電波がないなら電波のある場所に行けば良い。そう考えたか~み~は取り敢えず尾根を目指した。それこそいつもの様に無理矢理斜面を直登するのだから、チャクラを大幅に削られる。
恐ろしいのはそのヌチャヌル度合いである!!
本来あるべき姿のふかふかの斜面は…ッッ!!
ローション坂48へと姿を変え…ッッ!!
か~み~をスリップ地獄へと嵌らせた!!
一方その頃だみやんボーイは…。ムレムレの湿気地獄の中、か~み~の到着があまりに遅すぎる為怒りがピークに達していた!!
以下は下山後に聞いたその時のやり取りである。
だみ「なぁ2740かみさん遅くね?待ってるのも疲れるよな~!」
2740「はぁ?おまえと付き合い長いけどか~み~さんの悪口だけは許せねぇわ。」
だみ「いや悪口じゃなくてさ…。」
2740「うるせぇ!俺は…俺はな!五年前の苦しかった時に助けてもらった恩があるんだ!」
ここで2740さんは下山しようとする。
だみ「待てよ!2740!恩って何だよ?」
2740「当時俺が会社をクビになって生活が困窮してた時に…俺にはこんな事しか出来ないけど…。って手料理を振る舞ってくれたんだ!しかも群馬から東京までわざわざ出向いてくれてだ!」
だみ「何その話!初耳だぞ。」
2740「あの時食べた…トリュフと生ハムのアンクルート、赤座海老のカダイフ巻き、鱸のグルノーブル風、黒毛和牛フィレ肉のウェリントンを俺は忘れない!いや!忘れちゃならねぇ!」
そう言い残し…彼は一人下山した!!
幼馴染みを捨て!命の恩人を取った彼の行動は…決して間違ってはいなかったのだ!!
見よ!この誇らしい後ろ姿を!
私は未だかつてここまで背中で語る男の姿…否…ッッ!!
漢~ヲトコ~の姿を見た事がない!!
事実!この行動がか~み~の心に響き…。生涯忘れ得ぬ思い出として深く心に刻まれたのだから…。
そんなやり取りと同時刻ぐらいに、か~み~は尾根に到着。何と!そこで木に巻きつけられたワイヤーを発見。索道のワイヤーかと思ったら、どうやら林業用らしい。
ここで一度電波が確認出来た。すかさずLINEを飛ばす。しばらく待っても既読はつかない。やはり二人のいる所は圏外なのだ。
そこから下山に向けてひたすら斜面を下った。人が歩いた痕跡は全くなかったが…もうこのルートで戻る以外道はなかった。
前半はクマザサ密集地帯だったのが、この付近ではシダ植物群生地となって雰囲気が一変する。
藪も深くて高く、恐ろしい事に虫や蛇のエンカウント率が一気に上昇して泣きそうになる。