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(元)無気力東大院生の不労生活

勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 伊藤邦武ほか(編著)『世界哲学史1 』を読了。

 

 これから8巻まで、「世界哲学史」を構想するというのだから壮大な取り組みである。
 第1巻は、哲学の誕生に関して、これまで「古代~」として取り上げられてきたテーマが各論者によって概説されるが、上手くまとめきれずに紙幅が尽きたと思ってしまう章が多かったように思う。
 スタートの巻としてはイマイチな気もするが、次巻以降は楽しみ。

 

 

 

 渡瀬裕哉『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』を読了。

 

 研究業績が欲しい研究者がアイデンティティの差を「発見」する。人の目を引きたいマスメディアがその「発見」を取り上げて「増幅」させる。その「増幅」を選挙活動に結びつけて得票につなげようとする政治家。それぞれは合理的な活動かもしれないが、結果としてアイデンティティによる分断が作り出され固定化される。
 特にアメリカから世界に向かって拡散されるアイデンティティの分断を鮮やかに描き出して見せた好著。
 後半はFacebookの「リブラ」や中国の「デジタル人民元」といった仮想通貨に話題は転じていくが、これが新たなアイデンティティの分断あるいは統合をもたらすものとして位置付けられている。
 現在起きていることから今後起きそうなことまで、類書にはない独自の視点から読み解く景気を与えてくれる。

 

 

 

 

 

 ウィリアム・パウンドストーン『世界を支配するベイスの定理 ―スパムメールの仕分けから人類の終焉までを予測する究極の方程式―』を読了。

 

 ベイズの定理を書いた本ではない。扱うテーマは終末論。
 終末までの時間を計算で予測できるのか否か。その計算に関わるところでベイズの定理にも言及されるが、正面からその解説があるわけでもない。
 著者パウンドストーンは、これまでも興味深いテーマの本を数々出版しており、この本もテーマ設定は良かったと思う。ただ、議論が飛びがち。果ては宇宙論まで言及される分野は多岐にわたる。部分部分で、もう少し結論のようなものを得てから、次に進んで欲しかった。
 
 結局最後の方で「〇〇年」という年数が提示されることになるが、このあたりの計算こそ、もう少し丁寧に論じられると納得感が増す。

 

 

 

 

 野口竜司『文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要』を読了。

 

 AIとは何ぞやということの雰囲気を軽くつかむという意味では適当な本だが、それ以上ではない。
 喩えて言うと、スタート前の準備運動をするための着替え、くらいの段階。
 本当にAIについて初めて何かを読むというのであればうってつけの本だと思うが、そういう人がこの本にたどり着くのか疑問が残る。

 

 

 

 

 Manuel Pedro Rodriguez Bolivar  et al.(eds.)『Governance Models for Creating Public Value in Open Data Initiatives』を読了。

 

 オープンデータに関する各国の事例研究を行う論稿が揃う。題名に「Initiatives」とあるように、どのように政策的にオープンデータを主導していくのかということが課題として位置付けられているが、この点について必ずしも明確な回答はなされていない。
 どちらかと言うとオープンデータの取り組みが進んでいない国が取り上げられている印象があり、先進事例を見たときにリサーチクエスチョンに対して、どのような回答が提示されるのか気になる。

 

 

 

 Svenja Falk et. al (eds.)『Digital Government: Leveraging Innovation to Improve Public Sector Performance and Outcomes for Citizens』を読了。

 「Digital Government」とは何たるかを論じる論稿が収録されておらず、いわゆる電子政府政策の事例を取り扱った論稿が並ぶだけ。e-governmentではなく、digital governmentとする、その事由が知りたいところなのだが。

 

 

 

 

 斎藤恭一『道具としての微分方程式 偏微分編 式をつくり、解いて、「使える」ようになる』を読了。

 

 身近な現象から偏微分方程式を作るという触れ込みどおりの好内容。他書であれば、いきなり数式を提示して終わりとなるようなところについて、これでもかと説明を重ねている点は特徴だ。で、その説明がイメージで理解することに主眼を置いているのだから、余計に分かりやすい。個々の数式については、若干説明不足というか、分かり難さがないわけではないが、数式だけどんどん出して来る類書と比べれば、その説明も丁寧な部類に入るだろう。
 まずは苦手意識を克服するためにはこの一冊と言えるような本。

 

 

 

 西村吉雄『イノベーションは、万能ではない』を読了。

 

 長めの情報通信産業史といったところ。中盤以降は歴史の勉強にはなるかもしれないが、ほぼこの種の話では必ず出て来るような出来事の振り返りなので、はじめて触れるのであれば良いが、そうでないのであれば冗長で退屈なだけ。