・怪奇性満載の事件おばけくん

 

 ウワバミや獣肉など、生臭さを感じられる事件です。「帆村たちの入って来たのが判ったものか、フフッ、フフッと、風に吹きつけられたように身体の一部を波うたせていたのだった。」とか、いかにも蛇たちの人間性が出ていると思います。

この事件を見ると、動物園にはいろいろな「穴」が存在するのかもしれません。遺体をも隠すことができてしまうほどの穴が。

被害者が日露戦争経験者であることなど、時代を感じ取ることができます。恥ずかしながら、沙河の大会戦のことをしりませんでした。被害者も事件の犯人も、どちらの気持ちも理解できます。鴨田さんの父を園長が止めなければ、軍が壊滅していた可能性があるし、鴨田さんも実の父を失ったのですから。だからこそ、鴨田さんは殺す以外の道はなかったのかと思ってしまいます。

鴨田さんが自殺し、帆村探偵の悔しい気持ちがひしひしと伝わってきました。「事件を解決するたびに経験するあの苦が酸っぱい悒鬱が、また例の調子で推し騰ってくるのであった。」事件を解決して、それで終わりというわけではありません。むしろ解決してからが本番であるのかも知れません。

 

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