の人々に認識されにくくなってきたのである。

『仏法真理が拓く芸能新時代 -エンターテインメントに愛と正義を- まえがき』

 

美の法門を学ぶことによって、各人が芸能の力を開拓する必要があります。

この世的な意味での芸能人になることではなく、神の芸術作品として真の力に目覚めることです。

「美の法門を学ぶ過程で培った芸能の力を使って自分はどうやって伝道するか?」

これを熟考することは、考える人間になるために避けて通れないプロセスです。美の法門を学ぶ過程で様々な解釈を考え、伝道に活かす段階でもアイデアを考え続ける。

使用する伝道ツールも無限の可能性があります。文章、動画、絵画、デザイン、ファッション、ダンス、音楽、彫刻、演劇等

興味や関心もそれぞれ異なるため、伝道に決まり切った答えはありません。自分の得意分野で貢献していくことが求められます。

主が説かれる「考えることができる人間」とは、命令を待つ受け身の人間ではありません。自分で課題を見つけ、目標を設定し、自らの判断と責任のもとで行動する主体性のある人間です。

 

民主主義社会においては、実は、宗教も、いろいろな宗教が発展する可能性を持っています。価値観の多様性を認めれば、宗教の多様性も認めることになるのです。
 宗教の多様性を認めると、個人として人格を陶冶することや、教養を深めること、それから、精神レベルを高めることを促し、先ほど述べた、"Thinkable Man"「考えることができる人間」を、多数、輩出することができます。
 宗教と学問が協力して、「考えることが可能な人間」をたくさんつくることができます。それは「自由人」を生むことになるでしょう。
 数多く生まれてくる「自由人」は、一党独裁型のイデオロギーを押しつけたかたちでの、「ただ従え」という考え方の国体にはそぐわないでしょうが、そうした人たちをつくっていくことが、おそらく、未来のリーダーを数多くつくっていくことになると思います。

『政治哲学の原点 「自由の創設」を目指して』

 

 

6.多様性から許す愛へ

 

原曲研修の法談では自分と解釈が異なる人を受け入れる訓練にもなっています。美の法門は天使の法門。多様性を認めることで他者に対して寛容になり、許す愛に繋がっていきます。

主の教えには異分子だから他者を排除しようというものはありません。言語や考えが違う相手に対しても関心を持って理解しようという愛に満ちています。

外国人を理解したいと心から望むのであれば、相手の文化や言語を知りたいと思うでしょう。クリスチャンに伝道したい、受け入れたいと本気で思う人は聖書を読むはずです。
 

しかし心に刻んでおいてほしい。
この地球上には、
あなたに関心を持たれることなく生きている人々が、
数限りなくいるということを。

だから、
国際人として目覚めるということが、
あなたの知らない人々を愛する始まりとなるのだ。

語学はそのための大きな武器となる。
英語は特に地球時代の共通語といってよい。
一つの単語を覚えることが、
一人の人を救うことにつながると思おう。
文法を学ぶことが、
救いの命綱を垂らすことだと考えよう。

 

 

 



同じ教えを学んでいる教団内で考えが違う人を認めることができないのであれば、言語やイデオロギーが異なる外国人に仏法真理を弘めることはできないし、宇宙人を受け入れるなんて夢のまた夢です。

私も自分の器を広げる必要性を感じます。かつての自分のことを思い出しつつ、原曲を学ばない人の気持ちをもっと理解した上で相手の立場に立って伝えられるようになりたいと思います。

 

以前に私が美の法門に対して抱いていた印象は下記のようなものでした。

 

●美の法門を学ぶ前の勝手なイメージ

・黄色の法の光線から真理に辿り着けない人向けの脇道

・この世的な芸術

・外見の美に関する教え


 

「すべての人が黄色い法の光線から仏法真理に辿り着くわけではない。宗教画や教会のステンドグラスなど芸術を通して真理に触れる人もいる。」という趣旨の御講義が過去あったと思います。

 

お話を聴いた時に「自分は経典を読んで会員になったから関係ない」と思いました。今思えばお恥ずかしい限りです。

 

心のどこかで芸術を軽視していました。美を下に見ている気持ちが私の心の中にあったのでしょう。
 

だから美の法門が説かれても、内容を確認してもいないのに「経典から真理に辿り着けない人用の脇道。救済策」であると間違った解釈をしていたのです。

 

しかし、美の法門を学び始めてから脇道ではなく本道、メインストリートであることが分かりました。


美の法門には、この世的な芸術や外見の美に関する教えも含まれていますが、それらはほんの一部でしかありません。

原曲はオマケや飾りではないし、刺身のツマのような添え物でもありません。

主の御名(エル・カンターレ=神は詩う)に関わることなので、お飾りなわけがありません。

美の法門に対する印象は今では下記のように変わりました。
 

●美の法門の特徴

・真→善→美と連なる教えの本道

・この世の芸術だけでなく神の芸術

・外見だけでなく内面の美、魂の美

・エル・カンターレ(神は詩う)信仰に必須のもの 

・主のお気持ちが分かる

・醜い妖怪性を払拭する

・世界を美しくする

・宇宙の法を本格的に説くために必要

・画一的な全体主義と闘うために必要

・考える人間になるために必要

・多様性を認めて他者に寛容になれる

・許す愛に繋がる天使の法門

・美しい生き様を学ぶ。生き方の美学

・病気の回復に役立つヒーリングパワー

 

・心の医者・看護師が学ぶ最新の医学


・海外伝道、宇宙伝道に必要

・献本や説法より多くの人に伝道できる


・復活の祈りの質を上げる。主のご復活の土壌を作る

 

・人生を懸けるに足る徳目(『あげママの条件』より)

 

・原曲は魂の親が子供達を育てるための子守唄


etc.


 

他にも様々な要素がありますが、今回は膨大な美の法門の中から、全体主義との関係について述べました。

全体主義という病は、気づかぬうちに私たちの心に、そして組織に感染します。

真善美をバランスよく学び、特に手薄になっている美の法門を強化して伝道する。そうすることによって教団も霊的健康を取り戻し、全体主義から世界を守ることに繋がります。

心の医者として最先端の医学である美の法門を学び、「一人ひとりの心を救う」という主からいただいた使命を果たしていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.エローヒム信仰で止まっていませんか?



長らくエル・カンターレ信仰もどきをしていた九条です。

 

 
 
 
エル・カンターレ信仰もどきって何?


私が信仰していたのはエル・カンターレではなかったと最近気づいたのです。

まずは下記の図をご覧ください。





私は美の法門をずっと拒否してきた人間です。

自分ではエル・カンターレ信仰をしているつもりでしたが、美の法門を学んでいなかったので客観的に見ればエローヒム信仰止まりです。

エル・カンターレ信仰を語れるのは原曲を聴き、真善を貫いて美の法門まで学んだ者だけ。会員歴が何年であろうが関係ありません。

私は今までエル・カンターレ信仰ではなく、エローヒム信仰だったのか・・・

 


「エル・カンターレ信仰=神は詩う信仰」なので原曲を学ばなければエル・カンターレ信仰ではないということです。

新たな教えを学びたい人は天上界にたくさんいます。彼らを押しのけて生まれてきたのに新しい法門を学ばないなんて、彼らに本当に失礼なことをしたと反省しました。

本仏と共に生まれることを許された自分は私人として生きてはいけない。天上界にいる多くの方々の代表で生まれたという自覚が足りませんでした。

この人生は私だけのものではない。自分のためだけに教学するのではない。アルファ、エローヒムの時代に説かれなかった新しい法門を学習して、帰天後に天上界の仲間に共有する責任があります。


どうか私のような愚かな過ちをせず、一人でも多くの方が原曲を聴いてくださるように心から願っています。


またサンガの集合想念を考えても原曲を真剣に学んでいる人は圧倒的少数なので、美の法門が教団全体で確立されているとは言えません。

このままでは幸福の科学は主エル・カンターレが設立されたにもかかわらず、エル・カンターレ信仰が根付いていない団体ということになってしまいます。

現時点ではエローヒム信仰(真・善)からエル・カンターレ信仰(真・善・美)に脱皮している途中でしょう。

ただし、これはマイナス要因ではなく伸びしろだと思います。サンガの過半数が原曲、美の法門を学ぶようになり、本当のエル・カンターレ信仰に目覚めた時の伝道力、救済力が楽しみです。

 

 

今、現代においては、「エル・カンターレ信仰」というものをキチッと立ててもらいたいと思います。それは、日本だけでなく世界各地にキチッとエル・カンターレ信仰を立てるということです。

「地獄の法」


日本や世界の前に、まずは私自身やサンガにキチッと美を含んだエル・カンターレ信仰を立てる必要がありますね。

 

2.「原曲を聴くのが生理的に無理です!」

 

美の法門は天使が学ぶもの。天使ではない私たちが原曲を聴けば、波長同通の法則により違和感を抱くのは自然な反応です。

秘匿霊言で原曲が流されていたように、自分の中の妖怪性が激しく抵抗することもあります。

 

それは想定内の現象であり、ずっと続くものではありません。自分の妖怪性が弱まるにつれて収まっていきます。

私の場合、最初の原曲研修で心がフリーズし、何も感じることができませんでした。

 

感情面だけでなく論理的思考も完全に停止し、法談では何も語ることができませんでした。


「こんなことをやっていて意味があるのか?」と途中で疑問を抱いたこともありましたが、ブレークスルーは必ず訪れると信じ、原曲コンプリートまでやり続けました。

曲との相性もあるため、まずは10曲ほど様々な原曲を聴いてみることをお勧めします。

 

 

 

 
 
 
天使になってから天使の修行をすればいいのでは?


確かに黙示録にあるように、本来は選ばれた天使のみが学べるものです。

誰でも聴くことが許されているのは大いなる慈悲です。また、天使以外の者にも前倒しで学んでもらわなければならないほど、危機的な状態にあることを示しています。

主のお気持ちを想像してみてください。

エル・カンターレとして法を説かれたにも関わらず、弟子のほとんどは原曲を聴かず、エローヒム信仰(真・善)で留まっている。

それを自分たちはエル・カンターレ信仰だと思い込んでいるなんて、主はどれほど心を痛めておられるでしょうか。


イノベーションには苦痛が伴います。居心地の良いコンフォートゾーンを抜けた場所にしか成長はありません。修行である以上、時には忍辱の心も大切です。

美の法門は私たちにとっては、アンドレ・ジッドの狭き門であり、映画『永遠の法』に登場する七次元菩薩界に入るための狭き門でもあります。




 

 

 

狭き門をくぐらずに、その先の宇宙の法が説かれることはありません。

原曲を聴けば全ての人が天使になれるとは言えませんが、欲界転生を卒業できる可能性は飛躍的に高まります。

私自身、原曲コンプリートして振り返ってみると、以前に比べて明らかに地獄的な思いや妖怪性が弱まっているのを感じます。

反射的に人を批判したり裁いたりする心の中のモンスターが大人しくなりました。

だから現時点で天使でなくても学ぶ意義は大きいのです。

あなたにとって、一体どちらが狭き門でしょうか?


「受け入れやすい法だけ学ぶ」

「受け入れがたい内容も含めて、主の法を素直に学ぶ」

 

仏より流れ出すところの、一切の教えを、学ぼうと誓え。
仏より流れ出すところの、一切の真理を、学び尽くそうとせよ。
そうであってこそ、
あなたがたは無限の力を得ることができるのだ。
遠き道を歩んでゆかんとするならば、
この力を身につけよ。
魂の糧を、一つ残らず、食べ尽くすのだ。
そして、永き道のりを、共に歩いてゆくのだ。

「永遠の仏陀」

 

 

 

3.「原曲研修の法談が苦手です」

 

 



 
 
 
皆さんのような発表ができずに法談で尻込みしてしまいます


あなたにとっては「大したことがない」と感じる気づきでも、他の人にとっては貴重な発見かもしれません。その気づきによって理解が深まる人もいます。

私も最初は周囲のレベルの高さに圧倒されましたが、他人と比較して劣等感を抱くのは間違いだと思うようになりました。

 

スタートした時より自分が一歩でも、半歩でも成長すれば、それで充分です。

ジグソーパズルに不要なピースが一つもないように、学びの場においても、一人ひとりの気づきはすべて意味があります。

法談は与える愛を実践する場でもあります。自分の気づきを他の人と共有することは、与える愛の行為そのものです。

通常の法談では、一緒に参加した人にしか内容が伝わりません。しかし、神詩会では法談の内容をレジュメにまとめているため、あなたの知らない人や、これから原曲を学ぶ人にも伝えることができます。

レジュメを他の人が読むことによって一対多の与える愛になります。

私も話すことは得意ではありませんが、主が過去の間違いや失敗もさらけ出してくださっているのに、人間心で恥ずかしいとか自己保身の気持ちで話すことを躊躇するのは、あるべき姿ではないと考えています。

『サクセス・マインド』で説かれているように、常に最高の自己を世の中に差し出すことが大切です。他の人と比べることではなく、今の自分の最大限を出せれば、それで良いのです。

法談は「三尺三寸箸」の話に似ています。天国で目の前の人にご飯を食べさせ合うように、法談でお互いの気づきを分かち合う皆さんの姿を、私は美しく感じています。

 

 



あなたの気づきは、あなただけのものではありません。「人類の共有財産」であることをどうか忘れないでください。

 

4.「八正道で妖怪性を払拭すればいいのでは?」

 

仏言「妖怪には八正道ができない」に関するご質問ですね。まず例え話をさせてください。





「正露丸は歯の痛みを和らげる」


これは正露丸の特徴の一つを表した表現です。ただし、歯の痛みを和らげるための最善策が正露丸だと述べているわけではありません。

正露丸には局所麻酔作用がある成分が含まれているので歯痛薬として使うこともできます。しかし、正露丸の本来の目的は下痢・腹痛などの緩和。

虫歯の痛みにも副次的に効果はありますが対処療法にしか過ぎません。当然ながら歯の痛みを和らげるための最善策は「歯医者に行くこと」ですよね。

では話を本題に戻します。


「妖怪には八正道ができない」


これは妖怪の特徴の一つを表した表現ですが、妖怪性を払拭するための最善策が八正道だと述べているわけではありません。

また、以下の文脈からも分かるように、妖怪性を払拭するための手段として八正道を勧めているわけでもありません。

 

 

だから、妖怪には八正道ができないんですよ。八正道ができないんですよ。 正見・正思・正語・正命とか、こんなのはとても、とてもできない。これができない。八正道、できないですね。「自分を見つめて、分解しながら点検していく」というようなものは、ちょっとできない。


「『妖怪にならないための言葉』余話 」

 


「八正道で妖怪性を払拭できる」とは説かれていないのです。

 


例えば「新生児は固形物を消化することができない」と言われたら「よし!新生児に固形物を食べさせてみよう」と思いますか?

 

 

 
 
 
思いません


「悪魔には感謝ができない」と言われたら「悪魔を訓練して感謝させよう」と思いますか?

 

 

 
 
 
思わないです


では「妖怪には八正道ができない」と仏言で言われているのに、なぜ妖怪に八正道をさせようとするのですか?

「修行すれば妖怪でも八正道ができるようになる」とは説かれていませんよ。

 

 

 
 
 
深く考えていませんでした・・・



「八正道によって妖怪性を払拭できないだろうか?」と仮説を立てるのは理解できます。

しかし、私たちは学者ではなく修行者、実践家です。どんなに正しそうに見えても実現性が低ければ意味がありません。

 

 

 
 
 
主が説かれた八正道を否定するのですか?


私は八正道を否定していません。八正道は絶対に必要です。ただし、妖怪性の払拭を目的とする場合、最初に八正道からアプローチするのが最適なのかについては検討が必要です。

正露丸の例で言えば、虫歯の痛みに対する最適な治療法は正露丸ではなかったですよね。


心の医者であるならば「八正道によって本当に妖怪性は改善に向かっているのか?」という治療法の検証を怠ってはいけないと思います。

『仮説は実証して初めて真実になる』


八正道を実践して既に妖怪性を払拭できたという方がいれば、その方に私が申し上げることは何もありません。


しかしながら、八正道に取り組んでも妖怪性を払拭できなかったという人の方が圧倒的多数ではないでしょうか。

真説・八正道が説かれて長い年月が経ちました。

それでも妖怪性の問題は解決していない。

「八正道の実践量が足りていなかった」「八正道のやり方が間違っていた」という意見もあるでしょうが、私は他にも足りないピースがあると感じています。

私の周囲でも、八正道によって妖怪性を払拭できた人の話を一度も聞いたことがありません。
 

 
 
 
ではどうすればよいのですか?

 

妖怪の醜さと闘うのであれば、醜さの正反対である美が必要です。

ご提案したいのは、原曲で心を開いてから八正道に取り組む方法です。

 

 


私は過去、泣く反省がほとんどできませんでした。反省しても深く入れないのです。

そんな私でも原曲研修で曲によっては泣くことがあります。原曲・高越山では今までで一番涙を流しました。

 

その状態では反省も非常に入りやすくなります。

ですから、八正道を実践しているのに妖怪性が弱まっている気がしないという方は、原曲→八正道の順で試してみることをお勧めします。

 


 

5. 人事を尽くさず天命を待つな






約4億年もの間、エル・カンターレの御名が明かされることはなかった。

途方もない沈黙の時を経て「エル・カンターレ=神は詩う」という隠された御名の意味が明かされた。

それなのに、神が詩われている原曲を学ぶ者は極めて少ない。少なすぎる。

一番大切なものを明かしてくださったというのに・・・

主は深い悲しみに包まれていらっしゃるでしょう。

お世辞にも弟子の準備が調ったとは言えません。

弟子たちによる復活の祈りが、今日もまた地上から聞こえてくる。弟子は準備を調えることもなく復活をお願いしている。主はどのようなお気持ちで聞いていらっしゃるだろうか。

義務を果たさず要求ばかり。主の深いため息が感じられる。こんな状態で一体どうして主が復活して本当の姿を見せることができようか。

問題なのはサンガでもなく、他の誰かでもありません。

美の伝道師でありながら原曲拝聴者を増やすことができない。

「エル・カンターレ=神は詩う=原曲」の重要性を浸透させることができない。

「この世の命を守ることより大切なものがある」と人々に気づかせることができない。

主よ、申し訳ございません。すべて私の責任です。
 


 

 

ナヴァさんからいただいたまとめを掲載いたします。(ナヴァさんより:経典、御法話をベースにしていますが、あくまで、個人的見解です。)
 

①3つの時代




「エル・カンターレ」とは地球での隠された御名。    

知と美:太陽系の目標(経典「幸福の科学とは何か」参照)

 

未来型人間(経典「ユートピア価値革命」参照)
 

ダイナミックな進化(経典「太陽の法」参照)

 

②3つの心

 

 

魂の3つの心:考える・感じる・行う→宇宙が立体的に見えて来る






3つの心(3つの丹田、7つのチャクラ)を貫いて天・地・人が、真・善・美が、一つになることが「信仰」。ブロックとなっているものを取り除くことが「修行」。

トーラス:私たちと宇宙を繋ぐエネルギーの流れ、形。ヘルメス思想とは循環。循環なき時に人間も宇宙も健康、健全とならない。

 

③3つの階層


美による仏性の共鳴が仮面を割る。主と一体となって得られる神秘力





※偽・悪・醜の吹き溜まりが地獄界。

美醜:天使の修行。祈りの修行。

愛の魔法の実践。醜さを消す。(経典「太陽の法」参照)
つまり、天狗性・妖怪性を消す力ということです。

「神様は、人間の罪を許し、醜さを消すために、愛という魔法の力をお与えになった。」

醜さを消すためには反省だけでなく、他者への愛が鍵となっているということ。ここが特に重要です。

愛の実践に心が向かうためには、「悲しみ」を感じていることが大切になります。
主のお気持ち、主の悲しみ、人びとの悲しみ。それを感じることができるのが美の法門・原曲です。

美の法門は天使の修行。欲界転生からの脱却です。


※仏教における三界とは、欲界・色界・無色界の三つの世界のこと。
欲界は、4次元〜6次元。 

※欲界は、地獄も含みます。
(経典「悟りの挑戦(上巻)」)

色界は、6次元上段界の阿羅漢〜7次元。
無色界は、7次元上段界の梵天〜。
(経典「悟りの挑戦(下巻)」、「沈黙の仏陀」)

※正確には、阿頼耶識(蔵識)は、4次元の一部と、5,6,7次元の領域となる。
(経典「仏陀再誕講義」)

 

④3つの世界



「ダイナミックな進化」という目的の下に3種類の象徴的な宇宙人を招来しました。

第3宇宙(巨大な交響楽の宇宙) (「宇宙人リーディング _アンドロメダ星人からの一喝」参照)

レプタリアンーベガープレアデス (経典「太陽に恋をして ガイアの霊言」参照)

※宇宙人リーディングでは、この第3宇宙の説明に関して、「宇宙全体が有機的に楽譜のようになっていて何かを表している。それがシンフォニーのように巨大な交響楽のようなものを宇宙自体が歴史で奏でている。 」とされることからも、パラレルワールドのことかと思います。

 

⑤3つの人間像


以下は、中畑館長の講話からです。

『大川隆法総裁先生は、1986年に「初転法輪」第一声を発せられました。
その年に今後、50年、法を説くと言っています。

半分に割れば25年で、1986年から25年後は2011年。その2011年に説かれたのが「美について考える」

ここから本格的に、もう一度、美を押し出していきますよ、ということで教えは始まっている。』

もう一つは、これは私(ナヴァ)の考えですが、星ひとみ守護霊の霊言で、紫央さんの功徳で20歳延びて2057年までに変更になったと言っています。

これを同じく半分に割る考えもありますが、「2050までに決着をつける」という仏言を着地点とすると、1990年から30年間が「知」の期間で、2020年ゴールデン・エイジから30年間が「美」の期間で、太陽系の目標、未来型人間を輩出し、黄金の未来を開くということにもなります。

つまり、50年から70年になったということになります。

どちらにしても、『美の法門』は主の黄金の御計画の中で重要な位置を締めているのです。


仏陀型人間(知)+ヘルメス型人間(美)=未来型人間
 

 

⑥3つのイノベーション


【真偽(宗教による)の分別】
(1993年に経典「悟りの挑戦」)

●1994年に「方便の時代は終わった」
これは仏陀への帰依です。

経典「宗教選択の時代」参照。
「借物はもう要らない時代、本物の時代が来た。方便の時代は、もはや終わった」
 

→1995年に阪神・淡路大震災。

レプタリアン問題をステップに仏陀を顕現する。


【善悪(政治による)の分別】
(2009年に幸福実現党の立党)

●2010年に再び「方便の時代は終わった」
これは救世主への信仰です。

経典「救世の法」参照。

「方便の時代は終わりました。戦いの火蓋は切られました。」
 

→2011年に東日本大震災。

プレアデス問題をステップにメシアを顕現する。


【美醜(芸能による)の分別】
(2021年から青春詩集〈アニバーサリーイヤー〉)

●2022年に3度「方便の時代は終わった」
これはエル・カンターレ信仰です。

経典「地獄の法」参照。
「『地獄の法』とは、姿を変えた『救世の法』だ。」

格はいく③神は詩う=美の法門・原曲など。

→2024年1月に能登半島地震。

ベガ問題をステップにエル・カンターレを顕現する。

 

⑦3つの循環

 


心の指針237「善悪の逆転」

だから、人間よ、
真・善・美を求め続けよ。
四正道を求め続けよ。
それが、あなた方の羽となるだろう。


心の指針は、この「善悪の逆転」で最後となりました。
 

 


真・善・美・聖の光を、純粋に感じとることが信仰心です。

●やっていただきたいことは、『エル・カンターレ信仰を打ち立てること』=『真・善・美の世界を打ち立てること』(経典「地獄の法」)

●エル・カンターレ=神は詩う=原曲です。

●美の法門を学ばなければ、『正しき心の探究』にならない。

●それは法帰依になっていないということ。

●それで伝える道(伝道)は行き止まりの道であること。

●真(宗教)、善(政治)、美(芸能)です。

この最後の芸能・芸術=美の法門が、宗教と政治を繋ぐ、祭政一致の鍵なのです。

それは、幸福実現党の惨敗を受けて、先生が、HSUの未来創造学部を設立し、「政治・ジャーナリズム専攻コース」と「芸能・クリエーター部門専攻コース」を併設したことからもわかるでしょう。

聖に到るために、世界も、組織も、人間も、真・善・美を意識して循環させることが大切です。循環こそがヘルメス思想の核心です。



循環はスパイラルに上昇していく

 

⑧3つの神の道

 

 


「⑥3つのイノベーション」の真偽・善悪・美醜の分別と「⑧3つの神の道」の至真・至愛・至聖の相関関係について。

真偽を分別する中に上位概念の「善」が必要となります。

善悪を分別する中に上位概念の「愛(美)」が必要となります。

美醜を分別する中に上位概念の「聖」が必要となります。

このような構図だと思います。これはそのままチャクラ構造とも重なります。


 

 



 

※いつの時代も最後に説かれる法門が弟子には分からない。

例)法華経のUFOフリート(鈴)