今の時代、独り身の人が多い。

独り身の方々は様々な理由と云うか事情で、或いは己のポリシーと云うか、独身を通している。

私は先妻を亡くした時、独り身で残りの人生を通そうとは思わなかった。

結婚生活を知ったが故、家庭の味を知ったが故に、独りで暮らすなんて事は出来ないと。

まあ逆の人もいる、結婚生活の窮屈さや家庭の鬱陶しさ、これに辟易して二度と家庭を持つのは嫌だと。

だが私は家庭の温かさと、そして自分の老後…ジジイになった時に一人で暮らすなんて絶対に嫌だと思ったから再婚した。

汚いジジイになって誰も相手にしなくなり、一人寂しく暮らすなんて余りにも惨め。

仕事柄、客商売が故に色々な人を観てきた、若い頃にブイブイ云わせた人や遊び捲った人ほど、その落差が激しい。

そんな人ほど…「俺は若い頃は…」と自慢話に花が咲く。

しかし薄汚いジジイになれば誰も相手にしてくれず、なまじ金があって相手にしてくれても、一人になれば却って寂しさは募る。

だがクソ婆であれ伴侶がいて、子供達に囲まれていれば心の安らぎはある。

先妻を亡くし、先妻の子供達とだけで数年暮して、妻のいない寂しさを身に染みて味わった。

フィリピン人妻と一緒になり、先妻の子やフィリピン人妻の連れ子、フィリピン人妻との間に出来た子で、7人もの子持ちになってしまったが(爆)

私自身は一人っ子なので、或る意味で子供達が兄弟姉妹の多い暮らしなんてのはカルチャーショックである(笑)

しかし先妻を失って子供達と暮らした数年間で、家族の結び付きは強くなり、また新しい妻(子供達には母)を迎え入れ、新しい家族が増えて更に結び付きは強くなった。

寂しさなんてのは何処かに消えてしまい、喧騒と猥雑なる日々。

子供達が大きくなるに連れ私は老いてゆく、その分だけ子供達は私に優しくなっていく。

再婚した時にエレメンタリの二年生だった嫁さんの長男、今はカレッジに通う。

性格は穏やかで優しい、今は日本に遊びに来ているが、フィリピンでも日本でも私が重たい物などを持とうとすると直ぐに「パパ、僕がやるよ」と言う。

そんな時に、独り身で無くて良かったと…つくづく感ずる。

先妻の子は既に社会人、だが後の5人はまだ学生やら幼児。

まだまだ学費がかかるが、家族に囲まれているのは何事にも代えがたい。

私の店にも独身のスタッフが何人かいる、ずっと独身もいれば、離婚して独身もいる。

皆40代である、ご多分にもれず酒が好きだから居酒屋へはしょっちゅう行っている。

其れはまぁいいのだが、寂しくないのかと思い訊いてみた。

当初は、「寂しくなんかない、独り身の方が気楽だし」なんて言ってた。

仕事上での付き合いが深まるに連れ、本音が出てくる。

「休みの日に一人で部屋にポツンとしてると侘しいです」
「熱が出たりして寝込んでいると、このまま一人で死ぬのかな‥なんて思います」
「仕事して、飯食って、酒呑んで、俺の人生何なのかな‥なんて考えます」

そんな本音を訊いてると、先妻を亡くして絶望の淵に佇んだ頃の自分を思い出す。

今日も店のスタッフと連れ子への愛情の話しになった。

自分自身の血が繋がった子以上に可愛がれば、連れ子にも愛情が湧くし、相手も慕ってくれるよ……なんて話しをした。

スタッフには連れ子がいる人と一緒になるのも、一つの考え方だし、選択肢に入れてもいいんじゃないかな‥なんて話した。

独り身は身体が元気で、稼いでる内はいい。

しかし…身体は衰え、外見は汚ないジジイに成り果て、加齢臭も漂う様になる。

そうなってからでは総て遅きに失する。

まだ多少なりとも見映えがある時に、伴侶を見付けておかなきゃ末は一人寂しく孤独死か。

俺は生涯、独身貴族だぜ…なんて気取って言えるのも、精々50前半まで。

50も半ばを過ぎれば、寂しき老いぼれのガラクタが息をしてるだけ。

此れが現実だろうとつくづく思う。


独り身には世は厳しい。