あな楽しあな恐ろし。 | まいちょいす。

あな楽しあな恐ろし。

読了
浅田次郎 【あやしうらめしあなかなし】


双葉社 2006年 06月



うーん、面白かった。短中編7作品。一気読みでした。

浅田さんすごいなぁ。あらためて好きになりました。皆川博子
さんのお話しの中で味わう浮遊感と異なるし、行間にぎっしりと
オドロオドロしさが織込まれる京極夏彦さんとももちろん違う。
これそ正統派の奇譚か。やはり文章力なのだろうか。
語彙がどうのこうのとは、次元が違います。


帯の推薦文って、過ぎる物言いが多いのですが、「幽」編集長の
東さんのメッセージに偽りなし。

「読むほどに、じんわり、ほろりと心が満たされ、

 忘れかけていた懐かしい記憶が、はらりと蘇る。

 文学の極意は怪談にあり、という言葉を、

 本書ほど美事に体現した書物をわたしはほかに知らない。」




「骨の来歴」もいいけれど、「昔の男」がお気に入りとなります。
林くんと偶然に見かけた婦長と紳士。それは主人公の未来、彼女
自身の姿だったのではないだろうか。時代をさかのぼりすぎない
小説のほうがリアル感が増すことも事実。
医療関係の方はより一層、楽しめるかもしれないですね。


怪談としては「客人(まろうど)」。一見客として暖簾をくぐる主人
公は、女将と意気投合。あ、こりゃおかしいよねと気がついてしまう
けれどぐいぐいと引っ張られます。主人公は「おかえりなさい」と
迎えてくれた彼女を受け入れたのだろうか。
耳無しほういち、牡丹灯篭、そんな物語りも蘇りました。
(でも、ラップ音や霊の賑やかしは無くてもよかったかなぁ...)


久しぶりに小説を読んで目頭を熱くした「縁別離」。
これも秀作。戦中と現代のタイムラグが、生人と死者のハザマが、
悲しくも切ない。それでも人は生を連ね、時を重ねていく。


最後は「お狐様の話」。
ありがちな寝かしつけの怖いお話しから幻妖世界が広がります。
「客人」と並ぶ怪談は、八百万の神を祀る日本国への浅田さん自身
の憧憬であろうし、忘れてはならない神々が宿る大自然への畏怖心。
ヒトは神さまといっしょに暮らしているのだと思わせる作品でした。



浅田さんのお話しがお嫌いでなければ
是非におススメしたい一冊となります。


 文芸エンタメ、最高 (^O^)/