小路幸也『東京公園』 | (元)無気力東大院生の不労生活

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勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 小路幸也『東京公園』を読了。


 表題にある「東京公園」は、私が調べた限り、存在しません。実際に、この本の中でも、「東京公園」は登場しません。しかし、この小説において、東京の公園が重要な役割を果たします。

 主人公の志田圭司は写真家のなることを夢に上京した大学生。公園で見つけた家族連れを撮ることをある種のライフワークにしている。物語は、偶然、水元公園で撮影しようとした子ども連れの女性の夫に呼び止められるところから始まる。


 この女性の夫から、圭司は奇妙な依頼をされる。その依頼の舞台は、日比谷公園。その男性の妻は、晴れた日には、都内の公園を巡る。その公園めぐりを尾行し、写真を撮影して、報告して欲しいと言うがその依頼。


 女性が子どもと足を運ぶのは、砧、洗足池、世田谷、和田掘、行船、井の頭の各公園。これらの公園に赴く際には、女性が夫に連絡をすることから、その夫から圭司も連絡を受け、女性を尾行する。


 この尾行の果てに奇妙な展開が待っているのだが、そこには、圭司自身の家族や友人との微妙な距離感をめぐるサイドストーリーが用意されており、このストーリーとメインのストーリーが交差して、最後は結末に至る。


 結局のところ、それほど大きな事件が起こる訳でもなく、何か大きな謎が解かれるわけでもないが、何故か最後まで、きちんと読まされる作品だった。


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 公園散策のための本は、結構あるようですね。