濱野智史『アーキテクチャの生態系』を読了。
インターネット関連の事象について、ひとつの切り口としては、こういう整理の仕方も十分に「アリ」だと思いますが、少なくとも私に対して訴えかけて来るような議論は展開されていませんでした。
もちろん、内容が薄っぺらいわけではないから、人によっては参考になる本だと思います。特に、あまりこの種のことに詳しくない方には、入門書として間違いなくお勧めです。
ただ、例えば、アーキテクチャについて、レッシグが何を語っているのかをもう少し確認してから、「アーキテクチャ」を論じた方が良いと思います。ちょっと都合良く「アーキテクチャ」という語を使い過ぎかと。このへんは、誌面の都合もあったのでしょうけど。
他にも、西垣先生による「生命情報」に関する議論について、申し訳ないですが、「この著者は、本当に西垣先生の本を読んだ上で、こう論じているのか」と疑いたくなるような書き方がされていました。
さらに、「生態系」などといった用語も、少々安易に使ってはいないかと首をかしげたくなります。こういう援用は、相当慎重に行うべきだと思います。既存の社会学などの表現方法を踏襲する必要は必ずしもないと思いますが、比喩的な言辞を用いることによって、きちんと整理すべき部分が曖昧なままにされている印象を受けました。
ニコニコ動画に対する評価も高過ぎる(笑)
毎度のことのように、アマゾンのレビューを確認すると、大絶賛のものばかり。
上に私なりの疑問点をいくつかあげましたが、そう悪い本ではないと思いますし、最初に書いたように、こういうテーマについて知りたいという人には迷わずに勧められる本です。しかし、だからと言って、それほどまでに絶賛する内容でもないと思うのですけどね。
根拠が曖昧なままで結論的なことを書いてしまっている点が多いのも、気になるところですが。
著者自身は、おそらく、様々なことがよく理解出来ているのでしょうから、それをきちんと本の中に表現し切ることを促すような厳しい指摘をした方が良いと個人的には思います。
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