店に入って来るなり先輩はダミ声で私に叫んだ、「〇〇~今日はな~、可愛い子ちゃんを連れて来たぞ~」

先輩の後ろには二人のフィリピン人の娘が立っていた、先輩は店内の客などお構い無しに喋り続ける。

買い物客は何事かと目を向けるので、私は先輩と娘達をバックヤードに招き入れた。

発注用のストアコンピュータデスクに私が座り、先輩と娘達を横に座らせ話し始めた。

先輩は娘達を紹介し始めた、一人はどう観ても20歳になったかならないかの雰囲気(実は17歳であった)

もう一人は20代半ば位だろうか、実にキツい顔をしている。

若い方はニコニコしながら、たどたどしい日本語で話す。

もう一人は眠たそうな顔で話しもろくにしない、先輩と会話してるとアクビなんかしている。

何じゃコイツはと思った…。

その女性が、やがて私の再婚相手になるのだが(笑)

先輩は饒舌にフィリピンやタレント達の事を捲くし立てた、私はフンフンと聞いていたがチンプンカンプン。

それにしてもキツい顔してるな~と、アクビをする娘を見て思っていたのだが。

先輩はひとしきり話し終え、「コイツら面白いんや、今から飯でも食わしてやるつもりだ」と言い、彼女達を急かす様に立たせ、私には「また連絡すっからな出て来いよ」と言いながら店を出て行った。

そして数日後の22時頃だったろうか電話が鳴った、また先輩だと思いつつ出ると、「〇〇~今日は何が何でも出て来いよ、お前が来るまで待ってるぞ~」とガナリ立てたと思ったら、電話を切ってしまった。

再三再四の先輩の呼び出しに断り続ける訳にもいかず、仕方ない一回だけお付き合いで行くかと思い、店を深夜スタッフに任せ先輩が待つフィリピンパブに出かけた。

その店は駅前にあり一階には居酒屋とパスタ屋があり、二階と中二階がフィリピンパブだった。

先輩に言われたのは中二階にある店、真っ直ぐ伸びた階段を上がると踊り場になっており左側に通じる通路から入る感じになっていた。

おずおずと店の前まで行くと自動ドアになっており、中に入るとカウンターがあるフロアになっていた。

奥からはけたたましい音楽と笑い声が聞こえて来る、フロアには誰もいない。

あれっと思ったら、カウンターの袖から坊主頭の見るからにいかついやっチャン風のオッサンが「いらっしゃいませ~」と、顔に似合わぬ猫なで声を掛けて来た。