初めての渡比はジェ〇ーの両親に御挨拶に伺う事も目的の一つだった。

ジェ〇ーの出身地はレイテ島のサザンレイテ州の小さな港町、一族が居住する町である。

セブパシにてフライト、約40分でタクロバンに到着、迎えには親父さんと男性3人が来ていた。

親父さんの第一印象は鷹の様な雰囲気、目付きが鋭く動きが非常に敏捷だ。

迎えのワンボックス車に乗せられる、前に男性が二人、真ん中の席に私とジェ〇ーが、後部座席に親父さんと男性一人が。

なんか囲まれてるなって感じで、山奥に拉致されそうな雰囲気のまま車はひた走る。

2時間半程レイテ島を南下しただろうか、深い谷の峠道が見えてきた、道は土砂崩れで跡形も無い、片側は地滑りしそうなドワ~ンとした山肌、右側は垂直に切り立った断崖、其処をガタガタと車は行く、生きた心地はしないがジェ〇ーも親父さんも全く平気、峠を越えた処でジェ〇ーが「もう直ぐ」と言った。

それにしても車は随分とスピードを出す、ガンガン走る。

後で聞いた話しだが、当時レイテ島の山岳部では山賊が出ており、私が日本から来るジェ〇ーのフィアンセという事で、ボディーガードを連れて迎えに来たとの事。

全員がGUNを隠し持ち不測の事態に対処する様にしていたとの事だった。

確かにそう言われてみれば、途中でトイレ休憩した時にも近くに寄り添う様にいたし、皆一様に目付きが悪かったもんな(笑)スピードを出したのも其の為との事、そんな事とは知らずに、呑気な日本人は景色を眺めては「閑かだな~」なんて呟くのだったが(笑)

その翌年に軍が入り掃討作戦を展開して山賊は消滅、今は誠に平和な街道になった。

田舎だったが道は殆ど舗装されていた、やがて道から外れ脇道へと車は入って行く。

ジェ〇ーは言う「周りのココナッツは全部パパの物だよ」

周辺は何処までもココナッツが繁茂していた、やがて親父さんの農園の規模を知り驚くのだが。

道をゆっくり進む、右手には小川が流れており、バハイがあちこち点在し静かな場所だった。

と‥前方に人集りが見えてきた、パッと見でも100人以上‥いや200人はいるだろう。

皆こちらを見ている、車が群衆に近づくと皆が車内を覗き込む。

人集りに囲まれながらゆっくりと車は進む、やがて白壁の平屋建てのバハイの前に車は着いた。

先ずはジェ〇ーが降りる、途端に群衆からどよめきが起き、やがて歓声が上がり村人から口々に「リン~」「リン~」と喚声が。

ジェ〇ーのニックネームが村人達から次々と喚声となって出てくる。

私も車を降りる、村人達は口々に歓迎の言葉を投げ掛ける、そして私の肩を叩いたりして歓迎の意を表す。

村人にもみくちゃにされながらジェ〇ーの生家に着く、ゲートには男達が立っており私が入るとゲートを閉じた。

バハイに上がると其処は12畳位のリビングになっており、男性や女性に子供達が所狭しと居並んでいた。