幼馴染っていうほど幼少期からの仲ではないんだろうだけど、御幸と成宮は昔からの野球友だち。その2人の対戦2巡目。夏の西東京大会決勝。
成宮はさっきから、自慢のチェンジアップを春市にゴロにされるし、倉持には三塁に進まれるし、白州をデッドボールにしたりで、踏んだり蹴ったりの大ピンチ!もともと自己制御力がない上、劣勢になることに慣れていないので、頭にきちゃってる。ムキ―。
1学年後輩のキャッチャー多田野が、落ち着かせに行った。
あーあ、成宮マウンドで大声出しちゃって。御幸のところからも、まる聞こえ。観客ザワついてるし、そこまで聞こえてるのかもしれない。まるでモラハラ夫。女房役の多田野は、恥ずかしいだろう、気の毒。(成宮こんななのに、プロ野球からお誘いかかるの?無理でしょ)
成宮相手に後輩捕手じゃあ無理。
1年前は先輩捕手の原田がいたから、西東京大会決勝で青道を倒し、甲子園で準優勝できたんだろうな。
御幸は「そう簡単に冷めてくれるなよ」と、敵の不幸を願う。
冷たい奴。腹黒い。でも勝負には必要な考え方。
まあ、試合以外でもそっけない奴だよね。
一方の成宮は、感情垂れ流しで周囲には迷惑だけど、人間味がある。
ところで、「にゃんぱらり」、ググったらほんとに出てきました。
御幸と対峙する成宮は、出会った時のことを思い出す。
「あんなきれいに打ち返された」って言う成宮はとても率直。
出会った時から、御幸は成宮を翻弄していた。精神年齢は成宮よりずっと上。頭もいいけど、母親がいなくて苦労して育ったんだろう。警戒癖が付いてるのか、自分の本心を表に出さない。ひねくれてる。
…あ、そうか。だから沢村は降谷にあんなに焼き餅を焼いていたのか!準決勝後の夜、御幸が自分の強いプロ入り願望という本音を降谷に漏らしたのを、沢村が立ち聞きした時。沢村も、御幸の本心を話してもらいたかったんだ。
それでも御幸は青道で、バリアを自分から外して仲間と打ち解けたこともあった。自分の負傷を隠して戦った試合の直後。自分の弱さを倉持・前園にさらけ出した。あれは良かった。
倉持も前園もバリアをものともせず突っ込んでくる。最初はケンカをしたけど、御幸との相性は良さそう。他の3年生も積極的に支えてくれる。手塩にかけてきた下級生の投手もすくすく育っている。そう、御幸は青道で幸せなんだ。
その辺が成宮は違う。
成宮は稲実で孤独だ。自分で撒いた種なんだけど。
だからなのか、いまだに御幸に未練たらたらの様子。
自分を振った御幸が忘れられない。決勝の試合中にこうやって回想シーンが挿入されるくらいに。多田野が側にいて献身的に尽くしてくれているのに、下級生では物足りない。自分の思い描く理想に、とことんこだわる。
成宮は、大人びていて気の強い御幸を、自分の「理想のチーム」の精神的柱にしたかったのかもしれない。御幸は成宮にないものを持っている。自分の欠点を叱ったり補ったりしてくれそうだ。野球の能力も傑出している。だから一緒に稲実に進学しようと誘った。でも御幸はその場で即、断った。人のハートを壊す罪な男、御幸。これについては以前のブログ記事にも書きました。 https://ameblo.jp/largelatte/entry-12745165236.html
一方の御幸にとって成宮は、たまに会う野球の友としては、そのスーパー単刀直入な性格が魅力だったのだろうと思う。御幸にはないものを持ってる。
そして、成宮の強くこだわる性格も魅力だろう。自分の欲望、「こうあるべき」に、とことんこだわるから、努力をいとわない。そうやってどんどん進化していく。野球に関してはね。自分の人格には無頓着。
一度、御幸視点での回想シーンも見てみたいなあ。…御幸の回想シーンなんて今まであったっけ?
連載281話に載った2人の出会いの回想シーン、コミックスにはだいぶ前に「おまけ」として載っていました。コミックスには、こういう特典もある。
試合に戻ります。
ピッチャー成宮vsバッター御幸。最初の2球は成宮が優勢だった。
3球目、低め変化球らしきボールを、キャッチャー多田野が取りこぼした。
それを見たランナー白州、一塁から二塁へ走った。多田野が二塁に送球する時間はなかった。白州の盗塁成功。これでゲッツーの可能性は小さくなった。
「すみません」と謝る多田野。成宮は「関係ねーよ。バットに当てさせなきゃいーんだろ」と、とっても頼もしい表情で応えた。---多田野のエラーをきっかけに、冷静さを取り戻したようだ。
自分1人で頑張って、この試合に勝つんだ、という覚悟を決めたのかもしれない。
だから多田野のエラーは「関係ねーよ」。自分が頑張りさえすれば、勝てる。
ピンチにひとり懸命に踏ん張る成宮が愛おしく感じられてきたよ。
だんだんと成宮1人vs青道9人の戦いになっていくのかなあ。
バッター御幸に対して稲実内野は前進守備。1点もやらないつもり。それを見た御幸は「しめしめ」、内野の頭を越えてやろう、と考えてる可能性あり。
御幸の実家でテレビ観戦をしているのは、御幸パパ。後ろ姿だけ描かれている。がっしりした体型。御幸もその遺伝子を受け継いでいるようで。
御幸パパは回想する。
中学3年生の御幸一也「俺、青道に行きたい。強いチームで凄い人たちと野球やってみたい。で、いつかは・・」
パパ「稲実じゃないんだ?」
一也「いーの!子供にだって、いろんな事情があるの!」
中3とは思えない、マセた返答。
「強いチームで凄い人たちと」ということは、滝川クリスや結城哲也たちが活躍し始めた頃なんでしょうか。
パパが「稲実じゃないんだ」と言ったのは、青道が何年も甲子園から遠ざかっていたからでしょうかね。
「で、いつかは」プロ野球選手になりたいと、中学の頃から考えていた!!!
御幸と向かい合い、成宮は思う「お互い・・背負うものが多くなったーー」。
成宮はエースピッチャーとして。
御幸は4番・正捕手・キャプテンとして。
チームを背負う。
…あの〜、これって、御幸の方が3倍多く背負ってるように思えるんですけど…
成宮「はっきりさせようぜ。どちらの覚悟が強いのか」
成宮は自分がエースピッチャーであることだけに特化してるのであって、背負ってるものの重さは御幸には負けてない、と思ってるのでしょう。
なんせ稲実の勝敗は自分次第なんですから(本人そう思ってるようです)。
弱冠18歳にして、真剣にぶつかり合う。
いいなあ。
ボールを待つ御幸「決めるならチェンジアップ。そうだろ鳴」。
成宮は決め球チェンジアップを投げてくると、御幸は予想している。
ストーリーは282話に続きます。
今回のブログを書いていて気づいた。この決勝には御幸にハートをめちゃくちゃに壊された男が2人いる。成宮と沢村(BLではない)。成宮はその恨みを投球エネルギーにしているけど、沢村は…大丈夫かね?
この稲実戦が、三高戦のように熱くならないのは、そこはかとなく切なさが漂う戦いだからだと思う。成宮と沢村の2人だけではない。他にも切ない男たちがぞろぞろと…。