結末をそのまま書くようなネタバレはしませんが。
この作品は余計な前情報無しに初見を楽しんだ方が絶対におもしろいので、まだ舞台を見てない方は、読まない方がいいと思います。・・・といっても、いつ再演されるかは分かりませんが。
あと、ここに訪れてくださる方々はご存知だとは思いますが、私は濱田めぐみファンですので、めぐさんに偏った感想しか書けませんのでご容赦ください。
あとは自己責任でお願いします。
2021年1月28日(木)マチネ
日生劇場
紆余曲折あり、ようやく上演された「イリュージョニスト」。
コンサートバージョンに演出変更し、上演日程も3日間に絞り、緊急事態宣言発令のため客席数も50%に減らされ。
素人目に見ても大赤字だろうに。
それでも今、世に産み出さなければという強い思いが伝わってきました。
きっと知り合いも何人か観劇に来ているんだろうけど、顔を合わせれば喋りたくなってしまうので、あえて探さない。
「♪下〜向け〜目を合わすな〜」とレミゼのオープニングを心の中で歌いながら着席。
本公演では入場者全員にプログラムが配られます。
B5サイズ、32ページとコンパクトですが、写真が素敵ですし、対談も載ってます。
席でプログラムを読んでるうちに、あっという間に開演時間。
めぐさん、序盤から登場します。
栗さんにでっかい本を手渡す。
なんか、グリンダにグリムリーを渡すエルファバに見えてきてしまう。♪あなたなら、できるはず〜
めぐジーガの始めの衣装は、アリスの帽子屋のような。シルエットはロングドレスだけど中はパンツスタイル。
オペラ座のマダムジリーのような杖を持ってます。
何しろ1回しか観劇のチャンスがありませんでしたので、順不同ですが、以下、書きたいことだけ書き連ねたいと思います。
ジーガのソロナンバー「嘘の世界で」。
これがですね、本当に私好みの「めぐ節」でして。
メリーポピンズとかクリスティーヌとかファンティーヌとか、きれいめの柔らかいめぐさんの歌声ももちろんいいんですけど。
他の人には真似できないような、地面が震えるような、ビンビン鳴るあのパワフルな歌声。
そう!これが聴きたかった!!
久しぶりに、舞台の上で役として存在しているめぐさんの姿を見て、もうすでに涙が・・・
オペラグラス必須の後方席で、マスクも着用してるので、顔面水害レベル。
歌が終わってセリフが入ります。
コンサートバージョンですが、セリフはカットしてないそうです。
始めの歌の時は、ジーガは怖そう?冷たそう?かと思ってたけど、喋り始めるとそうでもない。
興行主という役柄だけど、金の猛者ってわけでもない。
次のシーンのジーガは、男装(燕尾服のような)で短髪で登場。
暗がりの中で杖持った人が出てきたから、めぐさんかと思ったけど、シルエットが男性ぽかったから違うと思い、他の所を見ていて・・・照明が当ったら顔がめぐさんで慌ててオペラグラス構えたよね。
この後のジーガも、男性的な服装で登場。ジーガが男装をするのは、何やら深い過去がありそうな感じですが・・・そこは今作品では語られませんでした。
アイゼンハイムとソフィの過去も、サラッと回想シーンがあっただけだし、ジーガとアイゼンハイムがどう出逢ったかとか、どうして一緒にいるのかとか・・・
たぶん、裏設定はあるんでしょうけどね。
気になる。
中盤あたりで、トランプをシャッフルしながら出てくるジーガ。
ここのスーツ姿もカッコよかった✨
マンマ・ミーアのめぐドナを思い出しました。「Money money money いいわね 金持ちは」って感じで。
トランプと言えば、アリスもマーダーバラッドも頭をよぎりますが。
ソフィの遺体が発見されてバタバタしてるシーンは、ジキル&ハイドの「事件!事件!」みたいでした。
途中でネリーが出てきて「あんな血の海、見たことないわ〜!」って言って去って行っても、たぶん違和感ない。
ソフィ殺しの容疑をかけられ、墓地?に身を隠すアイゼンハイムとジーガ。
「生き埋めにされるって、こんな感じかしら?」的なセリフを、めぐさんに言わせるのは当て書きですかね?
たぶん1000回以上エジプトの砂の下に埋められた経験を持つ役者は世界でも稀だと思うんですけど。
四季時代からのめぐファンはきっと脳内ツッコミ入れたはず。
落胆しているアイゼンハイムを励まそうとするジーガの歌。「さぁ、吸って、吐いて。私の手を取り立ち上がるのよ」的な内容を、優しく、深い声で語りかける。
あぁ、ここ!!スマホに録音して、落ち込んだ時にハードリピートしたい!!!
ずっと一緒にやってきたジーガとアイゼンハイムが仲違いして、「解ったよ!信じた私がバカだった!!」とジーガがブチ切れながら歌う曲があります。
あれ、難しそうですね。
人間ってガチギレた時には、むしろ言葉が出ないもんだと思うんです。
もしくは雄叫びが出るか。
でも、曲作っちゃったし、歌詞付いちゃってるから訳さなきゃ、、、みたいな感じて言葉を詰め込んだような違和感がありました(注:個人の感想です)。
「とりあえず、言葉の意味は拾いきれなかったけど、めっちゃ怒ってるってことだけは了解しました。じゃ、次行ってみよう。」←私の心の声。
めぐさんのやる役でこういう気持ちになるのって、私にとってはレアケース。他の役者さんにはしばしば感じることだけど。
めぐさんのナンバーが多いのは嬉しいし、ガチギレして我鳴ってる姿は貴重ではあるのですが・・・
ここはちょっと不完全燃焼。
回数観ると慣れちゃって、それがスタンダードになるのかもしれないけど。
ところでこの仲違い、アイゼンハイムが優しさからジーガとの距離を置こうとして仕組んだのではないかと私は感じたのですが(終演後にね)。読み過ぎでしょうか。
ウール警部(栗さん)の歌う「疑い」。
これ、本当に難曲。
とにかく言葉が多い。
音程は単調そうでいて取りにくそうでもある。
正解がわからない。楽譜見せて欲しい。
「何が嘘で、何が真実か」というこの作品の大テーマをそのまま音にしたような歌でした。
今回、休憩無しの1時間45分の公演でした。
途中で時計を見るわけでもないので、今、作品全体のどの辺りにいるのかよくわからない状態で鑑賞を続けるわけです。
なんとなく、これ1幕ラストっぽい?って盛り上がりを感じないこともないけど、確信はない。
で、だいぶ話が進んで、まだ事の顛末はわからないんだけど、「これで幕切れ」とアイゼンハイムが歌いだす。
おぅ?そろそろ終わるのかい?まだオチは全然見えないけどな!
幕切れって言われると、もう終わるのかと思うけど、これはラストショーの前の歌なんですね。
ショーの前に楽屋でジーガとアイゼンハイムの和解。
はい、私、なぜかここで大泣きしました。
コンサートバージョンとはいえ、ここはガッツリ芝居でした。
で、やや色々あり、ほんとに本当の最後の僅かな時間で、今まで散りばめられていたピースがパタパタとすごい勢いで繋がり、フィナーレ。
この鮮やかさは、まさに圧巻のイリュージョン。
最後まで観終わった後に、もう一回、頭からお願いします!!って言いたくなるような作品でした。
あれ、あそこはどうなってた?あの時あの人はどんな表情してたんだろう?と確認したくなることがたくさん。
普通ならトリックが解ってしまったら二度目は面白くないかもしれないけど、これは結末を全部知った上で、もう一度騙されたいと思ってしまう。
作品の中で、アイゼンハイムが霊をこの世に呼び戻すシーンがありました。
春馬君も降りてきてるかなぁ。
彼だったらどんなアイゼンハイムを生み出しただろう。
キンキーブーツ以外は、テレビでしか見たことがないのですが。
ラストシーンのアイゼンハイムの笑顔の横顔が、春馬くんに見えました。
ここまで全然触れて来ませんでしたが、皇太子の成河さん。素晴らしかった。
かなりわかりやすく嫌われ役の空気を出していたけど、あの役を海宝くんがやったら、また違う感じになっていたのでしょうか。
今回、公演期間短いからいいけど、ロングだとメンタル的に大変そうな役だと思いました。
なんと言っても一番メンタルやられそうなのはウール警部でしょうけど。
あの後、ジャベールのように川に身投げしないといいのですが。
ジーガは、きっとどこに行っても生きて行けそうです。
どこかでコニーアイランドでも作ってるかもしれませんね。
緊急事態宣言中のため、客席数は50%制限。
でも、S席はほぼ1階に集中で2階席はガラガラというバランスの悪さ。
そして1階席の中でもなぜか下手側に片寄ってる。
これ、飛行機の座席だったら、絶対に傾いて真っ直ぐ飛べないやつ。
っていうか、そもそも客席数50%にする意味ある?みんな喋らないし、マスクしてるし。
演劇とか飲食店とかを槍玉に上げて、政府はコロナ対策感を出しているけれど、果たしてそれは真実なのか?
作品の中で(プログラムの対談にもあったけど)、「人々が秩序を持って暮らすのは、人々が秩序は存在すると思い込んでいるからだ」と。
何が真実で、何が嘘なのか。
正しいとされていることが、果して真実なのか。
この作品は、もともと真実とは何かを問いかける作品だとは思うけど、このコロナ禍において、その問いかけはすごく重く心に響きました。
まさにイリュージョンのような、幻の3日間。
このまま幻として消えてしまわないように。
今回観られなかったお客さんにも観てもらえるように。
いつか完全な形の「イリュージョニスト」を観られる日を願っています。