◎幣帛
神様に奉る布帛を「幣帛(へいはく/みてぐら)」といいます。平安中期の法律『延喜式』には各地の神社に奉る幣帛として、麻や絹などの布類、衣服、武器、器具、農水産物、鉱物、動物など様々な品目が挙げられています。この内、神様のお食事となるものを除いた奉り物を、特に幣帛と呼ぶ場合もあります。古い文献では、天皇から神に奉る物を特に幣帛とよんでいました。神宮では今でも、神嘗祭など重要なお祭りに天皇から使いが送られ、柳筥(やないばこ)に納められた白絹、錦、麻などが奉納されます。なお、実物に代えて金銭を神様に奉る場合は幣帛料といいます。現在、各神社の例祭に神社本庁より送られる本庁幣も、幣帛料となっています。また、金銀あるいは白色、五色の紙を竹または木の幣串に挟み、神前の装飾や、御祓いの道具、神の依りつくものとして様々に使われる御幣も幣帛の一種です。布を奉る場合、串に挟んで奉った古い慣習のなごりといいます。
【参考文献】
柳田国男『日本の祭』 弘文堂書房 昭和一七年
河野省三「たまぐし玉串(玉籤)」 國學院大學日本文化研究所編『神道要語集』祭祀篇一、神道文化会、昭和四十九年
谷省吾『祭祀と思想―神道の祈り―』 国書刊行会 昭和六〇年
神社本庁教学研究室監修『神道いろは―神社とまつりの基礎知識―』 神社新報社 平成十六年
本澤雅史『祝詞の研究』弘文堂 平成十八年