金谷年展『世界を変える、クール・ソリューション』 | (元)無気力東大院生の不労生活

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勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 金谷年展『世界を変える、クール・ソリューション』を読了。


 端的にまとめれば、低炭素化社会の実現に向けて、特に天然ガスの活用の重要性を指摘した書であると言えると思います。以下、各章の内容を簡単に紹介すると、


 第1章「世界を変える、新たなエネルギー革命」では、シュールガスの実用化により、天然ガスの輸入大国であったアメリカが輸出大国に転じることになり、それが天然ガスを巡る国際的な環境を劇的に変えてしまったことが紹介される。


 第2章「レアアース問題から見えてきた資源覇権戦略」では、レアアースの最大の輸出国である中国による資源を巡る覇権的な動きが紹介される。そして、電気自動車におけるリチウムの例が取り上げられ、特定の技術に依存してしまうと、その根幹を成す資源の供給を握られた際には、非常に不安定な状況に置かれることが指摘される。


 第3章「エンジン、その復活と日本の再建」では、ディーゼルエンジンなど、従来、日本には優れた技術の蓄積がありながら、日の当られなくなった内燃機関が紹介される。
 

 第4章「世界の新潮流“天然ガス車とカーボンマネジメント戦略”」では、低炭素社会の実現へ向けて、天然ガス車への注目が集まっていることが紹介される。また、世界的な企業が商品のライフサイクル全般での二酸化炭素の削減へ向けて動き出したことが指摘される。とりわけ、物流の部分での二酸化炭素削減の可能性が大きいことが指摘されている。
 

 第5章「クール・ソリューションによる低炭素戦略」では、「ディーゼル車」、「天然ガス」、「コージェネレーション」、「パッシブエコ」、「新しい原子力」などは、昨今注目を集めなくなっているが、それらには日本での技術の蓄積があり、それらを活用することが、「クール・ソリューション」であるとまとめられている。


 著者も指摘するように、目新しい技術がどんどん紹介されるわけではなく、どちらかと言えば、「枯れた」技術が中心に紹介される。しかし、だからこそ、地に足が付いた議論が展開され、実現可能な事柄の範囲が見えて来るような気がした。


世界を変える、クール・ソリューション―低炭素社会の新しい競争と選択/金谷 年展
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