ライアーレッスン6・(後半)音の滴とピアノ&フォルテ | Al Cuore dell'Etna

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イタリア・シチリア島の活火山エトナに恋して、長年その麓で自活してきました。帰国した後もエトナ山の「心」に自分の一番良い物を捧げたい。今日も元気な活動を続けるもう一つの「エトナ」のお話しです。

まずは四大元素に感謝しつつ、風・水・火・地の要素を表すグリッサンドをそれぞれ行いました。

今回、先生が最も大切にしたのは「音の出し方」です。

四大を表現する「流れのグリッサンド」の時には、全体的にだんだん強く、そしてまた弱くという表現方法にとどまっていたのですが、次にこうおっしゃいました。


「3つの音を綺麗に鳴らしてみましょう。手の掌を弦に対して平行に置くのではなく、自分の方にやや傾けるんです。そして指の腹の小指側で、弦の右上から左下に向かって優しく斜めにストンと撫で下ろします。水が弦を伝って滴り落ちるイメージですね。もし掌を弦に平行にしたまま音を出すと、こんな音になります」


先生が見本の音を出してみせました。
ライアーでもこんな硬い音が出るのかと思うほどで、まるで窓に小石がぶつかってきたようなきつい当たりの響きです。


「そして、こちらが音の滴です」


今度のお手本の音は柔らかくて、水玉がついーっと葉っぱの上を滑り落ちていくような優しい響きです。


「どんなに指の動かし方が早くて、スピードがある演奏ができたとしても、音が綺麗でなければ何の意味もないんですよ。美しい音を出すというのは、常に演奏家の意識の中になくてはいけないことなんです」


「ハイ!」


「では最初に小指から、どこからでも良いので3つ音を出してみて。そう、掌を自分の方に傾けてね」


小指はたいてい細いですから、ふくよかな音を出すのが難しいんですよねー。
でも先生はにこやかに見守っていて下さっていました。


「いいですね。次は薬指、いい音ですよ。はい中指…」


でも、人差し指になった時には音がとてもきつかったので、私は思わず首をかしげてしまいました。


「う~ん、人差し指は難しいですよね。長い間演奏している私たちでも、うっかりするときつい音が出てしまうことがあるんです。お家でグリッサンドをする時には、人差し指で良い音を出す研究をしてみてください」


「ハイ!」


「それから、左手なんですが・・・」


先生が言いかけたところで、二人は思わず声を合わせて笑いました。
左手は右手に比べてどうしても補佐的な立場になってしまうし、右手ほど器用に動かないので、左手の指で美しい音を出すのはどうしても難しくなるからなんです。


「前回もやったように楽器を反対側に向けて、全音でやってみましょうか。ハイ小指から…」


左手で3つの音を出す練習が終わると、次はライアー全体の弦を3分割して、縦割りにするような感じで3分の1のグリッサンドをしてから、最後の音でピタッと止める!という技を学びました。


イメージとしては、指の腹の小指側でキュウリか何かを斜めにスパッと切るような感じでしょうか。
しかも、3分の1グリッサンドの最後に弾いた音を覚えておいて、その音をもう一度ポロンと鳴らしてみるというもの。


ブラインドタッチでしか演奏できないために感覚で弦を覚えていっている私にとっては、グリッサンドの最後の音をもう一度鳴らすことは難しいことではなくて、かなりの確率で当てることができました。


グリッサンドの次は、ハ・ト・ニ・イ・ヘ・変ロ長調の音階を二度ずつ反復しました。
だいぶミスが少なくなったとはいえ、実は私にはまだ越えなくてはならない課題があったんです。


音階が高音に向かっている時には、弾き終わった指の上を素早く触って次の音に間違いなく行けるのですが、逆に下りてくる時に手探り確認などをやってしまうと、弾いて振動している弦を触ってしまい、音が止められてブツ切りになるという・・・汗


これはもう、感覚で次の弦に飛ぶ 「忍法猿飛びの術」こざるっち を使うしかありません!
1音も飛ばさずに間違いなく次の音に着地するには、身体に染み付いたかなりの熟練を要すると睨みました。


「演奏者の中には、ドの弦があるピンに赤い毛糸を巻き付けている方もいましたっけ。弦を巻いているピンの上に赤いシールなどを貼る手もいいかも知れませんね。私はライアーを始めたころ、目印にドとソの弦を赤インクで塗ったことがあってね」


と笑いを噛み殺した声で続けます。「そのインクのせいで弦が振動しなくなって、目印の弦をみんな張り替えた経験がありました」


二人の笑い声がまたレッスン室に響きました。
なんだァ!先生にもそんなNG談があったのね! o(^▽^)oキャハハハ♪


「この黒い手袋を左手にはめたら、細い弦がよく見えませんか? 」


先生が黒い指なし手袋を持ってきてくださいました。


「百均で買ってきて、指の袋だけを切って周りを縫いつけただけなんですけどね。私たち演奏家も楽譜を見るので弦を見ながら弾くことはあまりなくなるんですが、音が飛ぶ時はどうしても見ちゃうんです。でも光が左から入ってくると逆光になるから弦が見えにくくなるじゃないですか。私も今度10月にコンサートに出るんですが、どうしたものかと考えていてね」


先生はそうおっしゃっていましたが、本当はコンサートで黒い手袋をはめるおつもりではなく、たぶん私がライアーを弾きやすくするにはどうしたらいいかな? と工夫してくださっていたのではないかと思いました。


確かに黒がバックになると、細い弦は白っぽく浮き出て見えるんだけど、それを見るには私の場合覗きこむような体制になってしまうので、せっかくの考案ですが実用はできないかなと諦めました。


「そうですか・・・ダメだったかぁ」


残念そうなため息をつかれる先生。本当にごめんなさい。
もう、このさい徹底的にブラインドタッチでやります。


あ、でもポストイットをドの位置に貼っておくのは試してみてもいいかもって思いました。
ペンタトニックをやっていて、左手がミの位置にいるのかシの位置にいるのか混乱するのでは、話になりませんからねぇ・・・(笑)


さて、いよいよ前回の「レミソラシのペンタトニックで弾ける曲の宿題」 を提出しました。
一目見た時の先生のびっくりした顔、ちょっと忘れられません(○´艸`)ウシシシシ

色々な演奏グループでペンタトニックの曲が挙げられたらしいですが、まとまって提出されたことはなかったみたいです。


「こんなにいっぱいあったんですか?」

「ええ、それがね先生、出がけに甥っ子が…『笑点』笑点のテーマを歌いだしたんですよ。もしかしてそれもかな?と思って弾いたら、レの音から始まるペンタトニックだったので、甥っ子が自分も宿題に貢献したって大笑いしていました」


「『笑点』、まだ「レ」のところに書いてないじゃないですか(笑)」


「あはは! そうなんです」


提出したペンタトニックの曲の方は、先生が次回までにキーボードで確認してみるとのことでした。
今回は私が先生に宿題を出しちゃったぜ σ(^┰゜)ベー♪


「上を向いて歩こう」や「故郷の空」のように、最初はペンタトニックなのに途中から半音が入ったりして調が変わってしまう曲は、一応リストからは省いています。


一方、2つや3つの音でできている曲はペンタトニックと呼べるのか?など色々と疑問は出てくるんですが、ペンタトニックも前回書いたとおり、沖縄音階とか四七抜き音階とかまァ色々とあるわけで、先生としてはそこまで厳密にこだわっている様子はなかったみたい(笑)


そうそう、シュタイナー定義のペンタトニックで弾ける曲に、「レ」の音から始まる「お山の杉の子」と、「ソ」の音から始まる「さっちゃん」が川越のグループから挙げられているそうなので、リストに追加しておくことにいたしますね♪


次はペンタトニックで拍子を変えながら、二人で「即興」を楽しみました。
前回のレッスンと比べて、自分が動ける音の範囲が格段に広がっていたのでとても嬉しくなりました音譜


教科書にしている「ライアー演奏の入門」第七章のペンタトニックでは、カノン(輪唱のように複数の楽器がメロディーを繰り返すことで美しいハモりを演出する曲)や、教師の伴奏と共演するアイリッシュ風の美しいメロディーの曲などがあります。

二人の演奏でペンタトニック独特の、絶対にケンカしない心地よい音が重なり合う、とても楽しいひと時を過ごしました。

2回のくり返しや、ダ・カーポ(曲の冒頭から)の指示がある曲も多く、ここでは曲全体を最初にフォルテで、くり返しはピアノでという感じで、力加減に強弱のメリハリをしっかりと出すように気をつけてと注意を受けました。


「ライアーはピアノほど強弱は出せませんが、演奏に強弱の表現は欠かせないものなんです。エトナさん、もっと自信をもってフォルテの時にははっきりと音を出すようにしてみてください。あ、力は強くても綺麗な音でね」

「そ、そんなぁ! 難しいですっ!!


二人の笑い声がまたこだましたので、下の階から先生の猫ちゃんがビックリして抗議する声が聞こえてきました。


最後にクリスマスに演奏する4つの讃美歌の練習。
これらは順調で、メロディーもだいぶ間違えが減ってきたように思えました。
ただ、コンサートのためではなく弾き語りの伴奏の練習を始めている「いつくしみ深き」に関しては、、複数の音の演奏に慣れずにミスタッチがまだまだ多いのが現状。


しかもこの日は事前練習とレッスンを合わせて、3時間半もライアーを弾きっぱなしだったことに気がつきました。
スタミナ切れで、思った音に指が行かないのです。


「お陰さまで2カ月かけて、やっとライアーで好きな曲のメロディーを弾けるところまで来ることができました。でもスタミナがないのは困るなぁ。2時間も演奏ができる方って本当に凄いと思います!」


「だってまだ始めて数カ月だもの! でも努力家でとても優秀な生徒さんですよ。いったい毎日何時間練習しているの?」


「あの…始めたらどうしても1時間はかかってしまうんです。気がついたら2時間以上経っていることもよくあります。弦を見ていないから、ミスタッチを直すのに何度も反復することになっちゃうので、先に進まなくて。だけど疲れていたら怠ける日はありますよ」


「そうだ! 実はお願いがありましてね、コンサートで私が独奏できる時間をいただけませんか? ライアーで本気で演奏できる曲を皆さんに聞いていただきたいというのもあるのですが、エトナさんに曲をプレゼントしたいんですよ」


「え? 何の曲ですか?クリスマスソングですか?」


「いえ、『シチリアーナ』です。フォーレじゃなくて、レスピーギの方のね」


私の目に涙が浮かびました。


「ありがとうございます。きっとエトナ山を思い出しながら聞かせていただくと思います」


次回のレッスンは8月20日。
縦割りのグリッサンドと、ペンタトニック後半の曲の強弱を強調してもう一度聞いていただくことになりました。頑張りますっ☆