中北浩爾『自民党政治の変容』 | (元)無気力東大院生の不労生活

(元)無気力東大院生の不労生活

勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 中北浩爾『自民党政治の変容』を読了。


 自民党における右派とリベラル派の「攻防」を結党から現在の安倍政権まで振り返った書である。


 細川連立政権以降、現在に至るまでの記述が駆け足な感が否めないが、加藤紘一氏に代表されるリベラル派の隆盛と衰退、そして、安倍晋三総裁の再登板に至る過程の記述は読み応えがあった。

 右傾化を極めた麻生政権が政権を民主党に明け渡し、野党になった自民党がリベラル派の谷垣氏を総裁に据えながら、さらに右傾化を進め、その中から安倍氏の再登板に至るという流れは、本書にまとめられる自民党結党以来の歴史を振り返ると、そこに少々危険な香りを感じざるを得ない。


 民主党に奪われた政権を改めて奪い返すために、自民党としてのアイデンティティを再確認する必要があったことは、その通りだとしても、それを少々極端に右側に切り過ぎるのは、結果として、その支持基盤を大きく切り崩しかねない危険性を孕んでいる気がする。

 そこは、現状では公明党との連立で実質的に補っていると言えそうだが、そこもさらに突き抜けていこうとすると、かなり危うい橋を渡ることになりそう。そのあたりのことは、本書が預言書ではなく、研究者による手堅い専門書であるために、書かれていない。このあたりの見立てを是非著者に聞いてみたいところである。


 安倍政権を支持している人が読むような本ではないが、支持する人や安倍総理自身は、是非ここに書かれている中曽根政権時の「知恵」を参考にすべきだと思われる。参考にしたら、長期政権の道も見えてきそうなものだが、現状を見ると、ちょっとしたことで案外簡単に躓きそうだな~というのが個人的観測。


自民党政治の変容 (NHKブックス No.1217)/NHK出版
¥1,512
Amazon.co.jp