◎垣(かき)
建物や敷地などの周囲を区切るために、囲むように作られた工作物や植えられた植物を垣(かき)といいます。材料や形式によって多くの種類に分けられます。塀も築垣(ついがき)と呼ぶように垣の一種といえます。また柵も垣の一種であり、垣、塀、柵は混用されることも多いようです。また、二重三重に囲む垣は、一般的に内側を「瑞垣」(みずがき)とよび、外側を玉垣とか荒垣、板垣(いたがき)とよびます。例えば神宮の内宮正殿は四重の囲みがありますが、最も内側を「瑞垣」、中の二重の囲みを「玉垣」(たまがき)、外側を「板垣」とよびます。中世の絵巻物には先端を三角形にとがらせた厚板を縦にぎっしり並べた瑞垣が多くみられ、この形式が古来神社では非常に多く用いられたと考えられています。また、寺院建築の影響を受けて、上に屋根をかけたものもしだいに多く用いられるようになりました。これも瑞垣、玉垣、透塀(すきべい)などと呼ばれています。
○八雲立つ 出雲八十垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を(古事記・上巻)
◆いがき[斎垣]
○ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし 今は我が名の 惜しけくもなし(万葉集・巻十一・二六六三)
◆たまがき[玉垣] 玉は美称
○みもろに 築(つ)くや玉垣 斎(つ)き余し 誰(た)にかも依らむ 神の宮人(古事記、下巻、雄略天皇)
◆みづかき[瑞垣] 瑞々しい(常緑樹の?)垣-「久し」
○磯城(しき)瑞垣宮(崇神天皇の皇居・日本書紀)
○娘子(をとめ)らを 袖布留(ふる)山の 瑞垣の 久しき時ゆ 思ひけり我(あれ)は(万葉集・巻十一・二四一五)
【参考文献】
平井直房「瑞垣」(安津素彦・梅田義彦監修『神道辞典』堀書店、昭和四十三年)
岡田米夫「瑞垣・玉垣・板垣と廻廊」(『日本史小百科〈神社〉』東京堂出版、昭和五十二年)大河直躬「垣」(平凡社『世界大百科事典』平凡社、昭和六十三年)
井上順孝「玉垣」(國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂、平成六年)