花火大会にふさわしい、綺麗に晴れ上がった空。
やや風が強い日ではあるが、まだ暑さの厳しい時期だけに、それは涼しく吹き渡っていた。
集合場所は、北柏駅。
手賀沼花火大会の三会場のうち、柏会場が目的地である。
徹司が到着したのは、集合時間の5分ほど前。
改札を出ると、既に数人の姿が見える。
上山、西崎、紗千子が、おしゃべりに興じている。
近づいていく徹司にまず気付いたのが西崎。
そのまま西崎は、徹司の背後に視線をやる。
それにつられて徹司も振り向くと、朋子と麻弥が改札から出てきたところだった。
どうやら同じ電車だったらしい。
さらに数分待つ間に、涼子、後藤、古兼が到着し、最後に来たのは普段から遅刻の多い横石だった。
「全員そろったみたいだし、行こうか」
出発の合図を出したのは、北柏が地元の上山だった。
みんなでぞろぞろと歩き出す。
学校の外で、これだけの人数で集まるのは初めてのことだったせいか、みんなどことなくテンションが高めである。
その中でも一番のハイテンションの人物を挙げるとすると、後藤だろうか。
後藤の興奮度は、きっとアレだろうな、と、徹司は前方を歩く朋子を見やった。
朋子は、花火大会らしく、浴衣姿だった。
同学年の女の子の浴衣姿などまず目にする機会もないので、徹司の目には実に新鮮に映る。
後藤が興奮するのも無理はない。
一方で徹司は、自分でも意外なほど、冷静な目で朋子の姿を観察できていた。
先日の古兼と朋子との会話が、思った以上に自分自身の気持ちに影響をもたらしたようだ。
迷いのような気持ちが晴れている。
そして、その分――。
徹司は、紗千子と並んで話しながら歩いている、涼子の後姿を視界にとらえた。
涼子は、私服である。
普段から私服登校の大金高校だから、私服姿は目新しいものではなかったが。
涼子の着ている服は、徹司の記憶の中には無いものだった。
私服の中でも、通学用と、それ以外のプライベート用とで分けているのか。
それとも、普段あまり服装に興味のない徹司が見落としていただけなのか。
或いは――この日の為に新調したものなのか。
そんなことを考えた途端、徹司はなんだか急に恥ずかしくなった。
いかん、調子に乗るなよ――と、自分に言い聞かせる。