石川知裕『砂糖と安全保障』を読了。
TPPに参加すると、安価で同質の砂糖がオーストラリアなどから入ってきてしまい、その結果、日本の砂糖自給率は0%になると説く。
そのときに問題となるのは、沖縄の離島である。沖縄の離島では、主な農産物がサトウキビであり、その代替作物が現段階ではなく、サトウキビを作らなくなると、途端に離島は立ち行かなくなる。そうすると、離島から住民がいなくなり、これが安全保障上は好ましくないと主張されている。
よく読むと、必ずしもTPP参加に全面的に反対ではなく、拙速であるというのが著者の立場のようだが、農業として立ち行かなくとも、国防上で必要なら、サトウキビ農家は防衛費で支援するしかない気がしてならない。
そもそも、日本のサトウキビ農家やてん菜農家は、関税がなくなると、外国の農家に対して価格的に太刀打ちできないということがTPPに慎重になる論拠としてあげられるが、一方で、砂糖需要のの更なる高まりなどで、国際的な砂糖価格の上昇も予想されると本書に書かれている。値下げ競争での勝負が無理になっても、価格上昇が見込まれるのであれば、日本の農家が価格的に太刀打ちできないという議論にはならないと思うが、そのあたりの説明はない。
砂糖の場合、世界中どこで作っても品質が基本的には同じになると本書には書かれているが、そういう中でも、「日本製」ということでプレミアを付けて世界中に売りつけるくらいの強かさが求められているのでないだろうか。
個別の事象では、この本でも説かれるように問題もあるのかもしれないが、全体的な基調として、TPPに参加しないという選択は、やはり成立し得ないと私は思う。
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