フェルメールからのラブレター展 [2] | Lapislazuliのブログ

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今夜も昨日に引き続き手紙フェルメールからのラブレター展
『寓意』のキーワードを大切にしながら、ご紹介してゆきたいと思いますキラキラ

図録ではテーマ3が【職業上の、あるいは学術的コミュニケーション】、
4が【手紙を通したコミュニケーション】となっており
京都市美術館では順番通りの展示をされていたことが
妹が図録とともに送ってくれた出展作品目録のしおりからわかるのですが
東京は会場構成の条件からか、テーマの3と4が入れ替わった展示順序となっておりました。
また2作品(作品No.30,36)が東京には来ていなかったことは少し残念ぐすん。

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今夜の記事は展覧順と図録に準じて、テーマ3と4の数字が入れ替わっておりますaya
また京都と東京ではチケットのデザインが違うのもちょっと不思議な気がしました?おまめ

【4.手紙を通したコミュニケーション】

17世紀のオランダはヨーロッパの中でも識字率は60%と高く、出版の主要な中心地であるとともに
郵便制度の確立によって、手紙のやりとりが急速に増えた地域でした。

当初、公的な布告や商業上の情報発信が主だった手紙は、
蝋封を用いることで個人文書のやりとりが可能になりましたスタンプ
人々は自分の思いや考えをまとめてしたため相手に伝えることのできる『手紙を書く』ことに夢中になりました書く

またこの頃オランダでは、家に絵画を飾る習慣が流行っていました家
一般庶民や農民は蚤の市で絵を買い、裕福層は画家に絵を依頼しました。
この展覧会の絵で、例えば教会に飾られていた宗教画のように大きなものがないのは
依頼者が部屋に飾るというニーズに応えたものであり、
一般的にフェルメールの絵が小さいのもそれが理由と考えられています。

展覧会場中央に位置する5~7枚の絵を飾れそうな3枚の壁の空間に
この展覧会の主役のフェルメールの作品がひとつの壁に1枚ずつ展示されていました。

向かって右にヨハネス・フェルメール【手紙を書く女】45.0×39.9㎝ ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵

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この絵については過去にも2度ほど書いておりますので簡単にあはは。。。

背景の壁にかかっている画中画にはヴィオラ・ダ・ガンバチェロ
ヘッド部分に人の顔の彫刻があるヨーロッパの古い時代の弓奏楽器で、
ヴィオラやチェロのように脚に挟んで演奏する楽器。
「音楽」は愛と調和の類義語で「楽器」はその寓意であることから、
彼女が恋人への手紙を書いていることが読み取れますハート

かわいいサテンの髪飾りやテーブルに置かれた真珠が、
「手紙を書く」という行為を一層輝かせていますきらきら!!

次に修復作業を終えて制作当時の色が蘇り世界初公開となった、この展覧会の目玉の作品きらきら
ヨハネス・フェルメール【手紙を読む青衣の女】46.6×38.7cm アムステルダム国立美術館所蔵

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椅子に座る時間をも惜しむかのように、窓があると思われる明るい方を向いて
女性が手紙を立って読んでいます。口が少し開いている様子は、私には笑みに見えますが音読中との説もあります。

壁に掛けられたオランダの地図ですが、「地図」は愛する人の不在を示す寓意です。
離れて暮らす恋人からの手紙であることを、フェルメールは教えてくれているのですきらきら

ゴッホは弟・テオに宛てて、「君はフェルメールという画家を知っているかい?
今日僕は、とても美しい身重のオランダ婦人の絵を観たんだよ。」という手紙を残しています。
ゴッホもこの絵の前に立ったことに想いを馳せることができるのも、この絵の魅力なのですひまわり

この女性が妊婦なのか、当時流行していた3枚重ねのスカートゆえのふくよかさなのかはわかっていませんが
フェルメールの遺産目録には、『手紙を書く女』ほか6点に登場する絹とアーミンの毛皮を使った高級な黄色いガウンと
『手紙を読む青衣の女』が来ている両袖と襟元に3つリボンのあしらわれたインディゴ染めの服が実際にありました。
それを考えると、女性は3枚重ねのスカートを穿いていた可能性が高いのでは…と私は思っていますニコニコ

この絵の修復は、アムステルダム国立美術館の長年の願いだったそうです。
黄ばんだワニス、変色した過去の修復や行き過ぎた処置、無数の小さな剥落…。
美術館は専門家を集めた諮問委員会を設置し、2010年から約2年かけて修復作業を経て、
フェルメールが描いた当時の色を取り戻していますハート。

また、以前にも書きましたが、現在アムステルダム国立美術館は大幅に遅れて改修工事の最中ですキケン
改装中に絵画が貸し出しされる場合は、絵の管理の委託を含めた「出稼ぎ」という要素もあったりネえへ♪エヘ

左の壁に、ヨハネス・フェルメール【手紙を書く女と召使い】71.1×60.5cm アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

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この絵も2008年のフェルメール展ほか、この展覧会の告知や
フェルメール盗難事件を美術関連記事のテーマで書きましたえんぴつ

このシーンになる前の部屋では、女主人が大変取り乱したことが
くちゃくちゃにされた手紙と封蝋が床に落ちていることからわかります。
愛する人から別れを告げられたのかもしれません。
手紙を書き終わることを召使が外を見ながら待っています。

後ろの壁の画中画は「モーセの発見」。人の心を鎮めるための寓意と解釈されていたこの絵を
フェルメールは背景に描くことで、彼女が手紙を書きながら自省の時を過ごしていることを教えてくれています。
彼女の出した結論の内容は分からないけれど、心を開き新たな出発を決めたシーンなのです。

このブースできれいだなぁと見とれたのがこちらの作品
フランス・ファン・ミーリス(1世)【手紙を書く女】25.0×19.5㎝ アムステルダム国立美術館所蔵

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日本の着物に似せた上質な絹のヤポンス・ロックをまとった高貴な女性が手紙を書いています。
その奥の陰では召使と思しき男性が、手紙を書き終わることを待っています。
光と影は陽光そのもののほかにも、立場や地位の表現や人間の陰の部分の表現もしていました。

机の上にある楽器は「リュート」で愛のシンボルで、和音の二重奏を奏でる愛の寓意でした。
「犬」は忠実の寓意ですが、よく描かれている「スパニエル」は忠節と愛を表現しています。
あなたが手紙やメールの最後に犬のシールを貼ったり、絵文字を添えれば秘密のメッセージが送れますむふっ。ハート

そしてひとつだけ全く違う雰囲気だったけどとても惹かれてポストカードまで買ったのが
エドワールト・コリエル【レター・ラック】43.2×52.1㎝ 個人蔵

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革のベルトの上段左から新聞、取っ手が骨製のレターオープナー、羽根ペン
大きな蝋封のついたたたまれた書類、未開封の書簡、黒い蝋封のあけられた書簡
蝋封用の赤いろうそく、青いリボンのついた印鑑、青銅の印鑑、たたんだ書類

光と影で質感を明確に表現し、立体感まで感じる遊び心がたっぷり♪
当初は額装されておらず、壁にそのままだまし絵のように飾られていたそうです。

フェルメールの時代において「手紙を書くこと」は、芸術の形式のひとつでもありました。
私的な手紙のやりとりが電子メールへと移った現代、手紙を書くことや読む姿の美しさを改めて感じるとともに、
黄金時代の巨匠たちが、その姿をいかに探究していたのかを伝えてくれているのですきらきら

【3.職業上の、あるいは学術的コミュニケーション】

商業国オランダにおいての読み書きの能力は大変重要なものでした。
弁護士・公証人、著述家の場面や、伝統的なテーマの書斎の学者像のブース。

弁護士や公証人やその依頼人は風刺画的な要素があってテーマ1とかぶる面もあったけれど
リアリティやインテリジェンスを感じる絵に惹かれました。

左のヘリッド・ダウ【羽根ペンを削る学者】24.1×22.5㎝ 個人蔵 ニューヨーク
右はフェルディナント・ボル【本を持つ男】85.1×69.9㎝ 個人蔵 ニューヨーク

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ヘリッド・ダウ【執筆を妨げられた学者】26.2×21.0㎝ 個人蔵 ニューヨーク

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一番すごいなぁと思ったのがこちらの6角形だったかな?の額縁に入った小さな絵。
上左の作品と対なんじゃないかな?と思いましたし、和傘があるのが面白いなと。

テーブルの上の「本」や「地球儀」は、知識と世界的探求の象徴で
「砂時計」と「頭蓋骨」は、時が過ぎ去ることと存在の儚さを示唆しています。

また、本のしおりに見える紙片には“Gdou”とダウの署名があり、
歴史のなかで自分が占める時間は一瞬に過ぎずとも、
芸術は永遠に続くことを絵の中にメッセージを込めたと考えられています。

『寓意』を知ることにより、絵画は隠されたメッセージを雄弁に語ることを感じた展覧会でした。
当時のオランダ人同様、寓意や象徴をもっと知りたいと思うきっかけになりましたしメモ
絵画のみならず、日常生活においても、隠れたメッセージをしっかり見逃さない人になりたいと思いましたキラキラ☆

この時代の展覧会に出掛けると、本人の作品が来ていなくても、来ていればなおさら、
強く強くその存在感を感じずにはいられない画家がいます。
レンブラント・ファン・レインキラキラ

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こちらはマウリッツハイス美術館所蔵の本人最後の自画像。
(この展覧会に来日している絵ではありません)

レンブラントの絵の前に立つと、その気迫と崇高さで近寄りがたいオーラを感じます。
ヘリッド・ダウは彼の弟子でしたし、ほかの画家で師事した人も、孫弟子にあたる画家の絵も
この展覧会では見ることができます。
画家の個性や表現の違いはあっても、彼のエッセンスをこの時代の画家すべてに感じるのです。

オランダの黄金時代は、徐々に翳りを見せ始めることになります。
オランダ人たちは今でも「あの頃はすごかったわね!」と思い出話のように話すとか。。。

ヘリッド・ダウのメッセージのそのものに、21世紀になっても輝き続ける17世紀のオランダ絵画オランダ
光と影の表現を極めたレンブラントが、今もその頂点に君臨し続けていることを想うのですkirakira

2日間に渡る長い記事に、最後までお付き合い頂きましてありがとうございましたはぁとaya