法定相続分と遺言
人が亡くなれば、その人の遺産は誰がどれだけ相続するかを、あらかじめ法律で定めています。
それを法定相続分といいます。
そこで遺言書を作成することで、相続に関するトラブルを防ぐことができます。
今回は遺言書のメリットについて解説します。
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相続争いの予防 遺言書がなければ、被相続人の死亡と同時に遺産は法定相続人の共有状態となります。この共有状態が続くことで、遺産分割の協議が難航し、トラブルの原因となることがあります。多くの人は「うちには争うほどの財産はない」と考えますが、実際には遺産が少なくても相続争いが起こることが多いです。家庭裁判所の統計によれば、遺産1,000万円以上から5,000万円以下の争いが最も多く、4割強を占めています。このことから、遺産が少ないからといって相続争いが起こらないとは言えません。
分けられない資産は、遺言書によって相続人を特定することで、紛争の余地をなくすことができます。
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法定相続人以外への遺産承継 遺言書を作成することで、法定相続人以外の人に遺産を承継させることができます。例えば、長年介護してくれた息子の配偶者や兄弟姉妹、従弟など、本来の法定相続人ではない者に感謝の気持ちを表すことができます。また、美術品や骨とう品など、金銭的な価値とは別に伝統文化・伝統芸能に関わるものは、その価値を理解し、維持・管理できる人や団体に承継させることができます。自分の考えや思想を体現する団体や法人に寄付する場合も、遺言書は有効な手段です。
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資産の全体把握 遺言書を作成する過程で、自己の資産全体を把握することができます。その所在と内容を確認することにもなり、相続財産に現金が少ない場合は、生命保険を利用するなど、死亡後すぐに使える資金(葬儀・埋葬、入院費の精算費用)を確保する対策を取ることができます。
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節税対策 遺言書作成の過程で、遺産の種類と正確な評価が分かれば、相続税対策を行うことができ、一定の減税効果を得ることができます。
争いが起こる理由
法定相続分とは、誰がどれだけの割合を相続するかを定めたものですが、誰が何を相続するかは決めていません。
相続財産がすべて、現金であれば簡単に分配できますが、
不動産のようにすぐに分けられない財産がある場合、問題が生じます。
例えば、法定相続分に従って3人の相続人が3分の1ずつ相続するとします。
しかし、不動産は一つの資産として利用されていることが多く、住居であればそこに住む人が最大の利益を享受し、他の人は名義だけをもらっても使い道がありません。
住んでいない相続人からは「売却して現金にし、持分に応じて分配しよう」との主張が出てくることがあります。
最近の民法改正で、そこに住む配偶者には「居住権」が認められましたが、全員が納得できるように分配するのは難しく、紛争の火種は尽きません。
さらに、学費・婚姻資金・マイホーム建築資金など、生前贈与による既にまとまったお金が動いていて、正確な記録がない場合、相続人間の勘違いから争いになることがあります。
また、同居している相続人やその配偶者が生活費を負担していたり、介護費用を負担していたりする個別の事情が出てくるため、相続人間だけでは解決が難しく、調停や審判へと発展することがあります。
遺言書があれば、こうした争いを防ぐことができます。
今後も、皆様に役立つ情報を発信していきますので、どうぞお楽しみに。