◎神宮大麻の歴史(じんぐうたいまのれきし)
もともと、神宮は国によって運営されていました。それゆえ、神宮は私幣禁断(しへいきんだん)といって、個人的な祈願を受け付けない国家的な神社でした。しかし、政治制度の変化などにともない、武士をはじめとする全国の様々な人々の崇敬心を高め、神宮への援助を集めるようになりました。この活動をになった御師(おんし)とよばれる下級神職は、伊勢の土産(みやげ)とともに神宮大麻(じんぐうたいま)を全国の人々に配り、伊勢の信仰を広めることとなりました。中世を通じて御師の活動がなされ、さらに近世にいたっては御師の数はふくれ上がり、その対象とする地域も全国各地に及びました。その中で、神宮大麻も多く配られたのです。それぞれの御師名が入った古い神宮大麻が、現在も色々な所に残っています。明治になって神宮大麻は国の機関である神戸署(かんべしょ)から、出されるようになり、その形式も統一されたものとなりました。
【参考文献】
「大麻」「神宮大麻」(宮地直一・佐伯有義監修『神道大辞典』平凡社、昭和十二年)
鈴木義一「神宮大麻」(安津素彦・梅田義彦監修『神道辞典』堀書店、昭和四十三年)
中西正幸「神宮大麻」(國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂、平成六年)
中西正幸『神宮大麻の歴史と意義』(神社本庁、平成十年)
神社本庁編『神宮大麻・暦についてQ&A』(神社本庁、平成十年)
矢野憲一「神宮大麻」(薗田稔・橋本政宣編『神道史大辞典』吉川弘文館、平成十六年)
神社本庁教学研究室監修『神道いろは―神社とまつりの基礎知識―』(神社新報社、平成十六年)