聞こえ始めたのは7月15日であった。

雅楽の笛の音が窓の外から響いてくる。
息の長い緩やかな音色がふたつ、絡み合いながら
それこそ雅に宙を舞っている。
昼日中の事である。

それは数日に一度、現在に至るまで続いている。

盂蘭盆(うらぼんえ)の行事は地域によって7月15日(中元)
なのだそうだが、近隣の神社で行われているのだろうか。
しかし、そろそろ十年此処に住んでいるが
このような笛の音が聞こえてきた事はない。
なによりここまで良く聞こえる程、近くに神社はないのだ。

笛の音は、日中1分から5分、一度だけ。
では、どこかの家より漏れる音楽なのであろうか。
しかし、この響きは屋内からのものとは違う。
明らかに屋外で演奏される音である。
そして感覚として、音の出所は二、三軒内の範囲で
しかも窓外の路上からと思われる。

時期が時期なだけに、これは妖しい出来事か!?
そう思っていた。


しかし、だ。


一昨日ふと気付いた。
ここ最近、マンション前の道路には工事が入っている。
機械のやかましい音にうんざりしているのだが・・
その騒音に混じって笛の音が響いてくる。
よくよく耳を傾けていると、雅な笛の音が次第に
機械から発せられるものに思えてきた。

これは圧搾空気の音ではあるまいか?
または、路面を切る摩擦音なのではあるまいか?
それらは二連構造の何かなのでは?

何となく合点がいった気がした。

聞こえ始めの7月15日には、まだ工事はなかったが
少し離れた場所から、こちらに向かって施工していたとは推測出来る。
高周波であるし、その音が届いていたのであろう。


それにしても

あれは美しい音を奏でる機械であった。

女司会者が巨大モニターを指しながら笑う

欠けた枠に謎を探して解答者が腕を競う

枠を入れ替え司会者は謎を深める

翻弄された若者達は右往左往

枠は窓へと姿を変え 私はそれを描き起こす

夜の街路に横たわる 旅館の窓を描き起こす


暗い廊下を仲居達が走る

障子の明かりが姿を映す

光へ 影へ 光へ 影へ

仲居の一人は母のようだ

他の仲居が陰口をたたく

「帳簿はあの人が握っているのよ

 だから此所はあの人のものさ」

私は窓を描き損じた 窓の数が足りてなかった

ちゃんと描けていると思った でも足りてなかった


小さな姪が話してる

「私が財産を引き継ぐの

 だから叔父さんは私にやさしいの」

私は黙って窓を消す

そんなものはいらない

金なんか欲しくない

私が笑うのはただ 君が家族だからだ


旅館の部屋に家族の寝床

みんな揃ったのは久しぶりだね

私は一人隣の小部屋

ふすまがみんなの顔を遮る

このままではお化けが出そうだ

顔が見えるよう ふすまを開ける


何故か母が怒っている

口さがない仲居達のせいか

妹が叱られている

「お前は何故働かないのか」

妹は結婚するんだよ 母さん


大音量で交響曲が流れている

「その音を消しなさい」

母の怒りは私に向かう

曲は私の目覚ましから流れ出る

東欧のオペラを思わせる

私も怒りを覚える

母の怒りがわからない

自分の怒りもわからない

怒って時計の電池を引き抜く

時は止まり 曲は消える


そして 意味もなく針を回す

目覚めの時に針を合わせる


さとルーヌス?i????URL??24??????????g?p????????B?jのブログ



草を刈りに狩り出される

建物の広い部屋は雑草で埋め尽くされている

沢山の草刈り人が並んでいる

番組の企画であろうかタレントの顔が見える


奥の小部屋を任された

邪魔なテーブルに乗って草をむしる

根が絡み付いて取り切れない

小分けされた一画が今日で終るかわからない

テーブルの下には薬瓶

除草剤なのか栄養剤なのか

部屋の断崖には自分がデザインした女の像が

荒いスチロールの平坦な女

誰がこれを作ったのだろう


うっかり踏んで断崖へ滑り落ちそうになった